年の瀬も押し詰まった日の事。何故かナマエの元にはヒソカ・クロロ・イルミの３人が集まっていた。
「どうしたのさ？こんな年末の忙しい時に」
彼女の言葉に、３人は手土産を見せながら笑った。
「年末だからさ♥」
「ちゃんと土産も持って来た」
「何？大掃除まだやってないとか？」
各々の言葉を口にし、ナマエの部屋に上がりこもうとする３人。
「いやいや、答えになってないから！つか、大掃除は終わってるからね？！」
「なら問題ないじゃん」
言い終わると同時に、まずはイルミがナマエの部屋に足を踏み入れた。
「相変わらず狭い部屋」
「お前の家が大きすぎるだけだ、イルミ」
「そうそう♠彼女の部屋は広い方だよ♦」
言いたい事をそれぞれが口にしながら、手土産をテーブルに置くとそれぞれ寛ぎだす３人。
「……一体何しに来たのさ？」
怪訝な顔で問うナマエに、３人は顔を見合わせた。
「何しにって……ねェ？」
「まだ解らないのか……」
呆れ返るヒソカとクロロ。イルミに至っては、勝手にキッチンでコーヒーを淹れている。
「解らないから訊いてるんじゃないの！」
多少の怒りを滲ませながら言うナマエに対し、コーヒーを淹れ終えたイルミが言った。
「もうすぐ新年でしょ？」
「そうだけど、それが何？」
「オレ達３人共、キミと新年を迎えたいわけ」
「……それで？」
「抜け駆けは良くないから、３人で来ただけ」
「へぇ……こっちの都合はお構いなしですか」
「何か予定でもあったのかい？」
「まさか……オレ達がいるのに、恋人が出来たとか言わないよな？」
クロロの言葉に、ナマエの眉はピクリと反応した。
「あんた等が邪魔するんだから、彼氏が欲しくても出来るワケないでしょ！」
「それは良かった♥」
心底安堵するヒソカを無視し、ナマエは自分もコーヒーを飲もうとキッチンへ向かった。
何で自分がこんな目に遭わなければいけないのか。そんな考えを余所に、３人は楽しそうに会話していた。
３人の内誰か１人を選べば良いのだろうが、この３人、一癖も二癖もある人物だらけ。
ヒソカは快楽殺人者。クロロは幻影旅団の団長。イルミは暗殺一家の長男。誰を選んでも、前途多難である。
コーヒーを入れ終わり、リビングへと戻ると、入れ替わりでヒソカがキッチンへと向かった。不思議そうにその姿を眺めていると、直ぐに戻って来るヒソカ。その両手にはワイングラスが４人分持たれていた。
「良いワインを持って来たんだ♠新年のカウントダウンはコレで乾杯しよう♦」
そう言いながら、ヒソカはテーブルに４人分のグラスを置いた。
ナマエは何も言わずに、自身で先程淹れたコーヒーを飲んでいる。
「本当はキミと２人で飲みたかったんだけどね♣」
「それは嫌味か？ヒソカ」
「抜け駆けしないって約束だよね？」
ヒソカの呟きに、クロロとイルミがいち早く反応を見せた。
「……どうでも良いけど、喧嘩なら余所でやってよね。私は新年早々喧嘩の仲裁なんかしたくないんだから」
互いに睨み合っていた３人だが、ナマエの嫌そうな言葉にその禍々しいとも言えるオーラを仕舞った。

やがてTVで新年へのカウントダウンが始まり、３人は各々が持って来た手土産をテーブルに並べ始めた。
ヒソカは先程見せたワインをグラスに注ぎ、クロロはノブナガに聞いたと言って年越し蕎麦を作り、イルミはゾルディック家の料理人が作ったであろうオードブルを並べている。
「イルミ、一応訊くけど……」
「何？」
「それって……」
「ああ、入ってないよ」
それだけ聞くと、ナマエは安心したかの様に息を吐き出した。