漂流
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やめなされ」
崩れている壁を背に、先程まで外に出ていた青年が弓を構えていた。
青年は2人を制止すると、そのままツカツカと歩み寄った。
「目が覚めましたか。重畳(ちょうじょう)重畳」
刀を手に呆然としている男を見ながら青年はそう言うと、今度は信長と名乗った男に向き直った。
「羽をば≪むしり≫候へ」
「む、うむ」
ぐいっと差し出されたのは、まだ生きている鳥だった。
首を持ちながら信長と名乗る男へ鳥を渡すと、男はそのまま無言で羽をむしり始めた。
「御手透きか」
「あ、ああ」
「むしり候へ」
青年に同じ様に問われ、刀を持った男も鳥を受け取った。
「貴女も御手透きか」
「え?あ、はい……」
有無を言わせぬ気迫で持ってそう言われては、名前も断ることが出来なかった。
「なんだこれ」
4人揃って、無言で鳥の羽をむしっていると刀を持っていた男がそう呟いた。
羽をむしって下処理を施した鳥を焚き火に焚べていると、信長と名乗った男が口を開いた。
「信長は死んだ、とか申したな。やはりわしは死んだ事になっているのか」
「……おう!死んだ!!京、本能寺で明智勢に弑逆(しいぎゃく)されたわ。もう……18年も昔の話よ!!」
「な……に……ッ。馬鹿を言えい!!18年前だと!?金柑頭(ハゲ)が本能寺に寄せて来たのも、この世界に俺がすっ飛ばされて来たのも―― まだ半年も経っておらぬわ!!」
「フン。だから言うたのだ。だからお前は、あの世の鬼か亡者じゃ。でなければ、物狂い(いかれ)よ」
「くっくっく。あっはっはっはっ。ははははーッ」
突然笑い出した青年。何事かと思い声の主を見やると、青年はさも可笑しいとばかりに笑っていた。
「十年、十五年で≪おおさわぎ≫なされておるのが何やらもう、おかしゅうておかしゅうて」
「あんたは……何者だ……ッ」
「言うてやれ言うてやれ」
信長が鼻で笑いながら、青年に続きを促した。
「私(わたくし)は与一。那須資隆与一で御座います」
与一……その名乗りに、名前は驚きを通り越して絶句した。
「嘘をつけぇい!!」
刀を持っていた男は、名前の思いを代弁するかのように叫んだ。
「源平合戦の頃じゃねえかッ。四百年(しひゃくねん)も昔の話ぞ。そんな馬鹿な話があるものか!!」
「んー。馬鹿な話と申されましても、私は私でございますれば」
「これは夢だッ。間違いなく夢だ!!」
信じられないという思いが、男の目から滲み出ていた。
「で、お前は≪どこの≫誰ぞ」
「……島津!!島津豊久!!島津家久が子じゃ」
「島津……?誰?」
島津豊久と名乗った死にかけていた男の言葉に、信長は一瞬考えた。
「おう!九州の!?はじっこの!?ものすごいド田舎の。良く知らねえや」
「殺す」
信長の発言に、豊久は怒りを露わにした。
「島津殿なら、私も知っておりまする。私の御世にもおられましたぞ」
「む!!」
「たしか、九州のはじっこの御方です。ははあ、代々田舎の方々なのですね」
「先祖代々一族郎党バカにされた。全員殺ス」
「激しく動かれますと死にますぞ。まだ≪縫うた≫ばかりです故」
「頑丈な奴だ。まあ座れ」
「織田信長・那須与一・島津豊久……全員有名人やん……あ、だから薩州に帰るとかなんとか言ってたのか……」
「ほほぉ。私たちをご存じのようですね」
「おい、女。お前はどこの誰ぞ」
「名字……名前」
「名字だぁ?聞いた事ないぞ。氏があるという事は、どこぞのお姫さんか……おい、お前らは知ってるか??」
「知らぬ」
「私も存じませぬ」
男3人の視線を一身に受け、名前はたどたどしく伝えた。
「えっと……私のいた時代は、皆名字……氏を持っています」
「「「はぁ!?」」」
「まぁ、源平やら戦国時代の御三方には信じられないでしょうが……嘘ではありません」
「……で、どこの国の者ぞ」
崩れている壁を背に、先程まで外に出ていた青年が弓を構えていた。
青年は2人を制止すると、そのままツカツカと歩み寄った。
「目が覚めましたか。重畳(ちょうじょう)重畳」
刀を手に呆然としている男を見ながら青年はそう言うと、今度は信長と名乗った男に向き直った。
「羽をば≪むしり≫候へ」
「む、うむ」
ぐいっと差し出されたのは、まだ生きている鳥だった。
首を持ちながら信長と名乗る男へ鳥を渡すと、男はそのまま無言で羽をむしり始めた。
「御手透きか」
「あ、ああ」
「むしり候へ」
青年に同じ様に問われ、刀を持った男も鳥を受け取った。
「貴女も御手透きか」
「え?あ、はい……」
有無を言わせぬ気迫で持ってそう言われては、名前も断ることが出来なかった。
「なんだこれ」
4人揃って、無言で鳥の羽をむしっていると刀を持っていた男がそう呟いた。
羽をむしって下処理を施した鳥を焚き火に焚べていると、信長と名乗った男が口を開いた。
「信長は死んだ、とか申したな。やはりわしは死んだ事になっているのか」
「……おう!死んだ!!京、本能寺で明智勢に弑逆(しいぎゃく)されたわ。もう……18年も昔の話よ!!」
「な……に……ッ。馬鹿を言えい!!18年前だと!?金柑頭(ハゲ)が本能寺に寄せて来たのも、この世界に俺がすっ飛ばされて来たのも―― まだ半年も経っておらぬわ!!」
「フン。だから言うたのだ。だからお前は、あの世の鬼か亡者じゃ。でなければ、物狂い(いかれ)よ」
「くっくっく。あっはっはっはっ。ははははーッ」
突然笑い出した青年。何事かと思い声の主を見やると、青年はさも可笑しいとばかりに笑っていた。
「十年、十五年で≪おおさわぎ≫なされておるのが何やらもう、おかしゅうておかしゅうて」
「あんたは……何者だ……ッ」
「言うてやれ言うてやれ」
信長が鼻で笑いながら、青年に続きを促した。
「私(わたくし)は与一。那須資隆与一で御座います」
与一……その名乗りに、名前は驚きを通り越して絶句した。
「嘘をつけぇい!!」
刀を持っていた男は、名前の思いを代弁するかのように叫んだ。
「源平合戦の頃じゃねえかッ。四百年(しひゃくねん)も昔の話ぞ。そんな馬鹿な話があるものか!!」
「んー。馬鹿な話と申されましても、私は私でございますれば」
「これは夢だッ。間違いなく夢だ!!」
信じられないという思いが、男の目から滲み出ていた。
「で、お前は≪どこの≫誰ぞ」
「……島津!!島津豊久!!島津家久が子じゃ」
「島津……?誰?」
島津豊久と名乗った死にかけていた男の言葉に、信長は一瞬考えた。
「おう!九州の!?はじっこの!?ものすごいド田舎の。良く知らねえや」
「殺す」
信長の発言に、豊久は怒りを露わにした。
「島津殿なら、私も知っておりまする。私の御世にもおられましたぞ」
「む!!」
「たしか、九州のはじっこの御方です。ははあ、代々田舎の方々なのですね」
「先祖代々一族郎党バカにされた。全員殺ス」
「激しく動かれますと死にますぞ。まだ≪縫うた≫ばかりです故」
「頑丈な奴だ。まあ座れ」
「織田信長・那須与一・島津豊久……全員有名人やん……あ、だから薩州に帰るとかなんとか言ってたのか……」
「ほほぉ。私たちをご存じのようですね」
「おい、女。お前はどこの誰ぞ」
「名字……名前」
「名字だぁ?聞いた事ないぞ。氏があるという事は、どこぞのお姫さんか……おい、お前らは知ってるか??」
「知らぬ」
「私も存じませぬ」
男3人の視線を一身に受け、名前はたどたどしく伝えた。
「えっと……私のいた時代は、皆名字……氏を持っています」
「「「はぁ!?」」」
「まぁ、源平やら戦国時代の御三方には信じられないでしょうが……嘘ではありません」
「……で、どこの国の者ぞ」