【独壇場 Beauty（アウトサイダー）】で身体能力を上げつつ、ナマエは【愛の葬列（ヴァルキリー）】を発動し山小屋は吹き飛び辺りを煙が覆ったた。
「さぁ、始めようか」
ナマエのその言葉とともに、ヴァルキリー達は各々の武器を強く握りしめた。
「小癪な真似を！たかが“神宿り”ごときに、【ルシファー】様から頂いた“力”が負けるハズが――」
「“負ける”んじゃない。“死ぬ”んだよ、お前は」
姿が見えないナマエ達を威嚇するかの様に炎を振り翳す“魔女”。煙の中でその炎だけが存在感を露わにしていた。
「馬鹿だね、お前は。そんな事すりゃ、自分の居場所を教える事になるって事くらい解らないの？」
炎に向かって走っていくナマエ。ヴァルキリー達はその後を追うでもなく、辺りを警戒していた。
「馬鹿はどちらかね？」
ナマエが炎の元へと辿り着いた時だった。背後から冷気を感じたナマエが振り向くと、そこには氷塊があった。
「儂が扱えるのは炎だけじゃない。それがお主の敗因だな」
「……敗因？何言ってるの？油断大敵――【起死回生（ユズレナイ想ヒ）】」
その言葉を合図に、ヴァルキリー達はナマエを中心とし円を描くように散らばった。
「さようなら、哀れな“魔女”。【HEAVEN'S GATE（暗黒天国）】」
ナマエが呟くと、ヴァルキリー達はそれぞれの武器を構え直し円の中心へと走り出した。

「ヤッた……のか？」
辺りを眩い光が包むと同時に煙が消え、それまでそこにあったはずのオーラが1つ消えた。
「あぁ。ナマエの勝ちだ」
「やはりお嬢様はお強いですねェ」
クスクス笑うハヤトを見ながら、クロロは疑問が沸いた。
「“やはり”だと？」
「えェ。“あの時”より格段にお強くなられていらっしゃる」
「どういう意味だ」
「それは本人に訊くのが一番でしょう。ねェ、お嬢様？」
ハヤトが目を細めながら見つめている方向へとクロロが視線を移すと、不機嫌極まりないといった表情でナマエが立っていた。
「いらん事をペラペラと……それ以上そいつの興味を引くような事を言ってみろ。例えハヤトだろうが容赦しねぇぞ」
「おぉ怖ッ……それじゃぁお嬢様の憂いも晴れた様ですし、ワタシは帰りますかねェ」
言うが早いか、ハヤトは旋風とともに姿を消した。
「なんだったんだ？アイツの言っていた事は」
「気にするな。ただの昔話だ」
「教えろ」
「お前に教える義理はない」
「お前は黙っていろ。オレはナマエに訊いているんだ」
カゲロウに黙っていろと言いながら、クロロはナマエを見据えた。
「別になんてことはないよ。昔ハヤト相手にマジ切れしただけだから」
「ほぅ……今みたいにか？」
「そうだよ。【愛の葬列（ヴァルキリー）】だけでノシたけどね」
「理由は？」
「大したことじゃない。今みたいに冗談なのか本気なのか判らないハヤトの言動に、冷静に対処出来なかっただけ。それだけ子供だったって事だよ」
「内容は？」
「イルミとの話が進んでる時に告られただけだよ。断ってもしつこくてね。それでキレた」
「今はどうなんだ？」
「今？」
「イルミとの話は無くなった。なら、アイツに告白されても問題ないはずだろ？さっき告白された時、何故断ったんだ？」
「……そこまで教える必要はない」
「言え」
「嫌だ」
「何故だ？」
「……」
「まだコイツの事が好きだからか？」
クロロはカゲロウを見遣りながらナマエに追求した。
「だから“あの時”もキレたんだろ？違うか？」
「……違う。カゲロウに恋愛感情はもうない。今は大事な“家族”だ」
「なら断る理由はないだろう？本当の事を言え」
「…………あんなんでも、ハヤトも“家族”だと思ってる。“家族”に対して恋愛感情は沸かない。向こうはどう思ってるか知らないけどね」