逃亡
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「“神の血”……ですか?」
「あぁ。【エラトー】という女神の“血”だ。お前達一族の女には、何故か【エラトー】の“血”が受け継がれているそうだ」
初めて聞かされる自身の血脈。それに対し、ナマエはある疑問を抱いていた。
「だからなんでしょうか?カゲロウが私の傍にいるのは……」
悲しげに眉根を下げるナマエ。そんな彼女を見ながら、シルバはハッキリと否定した。
「いや、違うな。あいつはそんな些細な事など関係なく、お前の傍で共に【指環】の“力”を抑えようと決めただけだ。先代があいつの親に手を差し伸べたからでもあるがな」
「お母さんが……?」
「妻を“人間”に殺され荒れていたフェンリルの父親に、お前の母親は手を差し伸べたんだ。まだ赤子だったフェンリルを、お前の母親は種族の壁を超えて育てた。だが――」
「……カゲロウのお父さんも殺された」
「それが切っ掛けで、先代は【指環】の“力”に飲まれた。オレ達が駆けつけた時にはもう……遅かった。変わり果てたお前の母を止める為には――」
「解っています。私はシルバ小父様達に感謝こそすれど、恨んでなんかいません」
儚げに笑いながら、ナマエは再度恨んでなどいないと口にした。
どことなく重い空気になった空間を破ったのは、来訪者を告げる執事の声だった。
「どうした?ゴトー」
「それが……イルミ様にお会いしたいという方がいらしておりまして…………」
「イルミに?」
「はい。なんでも、以前仕事の依頼をした事があると仰っておりまして……」
「そいつは今、どこにいる?」
「執事邸に留まって頂いております」
「そうか……イルミは確か、今日は仕事が無かったな」
「在室されておりますが、まずは旦那様にご報告をと思いまして」
「分かった。イルミに知らせてやれ」
「よろしいのですか?」
「何かの依頼だろう。受けるかどうかはイルミの判断に任せる」
「……かしこまりました」
ゴトーが恭しく礼をして立ち去ると、シルバは何かを考え始めた。
「ナマエ」
「なんでしょうか?」
「お前はもう部屋に戻っていい」
「……分かりました」
シルバの部屋を辞した所で、ナマエはイルミと遭遇した。
「こってり絞られた?」
「いや、そんなに怒られなかったよ」
シルバとの会話を思い出しながら、ナマエはイルミに告げた。
「やっぱり家の連中はナマエに甘いな」
「ははっ、私としてはもっと厳しくてもいいと思うんだけどね。それより、お客さん来てるんでしょ?早く行ってあげないと」
「あぁ、その事なんだけどさ」
「ん?」
「相手がナマエの同席を希望してるんだ」
「何で?」
「さぁ?」
イルミの口から出た言葉に、ナマエは疑問符を浮かべた。
「……カゲロウも一緒でいい?」
「いいんじゃない?ナマエだけっては言われてないし」
「分かった。ちょっと待ってて。カゲロウ呼んでくるから」
「うん」
そう言い残し、ナマエはカゲロウの部屋へと走って行った。
(来ているのが“彼”だって、言わないほうがいいよな絶対に)
やがてカゲロウを連れてきたナマエはイルミと合流し、応接室へと赴いた。
「遅かったな、イルミ」
「や」
応接室のソファーに座っている人物を見て、ナマエとカゲロウは殺意が湧いた。
「貴様……ッ」
「……よくもノコノコと我輩の前に来れたものだな」
「そう怒るなよ。今日は話し合いに来ただけだ」
そう言ったのは、ナマエが最も会いたくない人物だった。
「自分から殺されに来るとは、大した度胸だな――クロロ・ルシルフル!」
「落ち着きなよ、ナマエ」
「イルミ……まさか仕組んだの?」
「いや、オレは何もしてないよ。さっきゴトーに言われるまで、彼が来てるの知らなかったし」
「あぁ。【エラトー】という女神の“血”だ。お前達一族の女には、何故か【エラトー】の“血”が受け継がれているそうだ」
初めて聞かされる自身の血脈。それに対し、ナマエはある疑問を抱いていた。
「だからなんでしょうか?カゲロウが私の傍にいるのは……」
悲しげに眉根を下げるナマエ。そんな彼女を見ながら、シルバはハッキリと否定した。
「いや、違うな。あいつはそんな些細な事など関係なく、お前の傍で共に【指環】の“力”を抑えようと決めただけだ。先代があいつの親に手を差し伸べたからでもあるがな」
「お母さんが……?」
「妻を“人間”に殺され荒れていたフェンリルの父親に、お前の母親は手を差し伸べたんだ。まだ赤子だったフェンリルを、お前の母親は種族の壁を超えて育てた。だが――」
「……カゲロウのお父さんも殺された」
「それが切っ掛けで、先代は【指環】の“力”に飲まれた。オレ達が駆けつけた時にはもう……遅かった。変わり果てたお前の母を止める為には――」
「解っています。私はシルバ小父様達に感謝こそすれど、恨んでなんかいません」
儚げに笑いながら、ナマエは再度恨んでなどいないと口にした。
どことなく重い空気になった空間を破ったのは、来訪者を告げる執事の声だった。
「どうした?ゴトー」
「それが……イルミ様にお会いしたいという方がいらしておりまして…………」
「イルミに?」
「はい。なんでも、以前仕事の依頼をした事があると仰っておりまして……」
「そいつは今、どこにいる?」
「執事邸に留まって頂いております」
「そうか……イルミは確か、今日は仕事が無かったな」
「在室されておりますが、まずは旦那様にご報告をと思いまして」
「分かった。イルミに知らせてやれ」
「よろしいのですか?」
「何かの依頼だろう。受けるかどうかはイルミの判断に任せる」
「……かしこまりました」
ゴトーが恭しく礼をして立ち去ると、シルバは何かを考え始めた。
「ナマエ」
「なんでしょうか?」
「お前はもう部屋に戻っていい」
「……分かりました」
シルバの部屋を辞した所で、ナマエはイルミと遭遇した。
「こってり絞られた?」
「いや、そんなに怒られなかったよ」
シルバとの会話を思い出しながら、ナマエはイルミに告げた。
「やっぱり家の連中はナマエに甘いな」
「ははっ、私としてはもっと厳しくてもいいと思うんだけどね。それより、お客さん来てるんでしょ?早く行ってあげないと」
「あぁ、その事なんだけどさ」
「ん?」
「相手がナマエの同席を希望してるんだ」
「何で?」
「さぁ?」
イルミの口から出た言葉に、ナマエは疑問符を浮かべた。
「……カゲロウも一緒でいい?」
「いいんじゃない?ナマエだけっては言われてないし」
「分かった。ちょっと待ってて。カゲロウ呼んでくるから」
「うん」
そう言い残し、ナマエはカゲロウの部屋へと走って行った。
(来ているのが“彼”だって、言わないほうがいいよな絶対に)
やがてカゲロウを連れてきたナマエはイルミと合流し、応接室へと赴いた。
「遅かったな、イルミ」
「や」
応接室のソファーに座っている人物を見て、ナマエとカゲロウは殺意が湧いた。
「貴様……ッ」
「……よくもノコノコと我輩の前に来れたものだな」
「そう怒るなよ。今日は話し合いに来ただけだ」
そう言ったのは、ナマエが最も会いたくない人物だった。
「自分から殺されに来るとは、大した度胸だな――クロロ・ルシルフル!」
「落ち着きなよ、ナマエ」
「イルミ……まさか仕組んだの?」
「いや、オレは何もしてないよ。さっきゴトーに言われるまで、彼が来てるの知らなかったし」