逃亡
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ナマエが目覚めたのは、翌日の夕方だった。
窓から差し込む西陽の眩しさに瞼を開けると、そこには見知った天井と顔が見えた。
「起きたか……ナマエ」
「……フェンリル」
「なんだ?」
「ごめん。仇、討てなかった……」
今にも泣き出しそうに表情を歪めるナマエに対し、フェンリルは内心驚愕した。ここ数年、ナマエは“泣く”という感情を忘れたかのように、フェンリルの前では何があっても涙は見せなかったからだ。
「何があったかはシルバ殿から聞いている。吾輩がいなかったとは言え、無茶をし過ぎだ」
「ごめん……」
言いながらナマエは身体を起こし、フェンリルに顔を合わせることなく呟いた。
「謝って済む問題ではない。もう、アヤツ等の事は忘れろ。それがお前の為でもある」
「でも――」
「以前アヤツ等から逃げる際、【NEVER END(セツナトリップ)】を使ったんだろ?」
「え……?」
「イルミから聞いている。【試しの門】を使わずに敷地内に入った、とな。そんな芸当が出来るのは、【NEVER END(セツナトリップ)】を使わざるを得ない」
「だって……」
「言い訳は聞きたくない。吾輩を見殺しにしてでも、お前は生き残らねばならぬのだ」
「……だ」
「?」
「そんなの嫌だッ!」
そう言い切りながら布団を強く握り、ナマエはフェンリルの顔を見ると涙を流した。
「私はフェンリルを――“カゲロウ”を失いたくない!!」
「……その名で呼ばれるのは久しいな。しかし、吾輩はお前の“影”であり“枷”である。それが吾輩の“宿命”だ」
「そんな“宿命”なんてぶち壊せばいい!何があっても、私を護って死ぬなんて事、絶対に許さないから!!」
「そう泣くな。吾輩は己が“宿命”を受け入れている。お前もお前の“宿命”を受け入れろ。そして――【ニーベルングの指環】を守護する者としての自覚を持て」
「こんな呪われた【指環】なんか……」
「そう言うな。その【指環】は“主人”を選ぶ。そして、選んだ主人に“力”を与える。それ故、【指環】を狙う賊共も少なくない。お前が選ばれた事にもきっと理由があるんだ」
「そんなの私には関係ない!全部……全部この【指環】の所為だ!!」
大粒の涙を流しながら、ナマエは左手の親指に嵌っている【指環】を見つめた。
「私の大事な人達が皆消えていくのも……全部…………」
声を殺して泣き続けるナマエに、カゲロウは何も言えなかった。
そんな重苦しい空気を変えたのは、突然部屋の中に現れた人物だった。
「なんだ。オレを振ったのはその【指環】の所為でもあったんだ?」
「イル……ミ……」
赤くなった目を声のした方へと向けると、確かにそこにはイルミが立っていた。
「そんな物の所為で振られたのって、納得出来ないな」
表情を変えずに声音だけで不満を表すイルミ。
「オレだったら、そんな【指環】の“力”に負けない」
「お前じゃ無理だ、イルミ」
「何で?フェンリルだってナマエの傍にいて平気なのに、何でオレはダメなの?」
「吾輩と違って、お前は“人間”だ」
「だから?」
「ナマエからこの【指環】を外せる“人間”でなければ、【指環】の“力”で滅ぶぞ」
「前にも言ったでしょ?イルミとは価値観が合わないからだって。それに、大切な“友達”をこんなモノの所為で傷つけたくない……」
「オレは“友達”なんか必要ないし、ナマエも事も“友達”だと思ってない」
そう言い切るイルミの瞳は、何も映さない闇の色をしていた。
「そんな事言わないでよ……」
「そんな事?オレにとっては大事な事なんだけど。オレはまだ納得出来てないって気付いたし」
「イルミが何と言おうと、私はもうイルミと付き合う気はないよ。私にとっては“友達”としてしか見れないから」
「なら、振り向かせるだけだよ」
窓から差し込む西陽の眩しさに瞼を開けると、そこには見知った天井と顔が見えた。
「起きたか……ナマエ」
「……フェンリル」
「なんだ?」
「ごめん。仇、討てなかった……」
今にも泣き出しそうに表情を歪めるナマエに対し、フェンリルは内心驚愕した。ここ数年、ナマエは“泣く”という感情を忘れたかのように、フェンリルの前では何があっても涙は見せなかったからだ。
「何があったかはシルバ殿から聞いている。吾輩がいなかったとは言え、無茶をし過ぎだ」
「ごめん……」
言いながらナマエは身体を起こし、フェンリルに顔を合わせることなく呟いた。
「謝って済む問題ではない。もう、アヤツ等の事は忘れろ。それがお前の為でもある」
「でも――」
「以前アヤツ等から逃げる際、【NEVER END(セツナトリップ)】を使ったんだろ?」
「え……?」
「イルミから聞いている。【試しの門】を使わずに敷地内に入った、とな。そんな芸当が出来るのは、【NEVER END(セツナトリップ)】を使わざるを得ない」
「だって……」
「言い訳は聞きたくない。吾輩を見殺しにしてでも、お前は生き残らねばならぬのだ」
「……だ」
「?」
「そんなの嫌だッ!」
そう言い切りながら布団を強く握り、ナマエはフェンリルの顔を見ると涙を流した。
「私はフェンリルを――“カゲロウ”を失いたくない!!」
「……その名で呼ばれるのは久しいな。しかし、吾輩はお前の“影”であり“枷”である。それが吾輩の“宿命”だ」
「そんな“宿命”なんてぶち壊せばいい!何があっても、私を護って死ぬなんて事、絶対に許さないから!!」
「そう泣くな。吾輩は己が“宿命”を受け入れている。お前もお前の“宿命”を受け入れろ。そして――【ニーベルングの指環】を守護する者としての自覚を持て」
「こんな呪われた【指環】なんか……」
「そう言うな。その【指環】は“主人”を選ぶ。そして、選んだ主人に“力”を与える。それ故、【指環】を狙う賊共も少なくない。お前が選ばれた事にもきっと理由があるんだ」
「そんなの私には関係ない!全部……全部この【指環】の所為だ!!」
大粒の涙を流しながら、ナマエは左手の親指に嵌っている【指環】を見つめた。
「私の大事な人達が皆消えていくのも……全部…………」
声を殺して泣き続けるナマエに、カゲロウは何も言えなかった。
そんな重苦しい空気を変えたのは、突然部屋の中に現れた人物だった。
「なんだ。オレを振ったのはその【指環】の所為でもあったんだ?」
「イル……ミ……」
赤くなった目を声のした方へと向けると、確かにそこにはイルミが立っていた。
「そんな物の所為で振られたのって、納得出来ないな」
表情を変えずに声音だけで不満を表すイルミ。
「オレだったら、そんな【指環】の“力”に負けない」
「お前じゃ無理だ、イルミ」
「何で?フェンリルだってナマエの傍にいて平気なのに、何でオレはダメなの?」
「吾輩と違って、お前は“人間”だ」
「だから?」
「ナマエからこの【指環】を外せる“人間”でなければ、【指環】の“力”で滅ぶぞ」
「前にも言ったでしょ?イルミとは価値観が合わないからだって。それに、大切な“友達”をこんなモノの所為で傷つけたくない……」
「オレは“友達”なんか必要ないし、ナマエも事も“友達”だと思ってない」
そう言い切るイルミの瞳は、何も映さない闇の色をしていた。
「そんな事言わないでよ……」
「そんな事?オレにとっては大事な事なんだけど。オレはまだ納得出来てないって気付いたし」
「イルミが何と言おうと、私はもうイルミと付き合う気はないよ。私にとっては“友達”としてしか見れないから」
「なら、振り向かせるだけだよ」