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風呂から上がった春日は「たまには銭湯とかで足伸ばして入りたいっすよね」と愚痴を溢した。
今の風呂はこじんまりとしており、特に身長のある春日にとっては余計に狭い湯船なのだ。
勿論、真斗もそれなりに身長はあるので狭いのは感じていたがそもそもの話、春日は極道で背中には立派な龍魚が彫り込まれているので銭湯には行く事が出来ないのである。
「刺青がある時点で諦めるんだな」
「うっ……解ってますけど……」
「それか、でけぇマンションにでも引っ越せ」
「柄じゃないっすよ……。はあ、組に入る前は行ってたんですけどね」
「他人が大勢居るのにゆっくり寛げる気がしねぇな」
「案外、楽しいんすよ。おっちゃん達と話したりとか」
「ありえねぇ……」
真斗からすれば知らぬ人間と共に湯船に入る時点であり得ないのに会話までする春日のコミュニケーション能力の高さには尊敬どころか少しだけ引いた。
「何を話すんだよ。初対面のやつと」
「うーん、覚えてる限りで大体はパチンコとか競馬や飲み屋の事っすね」
「それのどこが楽しい会話なんだよ」
「いや、面白い話が飛び出てくるんすよ!それに楽しそうに話するもんだから、つい聞いちまうんです」
「ただのお人好しじゃねぇか」
呆れて溜め息を漏らすと、春日は少し口を尖らせて無言でこちらをジトーっと睨んでくる。
「良いじゃないっすか、もう。あーあ、でも本当に入りたくなってきました」
「……なら、良い場所がある」
「え?」
「銭湯じゃないけど、大きい湯船に浸かれるぞ」
「ほんとっすか!?」
「明日、行くか?」
「ぜひ!!明日は急いで帰ります!!」
ニコニコと笑いながら春日はスキップする勢いで寝室へと向かったのを真斗は現金な奴だと笑った。



次の日、本当に春日はいつもより早く帰宅し「早く行きましょう!」と真斗を急かした。
向かう最中もご機嫌で鼻歌でも歌いそうな位だった。
しかし、目的地に着くと先程の笑顔は消え去り真斗の隣で固まっている。
「あの若」
「なんだ?」
「本当にここですか?」
「ああ」
目の前には趣味の悪い鮮やかなネオンでホテル名が書かれており、そこは言わずもがなラブホテルというやつだ。
「ゆ、湯船ってまさか」
「嘘は言ってねぇ」
「そもそも俺たち男同士ですよ?入れる訳」
「ここは男同士も女同士も良いらしい」
「何を調べてるんすか、あんたは!」
「行かねぇのか?立ち止まってると知り合いに会うかもしれんぞ?」
「うっ!……ああもう!行きますよ!」
ズンズンと先に入る春日を追いかけ受付へと行くと店員は普通に対応をしているので情報通りここは男女以外でも利用している客が居るのだろう。
春日は落ち着かなくソワソワしながら気恥ずかしさで頬を赤らめている。
鍵を受け取ると春日の腕を掴み、素早くエレベーターに乗り込んだ。
「そんな顔をするな」
「どんなですか」
「抱いてくれって顔だよ」
「してません!」
そっぽを向く顔を改めて見れば、先程よりも顔は赤くなっていた。
チーンと音がなり、扉が開くと自然と足早になり部屋へと急いだ。
部屋の番号を確認して、ドアを開ければ中は雰囲気作りというやつなのかライトは少しだけしか点いておらず、ヤるだけの部屋といった印象を受ける。
「じゃあ、風呂入るか?」
「えっあっはい」
「大きいからゆっくり入れよ」
「えっと……するんすか?」
「しねぇよ」
「えっ!?しないんすか!?」
「足伸ばして入りたかったんだろ?それともしてぇのか?」
「そ、そういう訳じゃないですけど」
モジモジとする春日は何か言いたそうだが、本当に真斗はゆっくりと風呂に入るためだけに連れてきたのだ。
「……早く行け。俺の気が変わらん前に」
「えーと、ありがとうございます?」
しっしっと手を振り、春日をバスルームへと追いやれば春日は小走りで向かった。
真斗はベッドへと腰掛けると、バスルームがガラス張りでなくて良かったと安堵した。
気持ちを落ち着かせる為にスマホを取り出し、春日を気長に待つことにする。
興味のないゴシップ記事や近辺のニュースを見たりと、なるべく意識を持ってかれないようにと真斗は読み込む事に集中した。

どれだけ経ったかだろうか春日が風呂から上がってきた。
入る前は緊張していた様子だったが、大きい湯船に満足したらしい。
「いやー!案外良いもんすね!」
「良かったな」
「若も入ってきてください」
「俺はもう家で入ってきた」
「えっ!?」
「さ、もう寝るぞ」
ごろんと寝転ぶと春日は意図を掴めず狼狽えたまま立っている。
それを見た真斗は自身の横をぽふぽふと叩き、来いと促した。
ゆっくりと春日はベッドに腰掛けるも、警戒はしているらしく少しだけ距離を開けている。
「しねぇって」
「それが良いのか悪いのかわかんねぇっす」
「もう電気消すからな」
「あ、はい。おやすみなさい」
「ああ」
電気を消されるも春日は何とも言えない気持ちで寝付ける気がしなかった。
隣の真斗は本当に寝るらしく穏やかな息遣いだけが聞こえてくる。
じーっと見つめていると真斗が急に春日の方に寝返りをうつ。
「寝ろよ」
「ね、寝ようとしてますって」
「嘘つけ」
「若、我慢してません?」
「うるせえ」
「やっぱりしませんか?」
「……あーくそ」
真斗は起き上がると、消した電気を少し明るくした。
その顔は眉間にシワを寄せているが、怒っているというより我慢していたのに煽るなと言いたそうな顔だ。
そんな真斗に続いて春日は起き上がると顔を近付けて鼻をくっ付けた。
「俺はやらないって言ったからな」
「解ってます。俺がしたいんですよ、若」
「仕方ねぇからしてやるよ」
「へへっありがとうございます」
春日の髪を撫でると今までの我慢していた分、かぶり付くように口付けをされた。
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