不死鳥に愛を(ビッグボディ×フェニックス)

真夜中すぎにどこかの梢で寝ぼけた小鳥がぴゅるりと鳴いた。いつもは眠りの深いオレがこんな時間に目を覚ましたのは、きっとそのせいだろう。日付が変わっていくらも経っていない。起きて寝床を抜けだせば目がさえてしまうだろうし、そばでフェニックスが眠っている。仕方なくそのままぼんやりと天井をながめた。
低く穏やかなフェニックスの寝息。彼がとなりで身を横たえていることが少し不思議だ。
出会った時の印象は最悪だったから。

ある日とつぜん、オレ目の前に神様が現れて「自分はお前の守護神で、お前はもしかしたら王子様かもしれない」とささやいた。あんまり深く考えずに(それがオレの長所であり短所でもある)神様のいう通りにしていたら、大衆の面前に引き出され、そこで初めてフェニックスに会った。つけ加えると彼の他にも三人いた。自己紹介もかねて話しかけてみたら、すぐに高飛車でとりつく島もない男だと悟った。
それから紆余曲折あってオレのチームとフェニックスのチームが戦い、オレのチームはいともたやすく全敗した。
「ああ、コイツには到底かなわない」
フェニックスのマッスルリベンジャーをくらった瞬間、身にしみてそう感じたのを覚えている。

それからずっと後になって、異星者がやってきたり天の神々が地上におりてきた。オレたちはまた集まって彼らと戦うことになった。もともとその知らせを持ってきたのは自称・守護神たちだったけど、お膳立てはほとんどフェニックスだったから、今でもあれはフェニックスがやってのけたことだとオレは思ってる。あげくにオレはフェニックスとタッグを組んで神々と戦うハメになった。戦っている最中、ここが命の瀬戸際だという瞬間がいくどもあった。これ以上はもうムリだという土壇場で、フェニックスは「お前ならできる、だから選んだ」とオレに言った。オレはソレで覚悟を決めた。命がかかっていたのに、自分のアタマで考えたことより相手の言葉を信じたのだから、おかしな話だ。
その結末は今もこうやってオレが生きていることが答えだ。

フェニックスがライバル以上の存在になったのはそれからだ。お察しのとおり頑なで、だけど少しずつ距離を縮めて、お互いのことをよく知るようになった。そのうちに、フェニックスが打ちとけた相手にだけみせるような顔をするようになって、まるで固く結んだ蕾が開いていくようで、うれしかった。
初めての夜は酷いものだった。ラップバトルみたいに、ただお互いの気持ちをぶつけ合うだけ。結局どちらが勝ったのか今でもよく分からない。だけどやっぱりこういうことに勝ち負けなんてないんだろう。だって今ではお互いこんなにも充たされているのだから。

フェニックスはいつだって常人には理解のおよばない予兆を目にしている。そしてただ一人でそれを背負おうとする。嘆くでも呪うでもなく。オレはアタマはからきしだが力だけは人並み以上だから彼が背負おうとしているのを手伝うのは朝飯前だ。
フェニックスがかつて誰かを陥れたのは自分が陥れられるのを何より恐れていたからだ。オレは誰にもそんなことをしないし、フェニックスもそれをよく知っている。だから彼はもう誰のことも陥れることはない。

――慣れないアタマを使ったので、どうやらやっと眠れそうだ。
だけどその前に、額の紋章にそっとキスをする。
不死鳥に、愛を。

fin
(初出:2024.08.27 pixiv)
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