二つの土産(ビッグボディ×フェニックス)

「ただいま!」
と、そこへビッグボディが出先から戻ってきた。
「早かったな」
「用事がすんなり片づいたんで終わってすぐ帰ってきたんだ。土産を買ってきたら一緒に食おう」
ビッグボディは手にさげていた箱をフェニックスにさし出した。箱の形から察するに中はケーキの類だろう。
それにしても。
「ずい分大きい箱だな」
「お前の好みが分からなかったんで多めに買ってきた」
「食いきれるか?こんなに」
フェニックスは若い頃に父親を亡くしたあと、病気がちな母親の面倒をみながら長く耐乏生活をおくってきた。そのせいか食べ物を無駄にすることに著しい心理的抵抗がある。
「残った分はオレが食う」
「これを?全部?」
「ああ、美味そうだろ?」
あらためて箱を開けてみたら5個や6個ではきかない数だ。スポンジやらタルトやら、のっているのはホイップクリームだったりフルーツだったり。色とりどりのケーキがおし合いへし合いしていた。
フェニックスの懸念など思いもかけず、ビッグボディは笑っている。
まさか一人で店に入って買ってきたのだろうか。身長2.5メートルになんなんとする、強健そのものといったこの超人が、ガラスのショーケースに顔をよせてスイーツを吟味する姿は誰がどう見てもこっけいだ。
フェニックスは喉の奥で押し殺すように笑い始めた。
「……どうした?」
「何でもない、気にするな。それより早速いただこうか、茶はオレが淹れよう。コーヒー、紅茶どちらがいい?」
「そうだな、オレは紅茶にしよう」

土産が二つ。
一つはケーキ。
もう一つはこの胸の温かな思い。

fin
(初出:2024.08.14 pixiv)
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