二つの土産(ビッグボディ×フェニックス)

当然のことだが、超人といえど腹は減る。いや、人間と比べたら超人こそしょっちゅう腹を減らしている。おまけに地球の主だった種族は人間であるため、生きていくとこの全てが特殊事例として扱われ、住居、税金、その他もろもろで少なくない金銭的負担を常に強いられている。
いつかのある日、フェニックスは「一人口は食えないが、二人口は食えるという言葉があってな」と切り出し、ビッグボディに二人で暮らす提案を持ちかけた。ビッグボディ自身は物事全般にとても大らかな質だから、提案を二つ返事で受け入れた。
「でも、いいのか?」
「何がだ?」
「お前は神経質だから、他人と暮らすなんてストレスだろう」
するとフェニックスは言おうかどうしようか、と逡巡する様子をみせたあと、ボソリと言った。
「……お前なら、いい」
そうして彼らは二人で暮らしはじめた。

生活するにあたってとくだん取り決めを交わすことはなかったが、いつの間にか洗濯はフェニックスの担当になった。ビッグボディときたら何もかも一緒くたにして洗濯機に放り込み、乾いた衣類のたたみ方も大ざっぱ。しかし、あの巨躯に見合った大きな手指では細かい仕事を煩雑に思うのも無理はない。
今日もドラム式洗濯機を回したフェニックスは、しばしの後、完了のアラーム音をたてる洗濯機から乾燥まで終わった洗濯物を取りだした。ムッとした熱気に包まれた洗濯物をリビングに運んで手際よくたたんでいく。肌着、ショーツ、靴下、ハンカチ。二人はまるで大人と子供ほども身体の大きさが違うから、手にしているのがどちらのものなのか、たちまち分かってしまう。同じ色のソックスでも然り。だのにビッグボディときたら(その頃はまだ洗濯は順番制だった)サイズはおろか、微妙な色の違いも無視して大きい黒の靴下と小さい紺の靴下を組にしたり、ごっちゃに畳んでタンスに突っ込んでしまう。フェニックスはそのたび眉間にをシワをよせて神経衰弱をするハメになるのだった。
それでも、たまにそんなうふうに噛み合わないことがあっても、ビッグボディは虚心坦懐に「悪かった」と謝罪の言葉を口にする。その姿はまるで何かやらかしてしょげ返った大型犬のようで、フェニックスの腹の虫もすぐにおさまってしまう。

そんなビッグボディがフェニックスに対して一度だけ怒ってみせたことがあった。共にタッグを組んで神に挑んだ、かつてのあの戦いだ。ファイトの最中ずっと傲慢で居丈高だったフェニックスに、さすがのビッグボディもついに堪忍袋の緒が切れた。あわや空中分解寸前となったタッグを救ったのはキン肉スグルの一言だった。
「正しいだけでは人はうごかない」
ビッグボディの反発にも驚愕したが、スグルの一言はさらに衝撃だった。と、同時にフェニックスは自分がまたあの頃と同じ過ちを犯しかけていることに気づき、たちまち改心し、ふるまいを改めたのだった。
今では遠い昔の話だ。
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