生存戦略(ビッグボディ×フェニックス)

ある夏の日、フェニックスとビッグボディは大きな国道脇の歩道を並んで歩いていた。
大小さまざまクルマが排気ガスをまき散らしながら二人のそばを走り過ぎていく。
周囲には大きな建物も街路樹もなく、しばらく前からまるで暴力みたいな陽射しを浴び続けていた。
首筋の汗をぬぐいながら、ビッグボディがポツリとつぶやく。
「……暑いな」
「オレはそうでもない。お前の影があるからな」
ビッグボディがふり返ると、彼のつくる大きな影のなかにフェニックスはポジションをさだめていた。
「ズルいぞ」
「利用できるものは利用する。生存戦略だ」
ビッグボディは釈然としない思いをかかえながらも「まぁ、いいか」と向きなおってふたたび歩きだした。

「おい」
とつぜんフェニックスに呼びかけられ、再びビッグボディがふり返った瞬間、顔面めがけて缶コーヒーが飛んできた。
「うわっ!?」
彼は驚きながらも、超人ならではの反射神経でなんなく受けとめる。キンキンに冷えた缶はビッグボディの大きな手のひらにすっぽりおさまった。
「あ、危ないだろっ」
「やる。飲め」
道ばたの自動販売機で買い求めたのだろう、フェニックス自身も同じものを手にしていて、すでに口をつけていた。
ビッグボディもそれにならい、プルトップを開けると一気に飲みほした。冷たさがのどをすべり落ち、快い甘さと香りが一瞬疲れを忘れさせてくれた。
「うまい」
「お前がダウンしたら、オレが困るからな」
「サンキュー」
フェニックスの分かりにくい優しさや回りくどいやり方を、ビッグボディはすっかり理解しているし、今では慣れっこだ。
「なぁ、これもお前の言う『生存戦略』か?」
「そうだ」
ビッグボディはすっかり飲みほした空き缶を紙クズみたいに握りつぶすと、再び歩きだした。

fin
(初出:2024.08.14 pixiv)
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