本編【31話~最終話】
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「そうだ、趙雲。私の部屋はどうなったの?」
牢を出てまだ数歩も進んでいないというのに、○はそう言って趙雲の腕に絡みつく。
「……離れろ。歩きにくい。まったく…さっきまで牢にいたというのに」
「言ったでしょ。私は切り替えが早さが売りなの」
そう言いながらも、趙雲の声に咎める調子はない。
「それに思いがけず外に出られたんだもの。少しくらい甘えてもいいでしょ?」
趙雲の肩に頬を寄せるようにして、彼女は楽しそうに笑う。
今さっきまで牢にいたとは思えないほど軽い。
しかしその軽さの奥にどれだけの覚悟を持っていたのかを、趙雲はもう知ってしまった。
「ねえ、私の部屋、取り調べの為にひっくり返されちゃったと思うんだけど。どうなるの?」
「そうだな…またしばらくは、私の部屋だ」
「えぇ?」
○は目を丸くした。
「一人の部屋でコソコソしたいわ」
「だからだ。監視も兼ねている」
わざと事務的にそう言うと、○は笑った。
「その言い方。もっと優しく言ってくれればいいのに」
そう言いながら、思わず口元が緩む。
「じゃあ、今日から…」
○はわざと大袈裟に間を取って趙雲の顔を覗き込んだ。
「一緒に寝ましょうね。衝立越しじゃなくて。こうやってくっついて」
「分かった」
趙雲の即答に、聞いた本人が固まる。
抱き着いていた腕の力がわずかに緩んだ。
「え…なに、今の」
「同じ部屋で、使う寝台は一つという意味だ」
そこまで言って○を見ると、○の顔が赤くなっていた。
いつもは余裕たっぷりで人をからかってばかりの女が、目を泳がせ口をモゴモゴさせている。
「嫌なら、別の手配を…」
趙雲がそう言いかけると、○は慌てて首を振った。
「い、嫌じゃない!ただ…その……」
言葉を探すように視線を彷徨わせ、それから、小さく息を吸う。
「……まさか、そんなふうに即答すると思わなかったから、驚いただけよ」
その声は驚くほど素直だった。
趙雲はしばらく黙って彼女を見下ろす。
初めて見た表情だった。
「じゃあ……よろしくね、隊長殿」
からかうようでいて、どこか照れたその声音に、趙雲の胸の奥が静かに揺れた。
夜の城内は静かで、二人分の足音だけが石畳に響いていた。
牢を出てまだ数歩も進んでいないというのに、○はそう言って趙雲の腕に絡みつく。
「……離れろ。歩きにくい。まったく…さっきまで牢にいたというのに」
「言ったでしょ。私は切り替えが早さが売りなの」
そう言いながらも、趙雲の声に咎める調子はない。
「それに思いがけず外に出られたんだもの。少しくらい甘えてもいいでしょ?」
趙雲の肩に頬を寄せるようにして、彼女は楽しそうに笑う。
今さっきまで牢にいたとは思えないほど軽い。
しかしその軽さの奥にどれだけの覚悟を持っていたのかを、趙雲はもう知ってしまった。
「ねえ、私の部屋、取り調べの為にひっくり返されちゃったと思うんだけど。どうなるの?」
「そうだな…またしばらくは、私の部屋だ」
「えぇ?」
○は目を丸くした。
「一人の部屋でコソコソしたいわ」
「だからだ。監視も兼ねている」
わざと事務的にそう言うと、○は笑った。
「その言い方。もっと優しく言ってくれればいいのに」
そう言いながら、思わず口元が緩む。
「じゃあ、今日から…」
○はわざと大袈裟に間を取って趙雲の顔を覗き込んだ。
「一緒に寝ましょうね。衝立越しじゃなくて。こうやってくっついて」
「分かった」
趙雲の即答に、聞いた本人が固まる。
抱き着いていた腕の力がわずかに緩んだ。
「え…なに、今の」
「同じ部屋で、使う寝台は一つという意味だ」
そこまで言って○を見ると、○の顔が赤くなっていた。
いつもは余裕たっぷりで人をからかってばかりの女が、目を泳がせ口をモゴモゴさせている。
「嫌なら、別の手配を…」
趙雲がそう言いかけると、○は慌てて首を振った。
「い、嫌じゃない!ただ…その……」
言葉を探すように視線を彷徨わせ、それから、小さく息を吸う。
「……まさか、そんなふうに即答すると思わなかったから、驚いただけよ」
その声は驚くほど素直だった。
趙雲はしばらく黙って彼女を見下ろす。
初めて見た表情だった。
「じゃあ……よろしくね、隊長殿」
からかうようでいて、どこか照れたその声音に、趙雲の胸の奥が静かに揺れた。
夜の城内は静かで、二人分の足音だけが石畳に響いていた。