私は規格外【陸遜】
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翌朝、医務室には重苦しい沈黙と、どこか居心地の悪い空気が流れていた。
「……おかしいですね。陸遜殿」
老医師は、首を何度も傾げながら、腫れ上がった足首を慎重に触診した。
「あなたの捻挫は、昨日診た時はこれほど酷いものではありませんでした。安静にしていれば、今日には腫れも引いているはずの症状だったのですが…鍛錬にでも出られましたか?」
「…いえ」
陸遜は視線を虚空に泳がせ、生返事を繰り返した。
その耳たぶは、羞恥心で真っ赤だ。
医師も、まさかあの陸遜が怪我をしているのに情事に耽ったとは思わないらしい。
「……見立て違いだったかな。私も衰えたものだ」
医師が「うーむ」と唸りながら薬を塗り直す横で、付き添っていた○も視線を反らした。
「もっと深くまで捻っていたのかもしれん。いやはや、申し訳ない。今日から三日は、絶対に安静にしてください。いいですね?」
「……承知しました。以後、……『不測の事態』が起きぬよう、厳に慎みます」
念を押す医師にただただ陸遜は頷いた。
医務室を出た途端、○が笑う。
「はははっ、当分お預けね」
「はあ…医師には悪い事をしました」
「ま、いいじゃない。しばらくゆっくりしなよ。私が”管理”してあげるから。食事の内容や厠にいった回数まで」
「…そういう無神経さは、見習わなければなりませんね」
そう言って、差し出された○の手を、陸遜は握り返した。
陸遜の足が治る頃には、○と陸遜の噂はすっかり城中に広がっていた。
しかし公安で趙雲と恋仲になった時の様な陰口や視線は全くない。
「ま、あんたらの気持ちなんて、知らないのはお互い同士だけだったからな」
本陣で戦に出る準備をしている時に、そういって笑った凌統と甘寧に○は驚いた。
「それはそうと、陸遜殿はいつになりゃ○に求婚するんだい?子作りだってしてんだろ?」
「その下品な言い方やめて。ちゃんと出来ないように気を付けてるから」
甘寧は○の肩に腕を回して、頭を撫でまわす。
「しかし、こんなスットコドッコイに惚れるなんて、あいつも抜けてるよなぁ!」
陸遜は相変わらず○に手厳しいし、会えばすぐに口喧嘩になる。
特にすごく優しくなった訳でもない。
戦に出るのも変わらないし、それを止められた事もない。
でも一つだけ変わった事がある。
「またこんな所で遊んでいるのですか。○、早く配置につきなさい。まったく、目を離すとすぐにサボる」
「分かってるわよー」
「分かっていないでしょう!あなた方はデカくて目立つんですから、変な所に立っていたら敵の的になるんです」
ブツブツ言いながら○が馬を引き後ろに続くと、目の前に陸遜が立ちはだかる。
「いいですか。例によって○を囮にはするかもしれませんが、危険を感じたら無理をせずに私を呼んでください」
あれから、陸遜が○の近くで戦う様になった。
その一言に口の端を上げて笑った○は、「おっ?」と呟いて、手を陸遜の頭のてっぺんにあてた。
「もしかして陸遜、背伸びた?」
「…えっ」
一瞬嬉しそうな顔をしたが、「今更、伸びませんよ」とサッと目を反らす。
「くだらない事ばかり言っていないで、真剣にやってください。うまく力を示すことが出来れば、城内に邸宅が貰えるのですから」
「邸宅…?そんなの欲しいの?」
「それが貰えれば………あなたと一緒に暮らせますから」
「わぁ!…それってつまり、」
「いいからさっさとする。規格外のクマ女」
それだけ言い捨て歩いて行く陸遜。
○は笑いながら陸遜を追いかけた。
「……おかしいですね。陸遜殿」
老医師は、首を何度も傾げながら、腫れ上がった足首を慎重に触診した。
「あなたの捻挫は、昨日診た時はこれほど酷いものではありませんでした。安静にしていれば、今日には腫れも引いているはずの症状だったのですが…鍛錬にでも出られましたか?」
「…いえ」
陸遜は視線を虚空に泳がせ、生返事を繰り返した。
その耳たぶは、羞恥心で真っ赤だ。
医師も、まさかあの陸遜が怪我をしているのに情事に耽ったとは思わないらしい。
「……見立て違いだったかな。私も衰えたものだ」
医師が「うーむ」と唸りながら薬を塗り直す横で、付き添っていた○も視線を反らした。
「もっと深くまで捻っていたのかもしれん。いやはや、申し訳ない。今日から三日は、絶対に安静にしてください。いいですね?」
「……承知しました。以後、……『不測の事態』が起きぬよう、厳に慎みます」
念を押す医師にただただ陸遜は頷いた。
医務室を出た途端、○が笑う。
「はははっ、当分お預けね」
「はあ…医師には悪い事をしました」
「ま、いいじゃない。しばらくゆっくりしなよ。私が”管理”してあげるから。食事の内容や厠にいった回数まで」
「…そういう無神経さは、見習わなければなりませんね」
そう言って、差し出された○の手を、陸遜は握り返した。
陸遜の足が治る頃には、○と陸遜の噂はすっかり城中に広がっていた。
しかし公安で趙雲と恋仲になった時の様な陰口や視線は全くない。
「ま、あんたらの気持ちなんて、知らないのはお互い同士だけだったからな」
本陣で戦に出る準備をしている時に、そういって笑った凌統と甘寧に○は驚いた。
「それはそうと、陸遜殿はいつになりゃ○に求婚するんだい?子作りだってしてんだろ?」
「その下品な言い方やめて。ちゃんと出来ないように気を付けてるから」
甘寧は○の肩に腕を回して、頭を撫でまわす。
「しかし、こんなスットコドッコイに惚れるなんて、あいつも抜けてるよなぁ!」
陸遜は相変わらず○に手厳しいし、会えばすぐに口喧嘩になる。
特にすごく優しくなった訳でもない。
戦に出るのも変わらないし、それを止められた事もない。
でも一つだけ変わった事がある。
「またこんな所で遊んでいるのですか。○、早く配置につきなさい。まったく、目を離すとすぐにサボる」
「分かってるわよー」
「分かっていないでしょう!あなた方はデカくて目立つんですから、変な所に立っていたら敵の的になるんです」
ブツブツ言いながら○が馬を引き後ろに続くと、目の前に陸遜が立ちはだかる。
「いいですか。例によって○を囮にはするかもしれませんが、危険を感じたら無理をせずに私を呼んでください」
あれから、陸遜が○の近くで戦う様になった。
その一言に口の端を上げて笑った○は、「おっ?」と呟いて、手を陸遜の頭のてっぺんにあてた。
「もしかして陸遜、背伸びた?」
「…えっ」
一瞬嬉しそうな顔をしたが、「今更、伸びませんよ」とサッと目を反らす。
「くだらない事ばかり言っていないで、真剣にやってください。うまく力を示すことが出来れば、城内に邸宅が貰えるのですから」
「邸宅…?そんなの欲しいの?」
「それが貰えれば………あなたと一緒に暮らせますから」
「わぁ!…それってつまり、」
「いいからさっさとする。規格外のクマ女」
それだけ言い捨て歩いて行く陸遜。
○は笑いながら陸遜を追いかけた。