私は規格外【陸遜】
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「○、○!」
「うーん……」
「起きなさい○!軍議中ですよ!」
「は!!申し訳ごっ、!!!!」
顔を上げた途端に、頭頂部にとんでもない痛みが走った。
軍議の後、○は頭をさすりながら席を片付ける。
すると目の前にふらりと男性が立った。
そこにいたのは陸遜。
先程、寝こけた○を起こした人物だ。
○が勢いよくあげた後頭部が衝突したせいで、赤くなった顎をさすっている。
「先程はどうも」
へらりと笑うと、眉間に思い切りシワをよせた。
「今回の軍議の内容は、頭に入っているのですか?蜀軍との同盟の話ですよ!」
「へっ?え、ええ。まあ」
頬をかきながら視線を外す○に、イライラした面持ちで睨みを効かせる。
「また朱然殿あたりに聞くんじゃないでしょうね?彼も忙しいのです。分からない部分はご自身の足らない頭で考えなさい」
「何よその言い方っ」
バンっと机を叩いて立ち上がる。
立ち上がった○は、陸遜よりも頭1つ分程背が高い。
その上、顎をあげて陸遜を見下ろす様に目を向ける。
「全く、このクマ女は…」
「何よ。そんな下から睨みつけてサ」
フフンと笑う○に、陸遜は怒っている。
「だ、大体、○が規格外なんですよ」
陸遜も決して身長が低いわけではない。
高くもないが。
ただ、○が一般女性よりも…いや、男性と並んでも引けを取らない程に背が高いのだ。
「規格外な女でなければ、こうして顎に頭が当たる事もありませんでしたしね」
「ごめんなさいねぇ!背が!高くて!」
そう言うと軍議室を出て行った。
軍議室を出ると、すぐそこの廊下に凌統がいた。
腕組みをして壁にもたれていたが、○を見つけて手を挙げた。
「また言い合ってたのかい?」
彼は○の幼馴染だ。
その隣には心配そうな顔をした孫尚香。
彼女とは幼い頃からの遊び相手で戦場に立つ女性同士、仲が良く親友と言ってもいい。
「もう!またあんな事言って」
「傷つくぞ?男としては」
○はヘラヘラした顔で伸びをする。
「なによぉ、あっちが先に言い出したんじゃない」
歩く○に2人がついていく。
「居眠りしてたのは○が悪いでしょ」
「そ、それはそうだけど」
「とりあえず、軍議では居眠りしない事。いいわね?」
2人と別れ、自室に戻った○は、それにしても…と考える。
陸遜とは、彼が軍に参戦する事になる前からの付き合いだ。
最初に出会ったのが十八の頃。
きっかけは覚えていないが、親が将だったことですでに城にいた○は、仕官前の陸遜に城下で出会った。
陸遜が言うにはもう少し前に会っていたらしいが、詳細を聞いても教えてくれないまま、それから五年近い付き合い。
いつも最初は普通に話をしていても、結局売り言葉に買い言葉で言い合いになる。
言い様によっては気を使わずに接しているとも言うのだろうが、○としては毎回喧嘩腰で突っかかられて不満だ。
今日は特に仕事も無かったので、○は自分の獲物を担ぐと部屋を出た。
○はその身長のお陰か武勇に長けており、十八から戦場に出ている。
(鍛錬でもするかな)
そう思って鍛錬場に続く直進の廊下に出ると、少し前を陸遜が歩いていた。
道を変えようかと思ったその時、曲がり角から大喬が出てきた。
途端に陸遜の背中がシャンと伸びる。
彼の雰囲気が変わったのは後ろからでもすぐに分かった。
大喬は数年前、夫の孫策を亡くしている。
それからというもの、いつも憂いを帯びた顔で歩いている美女だ。
その大喬が陸遜に気付いてフワリと笑った。
○は反射的に、大喬から見えない様に柱の陰に隠れた。
○の所までは聞こえないが挨拶をしている様だ。
陸遜は何度も頭を下げて、慌てている様に見えた。
大喬は陸遜と少し話をしてすぐ横にあった廊下を曲がったが、チラッと見えた陸遜の顔は真っ赤だった。
「良かったね。愛しい大喬様とお話しできて」
突然背後に立ってそう言った○から、陸遜はすごい速さで離れる。
「○!?」
「いやいやいや、いいんでないかな。誰が誰を好きになっても」
「…何が言いたいのです?」
「は?恋に立場なんか関係ないよねって話」
他の国ではいざ知らず、呉国はその辺りが寛容だ。
侍女と結ばれる武将だっているくらいである。
「う、うるさい!○のことだから、ロクなことを考えていないはずだ!」
「いやちょっと待ってよ。別に私は何も…」
陸遜は自分の恋心がばれたのが恥ずかしいのだろう。
顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけていた。
さすがの○も狼狽える。
「別に子供じゃないんだし、恋してることなんて恥ずかしいことじゃないでしょ!落ち着いてよ!陸遜があの人の事好きなのなんて少し前から知ってたし…」
そう言われて咳払いをした陸遜は落ち着きを取り戻した様だ。
廊下の壁にもたれて、○は陸遜に聞く。
「告白とかしないの?」
「こっ、!?…し、しませんよ。第一できないでしょう」
隣にもたれていた陸遜は俯く。
こんな陸遜は初めて見た。
「まあ、孫策様の奥様だった方だもんね」
遠くさかのぼれば、大喬は陸遜の親族を殺した男の妻だ。
○の肌感では、勝手な事だが、呉の人間はそこに何の感情もない様に思う。
良い意味でも悪い意味でも、陸遜は陸遜という捉え方。
「…それに、大喬様は可憐で美しい人です。あのような方、私の様な一介の男が手にして良いはずがない。私の様な者にもああして、会えば丁寧に挨拶をしてくださって…」
そこまで言った陸遜は、○の表情を見て口をとじる。
陸遜からの突然の大喬自慢に、○はどんな顔をしたら良いのかわからず、半笑いだったのだ。
それを見た陸遜は馬鹿にされていると感じたのか、またも顔を真っ赤にした。
「とにかく!貴方とは正反対のお方で、恐れ多いんです」
「え!なんで私をそこで引き合いに出すのよ!」
「貴方みたいな、粗忽者で身長だけビヨビヨ伸びていく様な筋肉女に、あの方の美しさは分かりません!」
その随分な言いように、流石の○も腹が立ってきた。
ずいっと陸遜に近づく。
「あぁらそう。そうでしょうね。私には分からないでしょうね。まあ、小さい者同士でお似合いでなくて?」
「無礼な!」
「無礼はどっちよ!」
ドン、と床を足で鳴らすと、○はずかずかと大股で鍛錬場に向かって歩き出した。
陸遜は○の背中を睨んでいたが、程なくしてどこかへ行ってしまった。
「うーん……」
「起きなさい○!軍議中ですよ!」
「は!!申し訳ごっ、!!!!」
顔を上げた途端に、頭頂部にとんでもない痛みが走った。
軍議の後、○は頭をさすりながら席を片付ける。
すると目の前にふらりと男性が立った。
そこにいたのは陸遜。
先程、寝こけた○を起こした人物だ。
○が勢いよくあげた後頭部が衝突したせいで、赤くなった顎をさすっている。
「先程はどうも」
へらりと笑うと、眉間に思い切りシワをよせた。
「今回の軍議の内容は、頭に入っているのですか?蜀軍との同盟の話ですよ!」
「へっ?え、ええ。まあ」
頬をかきながら視線を外す○に、イライラした面持ちで睨みを効かせる。
「また朱然殿あたりに聞くんじゃないでしょうね?彼も忙しいのです。分からない部分はご自身の足らない頭で考えなさい」
「何よその言い方っ」
バンっと机を叩いて立ち上がる。
立ち上がった○は、陸遜よりも頭1つ分程背が高い。
その上、顎をあげて陸遜を見下ろす様に目を向ける。
「全く、このクマ女は…」
「何よ。そんな下から睨みつけてサ」
フフンと笑う○に、陸遜は怒っている。
「だ、大体、○が規格外なんですよ」
陸遜も決して身長が低いわけではない。
高くもないが。
ただ、○が一般女性よりも…いや、男性と並んでも引けを取らない程に背が高いのだ。
「規格外な女でなければ、こうして顎に頭が当たる事もありませんでしたしね」
「ごめんなさいねぇ!背が!高くて!」
そう言うと軍議室を出て行った。
軍議室を出ると、すぐそこの廊下に凌統がいた。
腕組みをして壁にもたれていたが、○を見つけて手を挙げた。
「また言い合ってたのかい?」
彼は○の幼馴染だ。
その隣には心配そうな顔をした孫尚香。
彼女とは幼い頃からの遊び相手で戦場に立つ女性同士、仲が良く親友と言ってもいい。
「もう!またあんな事言って」
「傷つくぞ?男としては」
○はヘラヘラした顔で伸びをする。
「なによぉ、あっちが先に言い出したんじゃない」
歩く○に2人がついていく。
「居眠りしてたのは○が悪いでしょ」
「そ、それはそうだけど」
「とりあえず、軍議では居眠りしない事。いいわね?」
2人と別れ、自室に戻った○は、それにしても…と考える。
陸遜とは、彼が軍に参戦する事になる前からの付き合いだ。
最初に出会ったのが十八の頃。
きっかけは覚えていないが、親が将だったことですでに城にいた○は、仕官前の陸遜に城下で出会った。
陸遜が言うにはもう少し前に会っていたらしいが、詳細を聞いても教えてくれないまま、それから五年近い付き合い。
いつも最初は普通に話をしていても、結局売り言葉に買い言葉で言い合いになる。
言い様によっては気を使わずに接しているとも言うのだろうが、○としては毎回喧嘩腰で突っかかられて不満だ。
今日は特に仕事も無かったので、○は自分の獲物を担ぐと部屋を出た。
○はその身長のお陰か武勇に長けており、十八から戦場に出ている。
(鍛錬でもするかな)
そう思って鍛錬場に続く直進の廊下に出ると、少し前を陸遜が歩いていた。
道を変えようかと思ったその時、曲がり角から大喬が出てきた。
途端に陸遜の背中がシャンと伸びる。
彼の雰囲気が変わったのは後ろからでもすぐに分かった。
大喬は数年前、夫の孫策を亡くしている。
それからというもの、いつも憂いを帯びた顔で歩いている美女だ。
その大喬が陸遜に気付いてフワリと笑った。
○は反射的に、大喬から見えない様に柱の陰に隠れた。
○の所までは聞こえないが挨拶をしている様だ。
陸遜は何度も頭を下げて、慌てている様に見えた。
大喬は陸遜と少し話をしてすぐ横にあった廊下を曲がったが、チラッと見えた陸遜の顔は真っ赤だった。
「良かったね。愛しい大喬様とお話しできて」
突然背後に立ってそう言った○から、陸遜はすごい速さで離れる。
「○!?」
「いやいやいや、いいんでないかな。誰が誰を好きになっても」
「…何が言いたいのです?」
「は?恋に立場なんか関係ないよねって話」
他の国ではいざ知らず、呉国はその辺りが寛容だ。
侍女と結ばれる武将だっているくらいである。
「う、うるさい!○のことだから、ロクなことを考えていないはずだ!」
「いやちょっと待ってよ。別に私は何も…」
陸遜は自分の恋心がばれたのが恥ずかしいのだろう。
顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけていた。
さすがの○も狼狽える。
「別に子供じゃないんだし、恋してることなんて恥ずかしいことじゃないでしょ!落ち着いてよ!陸遜があの人の事好きなのなんて少し前から知ってたし…」
そう言われて咳払いをした陸遜は落ち着きを取り戻した様だ。
廊下の壁にもたれて、○は陸遜に聞く。
「告白とかしないの?」
「こっ、!?…し、しませんよ。第一できないでしょう」
隣にもたれていた陸遜は俯く。
こんな陸遜は初めて見た。
「まあ、孫策様の奥様だった方だもんね」
遠くさかのぼれば、大喬は陸遜の親族を殺した男の妻だ。
○の肌感では、勝手な事だが、呉の人間はそこに何の感情もない様に思う。
良い意味でも悪い意味でも、陸遜は陸遜という捉え方。
「…それに、大喬様は可憐で美しい人です。あのような方、私の様な一介の男が手にして良いはずがない。私の様な者にもああして、会えば丁寧に挨拶をしてくださって…」
そこまで言った陸遜は、○の表情を見て口をとじる。
陸遜からの突然の大喬自慢に、○はどんな顔をしたら良いのかわからず、半笑いだったのだ。
それを見た陸遜は馬鹿にされていると感じたのか、またも顔を真っ赤にした。
「とにかく!貴方とは正反対のお方で、恐れ多いんです」
「え!なんで私をそこで引き合いに出すのよ!」
「貴方みたいな、粗忽者で身長だけビヨビヨ伸びていく様な筋肉女に、あの方の美しさは分かりません!」
その随分な言いように、流石の○も腹が立ってきた。
ずいっと陸遜に近づく。
「あぁらそう。そうでしょうね。私には分からないでしょうね。まあ、小さい者同士でお似合いでなくて?」
「無礼な!」
「無礼はどっちよ!」
ドン、と床を足で鳴らすと、○はずかずかと大股で鍛錬場に向かって歩き出した。
陸遜は○の背中を睨んでいたが、程なくしてどこかへ行ってしまった。
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