徐庶の婚約者【徐庶×アナタ←趙雲オチ】
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
諸葛亮の執務室から別棟へ、○は文書の束を抱えて歩いていた。
すると。
「重いだろ、貸せ貸せ」
横から、周倉がひょいと半分を持ち上げる。
「大丈夫です、自分で―」
「いいから、いいから」
○は苦笑しつつ、任せた。
二人並んで歩く廊下は、人の往来も少なく、静かだ。
「なあ」
「はい?」
「最近さ」
歩調を合わせたまま、周倉は前を見て言う。
「趙雲殿が、俺を見ると怖い顔するんだよな」
「…怖い顔?」
「ああ。なんて言うか」
眉をひそめて考える。
「戦の前みたいな顔っつうのかな。稽古中も圧が凄くてさ」
○は言葉に詰まる。
「また、なにか失礼を働いたのでは…」
「またって…俺、何かやらかしたか?」
「武将としての礼儀が欠けているって、関羽殿に叱られているのを見たことがありますよ」
あれを見られていたか…と、周倉は頭を抱えた。
「俺、そんなに礼儀作法、滅茶苦茶か?」
「どうでしょう…私は存じ上げませんからね…でも趙雲殿は理由もなく怒る方でしょうか」
○は一緒に考えこんだが答えは出ない。
趙雲が怖い顔をしているのを見たことがない。
すると、廊下の先に人影が見える。
「……あ、」
周倉が小さく呟いた。
前方から趙雲がこちらへ歩いてきていた。
周倉はわざとらしく背筋を伸ばすと小声で言う。
「な?見ろ見ろ。やっぱ、怖い顔してる」
○は、思わず小さく笑った。
「…本当ですね」
すれ違い様、三人は軽くお辞儀をする。
「お疲れ様です、趙雲殿」
「お疲れ様です」
それ以上の会話はない。
「用向きの途中だ。失礼する」
趙雲はそれだけ言い、静かに歩き去る。
足音が、二つに分かれた時。
「なあ、○殿。この後、飯どうだ?」
「え…」
「博望坡の勝ち祝いってやつだ」
「…今日は、書類の整理が」
「少しだけだって!軽く飯食って帰るだけ」
軽い調子の周倉に、○は困った様に息をつく。
「本当に、少しだけですよ?明日も早いので」
その時。
趙雲の歩みが、ほんの一拍、遅れた。
振り返りはしないが、神経が背中に集中する趙雲。
「そうこなくちゃな!じゃあ町の…」
約束の内容は、もう趙雲には聞こえない。
趙雲は、そのやり取りを背に、歩き続ける。
―飯に行こう。
戦場でも、政でも、何度も耳にしてきたはずのありふれた誘い。
それなのに胸の奥で、何かが、きしんだ。
○が誰かに気軽に誘われ、それを自然に受け入れる。
自分の知らない場所で、当たり前に思い出が積み重なっている。
趙雲は何かを振り払うように足早に目的地へ向かった。
******
翌日。
城内。
○は諸葛亮の指示で、物資の在庫確認の為に倉庫の前にいた。
「おう、○殿」
声をかけてきた周倉。
彼は○の仕事を手伝ってくれるらしい。
「ご自身の仕事はいいんですか?」
「俺は戦働きだからな。こうして何もない日は鍛錬以外やることがねえんだよ。これも鍛錬だ」
そう言って、○の代わりの大きな荷物を持ち上げてくれた。
一方、趙雲は城内を足早に歩いていた。
(まったく。見張っておかねばすぐに鍛錬を怠る…)
ここしばらく、まともに趙雲の鍛錬をしていない周倉を探していた。
武術の鍛錬は受けている、それが終わったら姿をくらませる周倉。
武将としての立ち振る舞いについては学びが足りない、と趙雲は感じている。
すると通路の向こうから周倉の声がした。
そちらに向かうと、もう一人…○の声も聞こえた。
思わず立ち止まり、角から覗き込んだ。
周倉は倉庫の整理を手伝いながら話をしている。
「この物資、変な所に置いてあったぞ」
「えっ…?あ。すみません。これ、元直の書き損じ、で……あぁ」
徐庶の名前を出して口ごもった○は、気まずそうにうつむいて、髪を耳にかける。
「そこだよなぁ」
周倉が腰に手を当てて○を見た。
「昨日の飯の時も言ったがよぉ、徐庶殿の事、もっと自然に話していいと思うがなぁ」
「…そうでしょうか」
「おう。ただでさえ、存在感薄い人だったんだから」
そう言った周倉に○は笑った。
趙雲は静かに踵を返す。
足音を立てないように。
あくまで、巡回の途中であったかのように。
歩きながら、胸の内で言葉にならない思いが渦巻く。
誰と誰が親しくしようと、口を挟む権利などない。
むしろ○に関しては元気になれたらなんでもいいはずだ。
この気持ちの悪さを振り払うべく、趙雲は一人で鍛錬場に向かった。
何度も身体に叩き込んだ型を振る。
鋭い風切り音に、周囲の兵士は感嘆する。
趙雲のきれのある動きは見事だ。
関羽にも称賛された。
それでも。
鍛錬を終えても、趙雲の胸のつかえは取れない。
▽▽▽▽
※FANBOXでは周倉との食事シーンを公開中です。趙雲は出てきません。読まなくてもストーリーは分かります。興味を持っていただけた方はこちら
https://haminapu.fanbox.cc/