電子と音楽の融合、それはこの数年で特に身近になった表現だ。
昔から辿れば、例えば「デイジー・デイジー」を歌うIBM製コンピュータは歌声合成の祖と呼ばれているし、1970年の大阪万博の「鉄鋼館」で展示された電子制御の自動演奏ホールなども興味深い。しかし、そこまで遡らずとも我々は充分分かっている。VOCALOIDやSynthesizer Vのような歌声合成ソフトの進化だけでなく、人間も電子通信を利用した表現が行いやすくなった。例えばperfumeのパフォーマンスは実際のダンスにAR技術で適切なエフェクトを掛け、それをテレビの生放送にそのまま送るというようなことをしていたりする。他には、「命に嫌われている」などの楽曲で人気のある音楽プロデューサー・カンザキイオリ氏が率いる音楽的VTuver(VSinger)事務所「KAMITSUBAKI STUDIO」では、「花譜」氏、「ヰ世界情緒」氏など、所属する歌手は全て顔出しをせず、イラストと3Dモデルを用いた世界観構築をしている。AR/VRの環境を基盤にして、電子空間にアーティストを置くという構成ならではの表現方法を実践し活躍している一門だ。
このように、電子と音楽の融合、それは現代において特異というわけではない。しかし、保守的キャラクターを掲げてきたValkyrieがその方面に触れ、表現の幅をまた増やしたという所に、今回のストーリーの面白味がある。