影片が『テストワールド』で作り続けた「デジタルアート」とは、 「NFTアート」と呼ばれる種類のものであることが推測される。最近ではTwitterのアイコンにも要素が取り入れられるなど(注:六角形になっているアイコンがそれ)身近なものになりつつあるが、ここで、作中の描写の補強の意味を込めて、「NFTアート」について簡単に情報を整理しておく。

NFTアートとは、NFT技術を応用したアート作品である。しかし、その「NFT」こそが分かりにくいので、調べついでにここに記述する。
NFTとは、「Non-fungible Token」の略で、直訳すると「代替不可能なトークン」となる。
まず「代替不可能」を把握するために、対極の「代替可能」な資産について考えておく。
「代替可能な資産」とは、現実の通貨やビットコインなどの仮想通貨そのもののような、そのそれぞれが必ず同じ価値を持ち、どれを持っても同じように別のものへ交換することができる資産のことを言う。
「代替不可能な資産」はそうでないもの、つまり代わりになるものが存在しない、価値がそのモノ固有のものであるもののことをいう。例えば有名人のサイン入りグッズであったり、料金を払って手に入れたチケット(注:チケット同士で同額でやりとりされるとは限らない)などがこれに当てはまる。
そして、後ろの「トークン」という言葉は元々「証拠」や「記念するもの」という意味を持つが、ここでは、仮想通貨の取引で使われる際の「デジタルの流通においてモノの価値を象徴するもの」という訳が合うだろう。今までデジタルで表現された作品は無断コピーや改竄の被害に遭うのが常だったところ、そこに、トークンという、いわば「鑑定書」を付与できるようになった。
まとめると、デジタルの世界において作品が作品単体で唯一無二の存在と価値を維持したままで流通できるようになった仕組み、これがNFTだ。
そして、それを用いて発表された芸術作品、それがNFTアートと言われるものである。