電子の世界では、あらゆる方向からの玉石混淆の情報が飛び交う。しかし、その情報それぞれを「玉(価値がある、重要)」なのか「石(無用、無粋)」なのか鑑別する物差し――例えば社会常識など――は存在しない。全てを自分で選ぶことが出来るのが電子の世界だ。これは各々がどのような思想を「真実」にしても良いと言い換えても良い。それは一見して非常に自由で明るいイメージを持つ。しかし、それは逆に言えば、無数にある情報のどれかを自分の意思で「真実」として規定しなければならないということでもある。

ここからいわゆる「陰謀論」は生まれ、人々の分断を加速させている。

そんなこの空間で、本当に純粋な姿勢で活動して先導者(Agitator)を努めることが可能だろうか？
私の考えでは、己の思想・信条に立ち返ることなくして、先導を宣言することは不可能だ。電子の世界には地面も空もなく、自分で「ここが地面(=思想的地盤)」、「ここが空(=理想)」と定義する必要がある。自分たちだけでなく、相手がそこをどのように定義しているのか、どのあたりが似ていてどのあたりが異なるのか、常に確認しながら旅をしていくのが、電子の世界の「歩き方」なのだ。
「Valkyrieは本当に電子の世界を歩けるのか？」それが、私が大きく抱いた思いだ。