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天使の分け前

「…え、貴方、そういう感じなの?」
自分の怒りが煮えたぎり始めているのを破魔矢は脳裏に感じる。おちょくるのも大概にしなさいよ、という視線を相手に向けるも、状況が好転する兆しはない。なんせ相手は機械だ。表情なんてものはわざわざ作ってやっているだけのものであって、ウソをつくことなぞ容易い。
その時、破魔矢にある案が浮かんだ。佐伯と名乗るセンチネルから一瞬視線を外し、制御卓を見た。
今まで気付いていなかったが、見たことのない赤いランプが光っていた。目を凝らしてその横の表示を読む。
危険度高:過重負荷,制御が確立されていません:ユニット20013
「ユニット20013…うっわ」
破魔矢は今までごまかしてきた様々な恐怖が一斉に思考へ侵入してくるのを感じた。センチネルが、暴走している。止めないと、様々な方面で、マズい。
「母艦(マザー)、聞こえる?この部屋だけに反応して。わたしは破魔矢実乃、管理者権限を行使。ユニット20013をネットワークから切断。早く」
「処理中……推定残り時間10秒……」
たった10秒、しかし破魔矢にはそれがもどかしい。だって、人格がすり替わった相棒と同じ空間にいるのが快いわけがないのだから。ひきつった笑みを貼り付けたままの破魔矢と、佐伯になったセンチネル。異様な気まずさに死んだ空気は開いた窓から抜けることもなくただそこにあり、珍しく破魔矢の胃を締め上げた。
「切断完了。問題解決後直ちに再起動、再接続すること」
天井からアナウンス。破魔矢は「佐伯センチネル」から視線を外すことなく制御卓のそばに寄り、再起動コマンドを入力した。
「あ、あの…」困惑する佐伯センチネル。
「あー、ま、まあ、この度はありがとうございました、っと」
自分で何を言っているのか分からなくなりながら、破魔矢は佐伯センチネルが倒れるのを見守った。
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