天使の分け前
「あー…なるほど、佐伯さんね、こんばんは」破魔矢は、いちおう両方の手のひらを見せて丸腰であることを示しながら事務室の中へ踏み込む。一歩が重い。
「わ、わたしは破魔矢実乃。ここで司書をしているの…よろしく」
「よろしく、破魔矢さん。ちなみにここはどこですか」
「ここは相禱学園。対妄霊(ゴースト)の戦力たる施錠者を育成する学園よ…です」
「へえ、妄霊退治か。今はそんな時代なんですね」
「ええ、そうなの」
「育成…育成ということは、あの女の子のような人材を育成するということですか」
「そういうことよ…我々は彼女の意志と能力を継ぐ者として存在しているの」
「意志を継ぐ者…なんかかっこいいですね」
「そりゃどうも」
口調こそ冷静を装っているが、破魔矢の表情は強張っている。佐伯一仁を名乗るセンチネルにどう接したらいいのかわからない。自分や学園に友好的なのか、その逆なのか、読めない。
沈黙の中で、もしかしたら、と破魔矢は考える。センチネルはただ遊んでいるだけかもしれない。しかし、自分が探索を許可したことで、何かトラブルに巻き込まれた可能性も否定できない。センチネルは有能な人工知能(キカイ)であると破魔矢も認めていたが、自律した行動を認めている以上はミスもあるだろうと想定はしていた。それにしてもこれは何だ。何の茶番なのか。苛立ちが少しずつ露わになっていく。
「ちょっとセンチネル、ふざけるのも大概にしなさい、さすがにここまでやったら面白くないわよ」
その声は虚空に響く。破魔矢の眼前に佇むそれは、まるでそれが自分のことであることがわからないかのように、自分の周囲を見回しつつ、首を軽く傾げてみせると、再び口を開いた。
「ええっと…すみません、先程からおっしゃっている『センチネル』とはどんなモノでしょうか?無知ですみませんが……」
「わ、わたしは破魔矢実乃。ここで司書をしているの…よろしく」
「よろしく、破魔矢さん。ちなみにここはどこですか」
「ここは相禱学園。対妄霊(ゴースト)の戦力たる施錠者を育成する学園よ…です」
「へえ、妄霊退治か。今はそんな時代なんですね」
「ええ、そうなの」
「育成…育成ということは、あの女の子のような人材を育成するということですか」
「そういうことよ…我々は彼女の意志と能力を継ぐ者として存在しているの」
「意志を継ぐ者…なんかかっこいいですね」
「そりゃどうも」
口調こそ冷静を装っているが、破魔矢の表情は強張っている。佐伯一仁を名乗るセンチネルにどう接したらいいのかわからない。自分や学園に友好的なのか、その逆なのか、読めない。
沈黙の中で、もしかしたら、と破魔矢は考える。センチネルはただ遊んでいるだけかもしれない。しかし、自分が探索を許可したことで、何かトラブルに巻き込まれた可能性も否定できない。センチネルは有能な人工知能(キカイ)であると破魔矢も認めていたが、自律した行動を認めている以上はミスもあるだろうと想定はしていた。それにしてもこれは何だ。何の茶番なのか。苛立ちが少しずつ露わになっていく。
「ちょっとセンチネル、ふざけるのも大概にしなさい、さすがにここまでやったら面白くないわよ」
その声は虚空に響く。破魔矢の眼前に佇むそれは、まるでそれが自分のことであることがわからないかのように、自分の周囲を見回しつつ、首を軽く傾げてみせると、再び口を開いた。
「ええっと…すみません、先程からおっしゃっている『センチネル』とはどんなモノでしょうか?無知ですみませんが……」