センチネルはそこそこ優秀なので、図書館の記録と彼の思考世界を接続することは極めて容易だった。佐伯に関することはたくさん転がっていて、それを人間っぽい存在のひな形に流し込めば会話ができる、佐伯を「復活」させることができるとセンチネルは考え、それを実行した。自分に新しい話し相手ができることはセンチネルにとって大きな喜びでもあった。
「ハイ、佐伯さん」
「どうも、君は誰だい」
「図書館の司書補佐をしている者です。あなたの遺したメディアを探してる」
「ほう、それは随分と物好きだね」
「物好きではありません、あなたの行動には価値がある。もっと評価されるべきなんですよ」
「そんなのは買いかぶりだよ、君も寝て起きたら今の感情は忘れる」
「なるほど、でも本当にそうかはわたしが知っている」
センチネルは対話を一度閉じ、再びデータを探しに出た。なんかコレジャナイ感。もっとデータを探せば自然になるはず…。
こうして「秘伝のタレ」のように煮詰められた「想像通りの佐伯」が作られ、作った張本人が取り扱えないサイズになった瞬間、センチネルの「全て」で佐伯もどきを起動、そしてあのような場面になった。