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へんてこな同居人

ファルフに促され、おずおずとセナはブランに向かって軽い挨拶と自己紹介をした。
「おはようございます、昨日からこちらに住まわせていただいてます…セナです…」
「ン、ンン…すまわ…セ…寝起きだから覚えられナイな…ごめんよ。でも~あれだ、…こんな時にくる~…お前もお前だよなあ…?なあファルフ?あれだろ、お前がまた…ンン、拾ってきたんダロ?」
「拾っ…人聞きの悪いことしか言わないなブラン…朝食抜きが良かったか?」
「クハハ。…セナだったか?ボクはブラン。コイツ…ファルフはな、昔っからよく何かしら拾って世話するのが好きだったんだヨ。猫に犬に…鳥もあったっけなァ。…まさか、ンフフ…人を拾ってくるとは」
「ブラン!!」
柔和な印象を抱いていた人間の怒鳴り声を聞いて、思わずセナの肩が跳ねる。
「…あ~、ごめんねセナくん。先に朝食済ませちゃおうか。行こう」
「…は、い」

朝からブランに調子を狂わされ、やや不機嫌になったファルフを気まずそうに見つめながら、セナはテーブルの向かいの席に座った。ブランはどうやら二度寝を始めたようで、二階からはまだドラゴンのようないびきが聞こえている。変わった人だった、とセナは思いながら、小さな声でファルフに話しかけた。
「あのぅ…騒がしくさせてしまってごめんなさい。えっと、ブランさんとはどういったご関係で…?」
「セナくんが謝ることはないよ。僕たちいつもあんな感じだからさ。あいつとは専門学校以来の腐れ縁なんだ」
僕としてはそろそろ自立してほしいと思ってるんだけどね、と母親のようなことを言いながら、ファルフはテーブルにトーストしたバゲットとジャム、サラダを並べた。幸せな小麦の焼けた匂いが部屋いっぱいに広がる。セナは小さな鼻をできるだけ大きくして、部屋いっぱいの幸せを吸い込んでから食事を始めた。

セナがバゲットを食べ終えて残りのコーヒーをじっくり味わっていると、ファルフは一足早く食事を終えて食器や調理器具を洗いだした。するといつからかドラゴンのいなくなった二階から、覚束ない様子で階段を降りる足音が聞こえてくる。
「………ヨ。ファルフ、朝食」
「誰かさんが二度寝するからもう何もないよ。自分で勝手に何か食べな」
「ハァ~…?君タチの朝食がが早すぎるンだろうが………ファルフ!!アレはァ!!?」
「店があるんだから仕方ないだろ…我が物顔で住み着きやがって…チョコレートクリームならそこの棚の下にあるよ」
セナはファルフが腐れ縁と言っていたことを思い出した。失礼だが確かに二人は特別仲が良いようには見えない。自分も含めて、この家の住人は不思議な縁で繋がっているなと思いながらコーヒーを飲み進めた。
もうすぐ開店時間だ。
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