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へんてこな同居人

深い青色をしたカーテンの隙間から、優しいミルク色の朝日が射し込む。
久しぶりに心地よく目覚めることができたセナは、この家の主であるファルフに挨拶をするために部屋を出た。
「体が軽いな…あんなによく眠れたのは久しぶりだ。」
上機嫌で廊下を歩いていると、とてもじゃないが人間の身体から出ているとは思えないほど低く、濁った音が聞こえてきた。
─グオオオ、グガッ、フゴゴゴゴ…
ファルフのいびきかと思ったが、どうやらファルフが寝ている部屋からではなく、二階の廊下、セナが借りた部屋の隣にあるもう一つの部屋から聞こえてくるようだ。
「…もう一人、誰か住んでいるのか。家族とか恋人とかだったら少し気まずいな…。」
「ああ、そういえば説明が遅れたね。アイツは家族じゃないから安心していいよ。」
「!!ふぁ、ファルフさん!?」
「ふふふっ、おはよう。昨晩はよく眠れたかい?」
いつの間にか背後に立っていたファルフが楽しそうに笑う。朝食ができたので起こしにいこうとしていたのだ。目覚めて早々にドッキリをくらったセナは、元々のつり目を更につり上げてファルフに抗議の視線を向けた。
「あはは、ごめんって。昨日のバゲットに自家製ジャムとコーヒーを付けるから勘弁してよ。」
「…バゲット。」
セナは昨晩食べたやわらかなバゲットの食感を思い出し、生唾を飲んだ。あのパンはどこで買っているのか、それとも自家製なのか、あとで聞いてみようと決意した。
そういえば、セナには気になることがもう一つあった。こうしてファルフと会話をしている間もずっと、セナの繊細な鼓膜を破かんとばかりにごうごうと響いているいびきの発生源についてだ。
「あの、…この物凄いいびきをかいている方はどなたですか…?」
「ああ、アイツも起こさなきゃね。…ブランの奴、起きられないなら夜更かしなんてするなっていつも言ってるのになあ。」
あーあ、とわざとらしいため息をついて、ファルフは少し乱雑にブランという人の部屋のドアを開けた。
─こんな部屋に人が住めるのか?
彼の部屋を見て直ぐ、失礼ながらセナはそう思った。薄っぺらい寝具には汚されたキャンバスが斜塔を築いており、床には画材と謎のお菓子の残骸をはじめとしたゴミが散乱していて、これまた派手に汚れた毛布にくるまりながらいびきをかく長髪の男がいた。
「ブラン…ブラン!さっさと起きろ!」
「ふがっ、ンン~…うるサ…ウルサイよキミ…今何時だと思ってるんだい…。」
「そのままそっくり返してやるよブラン。8時半だ!客人の前であまりみっともない姿を見せないでくれよ、頼むからさあ。」
「客人…?」
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