緊張で喉が渇いていたのか、コーヒーをあっという間に飲み終えてしまった俺は、ポケットからスマホを取りだした。ゆったりとした店内BGMを聴きながらSNSを漁ると、彼女のつぶやきが出てきた。 “香水買った！”の文字と一緒に先日俺がイベントに出た某ブランドの香水の写真があった。買わなくても俺がプレゼントするのに…なんて思いながらもふふっと笑みがこぼれてしまう。
“ティ○ニーはさすがに買えない” 続いて投稿されたつぶやきを見て、俺はピンと来た。
「お待たせしました」
その声でハッとして横を見れば、私服に着替えた彼女が立っていた。…わ、可愛い。Tシャツにパンツというシンプルな組み合わせなのに、彼女によく似合っていて。ポニーテールのおかげでよく見える彼女のうなじが俺の心拍を加速させた。ふわりと彼女からは知った香りがする。…早速香水つけてくれてるんだ。
『…じゃあ行こっか』
外に停めていた車に案内すると、彼女は大きく目を見開いて口をパクパクとさせている。
『え、なに、どうしたの』
「こ、これ山田さんの車…なんですか」
『そうだよ？ドライブデート…なんてどうかなって』
そう言いながら助手席のドアを開けて促すと、彼女は小さく『失礼します』と言ってちょこんと座った。運転席に座れば、急に緊張し出す。…あれ、車の中ってこんなに狭かったっけ。想像よりも彼女との距離が近く感じて。必然的に密室だし、2人きりだし。ふるふると頭を振って煩悩を払うと、運転に集中した。

少しのドライブをして、行きつけのお店についた。
『さぁて、行きましょか』
「え、…お買い物ですか？」
彼女は店構えを見て困惑したような表情を見せた。そんな彼女の手を何事もないような顔して掴むとお店へと入った。