担当の推し
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「どうぞ」
部屋の中心にあるソファに座るよう促され、手際よく目の前のテーブルに紅茶が入ったマグカップが置かれた。
おいおいおいおい…こんなんデートじゃん!お家デートじゃん!
大人しくソファに座ったと見せ掛けて内心勝手な想像をして浮かれている。そしてさっきから心臓がうるさくて仕方がない。
彼女の爽やかで甘い匂いが部屋中に溢れている。そんな白を基調とした可愛らしい部屋の角には、JUMPのグッズやDVDが綺麗に飾られた棚があった。その中には赤い銀テープが真新しく飾られている。…俺のソロコンサートのやつだ。
「…すみません、オタクの部屋で。」
『いや、すっごい嬉しい』
申し訳なさそうに言う彼女に即答する。ホコリひとつなく管理されているグッズたちを見て、大切にされているんだと感じる。
心がふわふわとしている俺に困った顔で笑ってみせる彼女は、テーブルを挟んで向かいの床に座った。
『…え、隣座ればいいのに』
「いえ、隣なんておこがましいです。私はここで」
ビシッと手のひらを見せて断る彼女が面白い。でもこのまま彼女を見下げるのも、距離があるのも嫌で。俺はソファから立ち上がって彼女の横に座った。
「えっ?!」
『俺もここがいい』
渾身の上目遣いで、ダメ?なんて顔を覗いてみる。この顔面で言うんだから文句なんて言わせないぞ、なんて思いながら。彼女は数秒俺の顔を見つめたあと、耳まで顔を真っ赤にさせた。それから大きくため息をついて、小さく「あの…」と口を開いた。
「も、あの…ほんと無理です。顔面が…神すぎて」
そう言って顔を両手で抑えて俯いてる。…え、なに、どゆこと?
「…なんで必死に耐えてるのにそんな近くで見るんですか」
必死で耐えてる。その言葉に俺の中で色んな形のハテナが浮び上がる。彼女の手をそっと触って見るとビクッと反応したのがわかった。
『ね、顔見せてよ』
「い、嫌です。これ以上は本当に…心臓が持たない」
指の隙間から見えた彼女の目は今にも泣きそうなほど潤っていて、キラキラと照明を反射させた。思わずゴクリと喉が鳴る。
何その顔。めちゃくちゃ可愛い。…ここは紳士的に、なんて俺の理性を保たせた。
「顔も性格もいいとかほんと無理…ただのファンでいたいのに」
小さく言う彼女は顔に覆っていた手をそっと膝の上に置いた。
ただのファンでいたい。そんな言葉を聞いて少し心がキュッとする。…俺はもうとっくに彼女のことをただのファンだなんて思ってない。
『…のに?』
そう聞けば、彼女の俯いた顔はゆっくりと上がって目が合った。
この後なんて言われてしまうんだろう。プロのファンの彼女なら「距離保ってください」くらい言いそうで少し怖い。そんなことを思っていると彼女は小さく息を整えた。
「…リア恋になりそうで怖いです」
リア恋、ファンの間で言うアイドルに対して恋愛感情を抱くことだと聞いたことがある。…え、つまりは彼女は俺に恋しちゃうってこと?え?それって…めっちゃいい事では?!
俺は彼女の手をそっと握ってみると少しだけ冷たい彼女の指先は小さく震えていた。
『いいんじゃない?それで』
「え、」
キョトンとした顔で俺を見る彼女に俺の中の愛おしさが爆発して、思わず抱きしめた。
さっきから飛び出そうなほどの心臓の鼓動が彼女に伝わってしまうんじゃないか。そんなことそっちのけでギュッと腕に力が入る。すっぽりと俺の胸に収まってしまう華奢な体は思った以上に柔らかくてふわふわしてて、いい匂いがする。
「あの…」なんて胸元から声がして、ん?と覗いてみれば今にも湯気が出そうなほど真っ赤な彼女の顔がこちらを見ていた。もう可愛すぎてどうしようもない。思考がぐちゃぐちゃになりそう。
こんな思いは初めてかもしれない。
『俺、○○ちゃんが好きだよ』
もっとこの気持ち伝えたい。もっとそばにいて俺のこと好きになって欲しい。そんな感情がダダ漏れになってくる。
俺の鼓動とは別の何かを感じて、きっと彼女のものなんだと思った。
「なんで、私なんか…」
きっと彼女はたまたま職場のお客として俺と出会っただけだと思ってるんだろうな。ずっと前からSNSで知っていた俺の推し。なんて言うのはまた後々言うことにしよう。
ふと腕時計に目をやると夜の12時を回ろうとしていた。こんな時間まで彼女を付き合わせてしまったことに気づいて、そっと体を離した。ああ、まだこうしてたかったのに。離れた胸元がやけにスースーして寂しくなる。俺はすっかり冷めてしまった紅茶を飲み干すと玄関へと向かった。後ろからちょこちょこと着いてくる彼女が可愛い。ドアノブに手をかけて『またお店で。』そう言って振り向くと、彼女は自分の服の裾をぎゅっと握っていた。
「山田さんっ、あの」
『ん?』
「私の方が山田さんのこと大好きです!」
この子はどんだけ俺の感情をかき乱すんだろう。そんなことを悟られないように俺は笑ってみせて『おやすみ』と言って玄関を出た。…またすぐに会いに行くからね。
おわり
部屋の中心にあるソファに座るよう促され、手際よく目の前のテーブルに紅茶が入ったマグカップが置かれた。
おいおいおいおい…こんなんデートじゃん!お家デートじゃん!
大人しくソファに座ったと見せ掛けて内心勝手な想像をして浮かれている。そしてさっきから心臓がうるさくて仕方がない。
彼女の爽やかで甘い匂いが部屋中に溢れている。そんな白を基調とした可愛らしい部屋の角には、JUMPのグッズやDVDが綺麗に飾られた棚があった。その中には赤い銀テープが真新しく飾られている。…俺のソロコンサートのやつだ。
「…すみません、オタクの部屋で。」
『いや、すっごい嬉しい』
申し訳なさそうに言う彼女に即答する。ホコリひとつなく管理されているグッズたちを見て、大切にされているんだと感じる。
心がふわふわとしている俺に困った顔で笑ってみせる彼女は、テーブルを挟んで向かいの床に座った。
『…え、隣座ればいいのに』
「いえ、隣なんておこがましいです。私はここで」
ビシッと手のひらを見せて断る彼女が面白い。でもこのまま彼女を見下げるのも、距離があるのも嫌で。俺はソファから立ち上がって彼女の横に座った。
「えっ?!」
『俺もここがいい』
渾身の上目遣いで、ダメ?なんて顔を覗いてみる。この顔面で言うんだから文句なんて言わせないぞ、なんて思いながら。彼女は数秒俺の顔を見つめたあと、耳まで顔を真っ赤にさせた。それから大きくため息をついて、小さく「あの…」と口を開いた。
「も、あの…ほんと無理です。顔面が…神すぎて」
そう言って顔を両手で抑えて俯いてる。…え、なに、どゆこと?
「…なんで必死に耐えてるのにそんな近くで見るんですか」
必死で耐えてる。その言葉に俺の中で色んな形のハテナが浮び上がる。彼女の手をそっと触って見るとビクッと反応したのがわかった。
『ね、顔見せてよ』
「い、嫌です。これ以上は本当に…心臓が持たない」
指の隙間から見えた彼女の目は今にも泣きそうなほど潤っていて、キラキラと照明を反射させた。思わずゴクリと喉が鳴る。
何その顔。めちゃくちゃ可愛い。…ここは紳士的に、なんて俺の理性を保たせた。
「顔も性格もいいとかほんと無理…ただのファンでいたいのに」
小さく言う彼女は顔に覆っていた手をそっと膝の上に置いた。
ただのファンでいたい。そんな言葉を聞いて少し心がキュッとする。…俺はもうとっくに彼女のことをただのファンだなんて思ってない。
『…のに?』
そう聞けば、彼女の俯いた顔はゆっくりと上がって目が合った。
この後なんて言われてしまうんだろう。プロのファンの彼女なら「距離保ってください」くらい言いそうで少し怖い。そんなことを思っていると彼女は小さく息を整えた。
「…リア恋になりそうで怖いです」
リア恋、ファンの間で言うアイドルに対して恋愛感情を抱くことだと聞いたことがある。…え、つまりは彼女は俺に恋しちゃうってこと?え?それって…めっちゃいい事では?!
俺は彼女の手をそっと握ってみると少しだけ冷たい彼女の指先は小さく震えていた。
『いいんじゃない?それで』
「え、」
キョトンとした顔で俺を見る彼女に俺の中の愛おしさが爆発して、思わず抱きしめた。
さっきから飛び出そうなほどの心臓の鼓動が彼女に伝わってしまうんじゃないか。そんなことそっちのけでギュッと腕に力が入る。すっぽりと俺の胸に収まってしまう華奢な体は思った以上に柔らかくてふわふわしてて、いい匂いがする。
「あの…」なんて胸元から声がして、ん?と覗いてみれば今にも湯気が出そうなほど真っ赤な彼女の顔がこちらを見ていた。もう可愛すぎてどうしようもない。思考がぐちゃぐちゃになりそう。
こんな思いは初めてかもしれない。
『俺、○○ちゃんが好きだよ』
もっとこの気持ち伝えたい。もっとそばにいて俺のこと好きになって欲しい。そんな感情がダダ漏れになってくる。
俺の鼓動とは別の何かを感じて、きっと彼女のものなんだと思った。
「なんで、私なんか…」
きっと彼女はたまたま職場のお客として俺と出会っただけだと思ってるんだろうな。ずっと前からSNSで知っていた俺の推し。なんて言うのはまた後々言うことにしよう。
ふと腕時計に目をやると夜の12時を回ろうとしていた。こんな時間まで彼女を付き合わせてしまったことに気づいて、そっと体を離した。ああ、まだこうしてたかったのに。離れた胸元がやけにスースーして寂しくなる。俺はすっかり冷めてしまった紅茶を飲み干すと玄関へと向かった。後ろからちょこちょこと着いてくる彼女が可愛い。ドアノブに手をかけて『またお店で。』そう言って振り向くと、彼女は自分の服の裾をぎゅっと握っていた。
「山田さんっ、あの」
『ん?』
「私の方が山田さんのこと大好きです!」
この子はどんだけ俺の感情をかき乱すんだろう。そんなことを悟られないように俺は笑ってみせて『おやすみ』と言って玄関を出た。…またすぐに会いに行くからね。
おわり
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