マイヒーロー
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《○○、昨日のデータどこ?》
会社に到着して早々、部長に呼び出された。
「昨日のものでしたら既に部長に提出いたしましたが…」
昨日あれだけ残業して作ったデータを残さないわけが無い。それなのに部長は無いと言い張った。
《月末データだろ?なんで無くなるんだよ!》
口調を強く、周りに聞こえるように言う部長に若干腹が立つ。自分の席に戻りファイルを確認したが、やっぱり無くなっていた。保存ミス?…そんなわけない。
クスッとどこからか聞こえたような気がした。
一日中部長にグチグチと言われ、気が滅入ってきた頃『失礼します。』と彼が領収書を持ってやってきた。
〈お疲れ様ですぅ。私が、お預かりしますよ♡〉
いつも彼が領収書を渡すのは私だった。その行く手を遮るように△△さんは彼の前に現れて両手を出していた。
『あ、いや…○○さんに』
〈○○さん、いまぁすぅごく仕事溜まってるんでぇ、出来ないですっ〉
『え、どういうこと…』
仕事を貯めたことなんてない私を知っているから、彼は△△さんの言葉に驚いていた。でも今は間違いではない。昨日のデータを作り直さなきゃ行けない。それから来月分のフォーマット作成諸々。やることは山のようにあった。
そんな二人の会話を耳にしていると、自然と涙が出そうになった。…助けて。
必死に涙をこらえて下唇を噛んでいると、そのうち鉄の味がした。
昼休憩で社内を歩いているとやたらと視線を感じる。
―○○さんって山田さんと付き合ってるとか同棲してるとかって話だったけど実はセフレだったんでしょ?
―それ聞いたー。付き合ってるとか自惚れすぎじゃない?
そんな噂話が聞こえて、あ、もうダメだ、泣く。心が軋むような感覚になって、動かしていた足をピタリと止めた。視線が痛い。周りの人達が何を考えているのか怖い。
『○○』
後ろから名前を呼ばれて振り返れば、今ここで1番会いたくない人がいる。少し長い前髪の隙間から見えるその目は、私の大好きな優しい目。私を心配しているんだろうと思える目をしている。
「や、山田さん…なんでしょうか。」
必死に仕事モードに切りかえてそう言ってみるけど、自分でもわかるほど声が震えた。
『ちょっと来て』
彼はポケットに入れていた右手を出すと、私の左手を掴んで歩き出した。温かくて大きい手に安心してしまう。
きっと噂は彼の耳に入ってるはずだし、仕事の邪魔になっているんじゃないか。…私、なんでこんなことになったんだろう。
頭の中いっぱいいっぱいで、気づくと人のいない資料室に来ていた。
『○○、大丈夫?』
「…りょ、すけ」
そっと私の頬に手を添えてくれる彼に、感情が爆発しそう。
『昨日のこと、ちゃんと話そう。ね?』
いつもよりゆっくり優しく話す彼は、私が静かに頷くのを確認してスっと呼吸をした。
『昨日の夜△△さんといたの、○○見たんだよね。』
彼は私が一番気になっていることを的確に当ててくる。彼の口から△△さんの名前が出ることに心がモヤついて仕方がない。
『俺、△△さんが○○のデータいじってるのを見かけて証拠写真抑えてたんだけど…』
「えっ…」
や、薄々勘づいてはいたけど。そんな証拠を持っていたなんてビックリで、私は俯かせていた顔を上げた。彼は私の顔を見ると話を続けた。
会社に到着して早々、部長に呼び出された。
「昨日のものでしたら既に部長に提出いたしましたが…」
昨日あれだけ残業して作ったデータを残さないわけが無い。それなのに部長は無いと言い張った。
《月末データだろ?なんで無くなるんだよ!》
口調を強く、周りに聞こえるように言う部長に若干腹が立つ。自分の席に戻りファイルを確認したが、やっぱり無くなっていた。保存ミス?…そんなわけない。
クスッとどこからか聞こえたような気がした。
一日中部長にグチグチと言われ、気が滅入ってきた頃『失礼します。』と彼が領収書を持ってやってきた。
〈お疲れ様ですぅ。私が、お預かりしますよ♡〉
いつも彼が領収書を渡すのは私だった。その行く手を遮るように△△さんは彼の前に現れて両手を出していた。
『あ、いや…○○さんに』
〈○○さん、いまぁすぅごく仕事溜まってるんでぇ、出来ないですっ〉
『え、どういうこと…』
仕事を貯めたことなんてない私を知っているから、彼は△△さんの言葉に驚いていた。でも今は間違いではない。昨日のデータを作り直さなきゃ行けない。それから来月分のフォーマット作成諸々。やることは山のようにあった。
そんな二人の会話を耳にしていると、自然と涙が出そうになった。…助けて。
必死に涙をこらえて下唇を噛んでいると、そのうち鉄の味がした。
昼休憩で社内を歩いているとやたらと視線を感じる。
―○○さんって山田さんと付き合ってるとか同棲してるとかって話だったけど実はセフレだったんでしょ?
―それ聞いたー。付き合ってるとか自惚れすぎじゃない?
そんな噂話が聞こえて、あ、もうダメだ、泣く。心が軋むような感覚になって、動かしていた足をピタリと止めた。視線が痛い。周りの人達が何を考えているのか怖い。
『○○』
後ろから名前を呼ばれて振り返れば、今ここで1番会いたくない人がいる。少し長い前髪の隙間から見えるその目は、私の大好きな優しい目。私を心配しているんだろうと思える目をしている。
「や、山田さん…なんでしょうか。」
必死に仕事モードに切りかえてそう言ってみるけど、自分でもわかるほど声が震えた。
『ちょっと来て』
彼はポケットに入れていた右手を出すと、私の左手を掴んで歩き出した。温かくて大きい手に安心してしまう。
きっと噂は彼の耳に入ってるはずだし、仕事の邪魔になっているんじゃないか。…私、なんでこんなことになったんだろう。
頭の中いっぱいいっぱいで、気づくと人のいない資料室に来ていた。
『○○、大丈夫?』
「…りょ、すけ」
そっと私の頬に手を添えてくれる彼に、感情が爆発しそう。
『昨日のこと、ちゃんと話そう。ね?』
いつもよりゆっくり優しく話す彼は、私が静かに頷くのを確認してスっと呼吸をした。
『昨日の夜△△さんといたの、○○見たんだよね。』
彼は私が一番気になっていることを的確に当ててくる。彼の口から△△さんの名前が出ることに心がモヤついて仕方がない。
『俺、△△さんが○○のデータいじってるのを見かけて証拠写真抑えてたんだけど…』
「えっ…」
や、薄々勘づいてはいたけど。そんな証拠を持っていたなんてビックリで、私は俯かせていた顔を上げた。彼は私の顔を見ると話を続けた。