「お疲れ様！」
『お疲れ』
カコンとお互いが持つ缶を突き合わせると、勢いよくビールを喉に流し込んだ。
少し小さめのテーブルいっぱいにお互いの作ったおつまみを並べてお酒を嗜む。
これが私たちの夜の癒し。

お揃いのクッションを背もたれにして、肩を並べてソファに座っていると彼のお風呂上がりの匂いが鼻をかすめた。

『ん、これうんま！』
彼は私が作ったテキトーな料理に満面の笑みを浮かべてくれる。
…好きだなぁ。
会社ですれ違うだけなら綺麗で口数の少ない近寄り難い人なのに、今目の前にいるのはコロコロと笑う愛おしい人。
お酒の勢いとか自分に言い訳をして、彼の肩にもたれると優しく頭を撫でてくれる大きくて暖かい手。
『どーしたの？疲れた？』
少し高くて柔らかい声に胸がキュンとする。
「…んーん。好きだなぁ、って思ったの。」
そう言うと、彼は手に持っていた缶ビールをテーブルに置いてぎゅっと抱きしめた。
『俺は○○のこと、もっと好きだけど？』
ちゅ、と音を立てて私の額にキスをして顔を覗き込んできた彼は、とろけてしまいそうな甘い目をしていた。
そこから始まる展開はご想像におまかせ。

明日からまた仕事頑張ろう。
そう幸せに背中を押されて浮き足立っていた私に、悪意は刻一刻と近づいていた。