幾千回のアテンプト






「相変わらずすごい数だな。」

 牧さんが笑った。まだまだ顔と年齢が一致しない社会人1年目の彼もまた同様に、手に余るほどの綺麗な包装紙を抱えていた。
 俺は大学の同期とか部室に届いていた分とかなんかそんなんで、牧さんの持ってるものに比べると、なんというか、格がちがった。こんなところで学生と社会人の差を見せつけられるなんて。

「春休みなのにみんなわざわざ学校に来るの面倒じゃねえのかな。」
「それほどの好意だと捉えればいいだろ。」
「そういうもんっすかね。」
「そういうもんだろ。」

 ひとり暮らしの彼の家にふらりと立ち寄るようになったのはいつからだろうか。牧さんが大学を卒業して、バスケは趣味程度にすると笑ったあの日からだったかもしれない。周りの無責任なまでの期待を背負ってきた彼が、憑き物が落ちたように笑ったその瞬間、そばにいたい気持ちが湧き上がった。あの笑顔があまりにきれいで。

「少し引き受けてくれませんか。きついんすよね。」
「……。」

 大学を卒業したら俺はバスケで食ってく人間になる。俺はそれしかできないから、そうするしかないから。それでも、平気だから。
 でもできれば、本当に苦しい時、あなたがそばにいてくれたらと思ったんだ。

「……ダメ?」
「……いや、これくらいなら。」

 こんなやり方でしかまだ伝えられないけれど、どうか受け取って欲しい。一等華やかな包装紙に包まれた俺の気持ちを。あなたの心に入るまで何回でも渡すから。

 ところで。
 少しためらったのは気が付いているからなんじゃないですか、俺の気持ちに。





幾千回のアテンプト





 受け取ってくれよ、
 リバウンドでもかまわないから。



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