2021三井誕SSS
伸ばされた長い腕に慌ててドリブルする方向を変えながら三井は遠く見えるリングを睨み上げた。
インサイドに持ち込んだらブロックされる確率の方が高いからやっぱ3P、と頭を働かせつつ、それすらも許さない執拗なディフェンスに舌打ちし、フェイクの視線を左にいれた。そこに思いかけない人間を見つけて、三井は高いパスをリングのすぐそばに放った。当然のように高く飛び上がった体がボールをキャッチし、そのままゴールに叩き入れる。
「あれー…? それアリ?」
焦って振り向いた仙道が眉を下げた。転がったボールを拾った流川が人差し指でボールを回して近づいてくる。
「おし、次、おまえと仙道な」
上がった息を誤魔化しつつ、金網に近づいて転がっていたスポーツドリンクのボトルに手を伸ばす。いつからいたのかは知らないが、1オンで負けたら食事を驕る約束を仙道にさせられていた三井は、助かった、とドッカリ地面に腰を落とした。
「いやっす。俺、先輩とやりに来たし」
なのに空気を読まずに我儘を言う後輩に三井は顔を顰める。
「順番だよ。じゅんばーん。そいつから3本取ったら遊んでやる」
「じゃあその後は俺な」
頭の真上から声がかかって、三井が顔を上げると海南の帝王が不敵な笑顔を浮かべて立っていた。
どういうこと?
三井は顰めた顔をタオルで拭った。
「知らねーよ。どっから湧いてくんだよおまえら」
この陽気か?
公園の木々を揺らす風は涼やかで心地いい。
「誕生日だから?」
重なった3人の声に三井は目を閉じた。
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