琥空 珀冬と珀雫の夏祭り

現在

「─で、珀冬が急にいなくなったトラウマが祭にあるの。わかった?」
「なんだ、てっきりあんたが攫われたのかと思った」
「多分俺が攫われたら今ここに居ないかも……………………」
珀雫は青ざめ、顔を机に突っ伏す。
「……珀雫ちゃん、今聞いた話本当?」
「…わざわざこんな嘘吐けるシナリオ俺には考えつかないけど?」

「いやね…珀冬ちゃんって…1年の頃から見てきたけど…アレ女性に対して随分…過保護じゃない?」
「ヤンデレな」
「え?何?珀冬ってヤンデレなの?」
「……又聞き状態の推測だから本当のことはわからないけれど……珀冬ちゃんがそうなったのってもしかしてその神隠しが原因……なんじゃない?」


珀雫は、目を伏せ、微笑む。

「ふは───……否定はしないし肯定はしないよ?俺は見てないから。な、珀冬」

「お!!!そうだな!!!!どうした???」
「わ、いきなり大声出さないでよ珀冬ちゃん!!!」

2人の背後に突如として珀冬が現れる。
「あんた急に後ろに現われないでよ」
「寮長も突然後ろから現れただろ」
「? 悪いな!!!それよりそろそろ次の授業始まるぞ!!3人共早く教室戻れよ!!!」
嵐の様に現れた珀冬は颯爽と教室に戻っていった。

「夏休み前にちょっとしたホラー聞いちゃったわね。当事者の珀冬ちゃんが怖がらずあのテンションなのが逆に怖いかもしれないけど」
「だから言ったのに。後悔するなよって。アレ、言ってないか。まぁそろそろ行くか。」
珀冬は立ち上がり、食器を片付けようとする。

──が、アキラに服を掴まれる。
「ねぇ、最後の質問。あたし今の話を聞いて一つ気になることあるんだけどさぁ」
足を止めた珀雫は、アキラを見ない。

「何で当事者じゃないあんたがそんなに詳しく語れるの?珀冬ってあんまり覚えてないんでしょ?」
「さぁ………なんでだろうな」
珀雫はアキラを見ない。
「あんたねぇ……ソレ」

珀雫はアキラの方へと振り返り、アキラの口を人差し指で軽く押さえる。
「アキラ。これ以上は駄目だよ」

珀雫は、ひんやりと空気が冷たくなる程、しかし優しい笑みでアキラとベリーを見る。
「珀雫ちゃん…?」


珀雫はパッと手を放し両手を上げる。
「怖かったか?!俺のホラー語りも様になってただろ?これでも配信者だからな!」
珀雫はいつもの笑顔でどや顔をしている。
「え、演技!?あのホラー怖がりの珀雫ちゃんが!?」
「ハハハ!!いつもの仕返しだー!!じゃぁなー!」
珀雫は2人を置いて食堂を小走りで出ていく。

「もう~。騙されちゃったじゃない。ねぇ?アキラちゃん」
「ん-…」
「何…?珀雫ちゃんを疑ってるの?」
「そうね、あの珀雫がこのあたしを騙そうだなんていい度胸じゃない。後でギャンブルで続き聞かせてもらうわよ」
「あの話を聞く気なの!?」


この後しばらくの間、アキラのギャンブルのお誘いから逃げる珀雫を確認できたとか。

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