琥空 珀冬と珀雫の夏祭り
──その時、悪寒がした。
何か、よくわからない、見てはいけないようなものが祠の外で蠢いた気がした。
珀冬は外を見るが、扉の前には先ほどの女性が珀冬が扉から出られない様に通せんぼをしている。
だが、女性は珀冬の方を見ていなかった。
それどころか、女性もおぞましい気配の方向を見ている。
祠の小さな窓からは外があまり見えない。
女性は珀冬を振り返り、珀冬の持つお札を指さし
「ソレ、離すな」
と警告した。
珀冬はお札をギュッと握りしめる。離さない様に。女性が云う通りに。
刹那、更に悍ましい気配が強くなる。
アレはなんだろうか。
好奇心旺盛だった珀冬は、女性と窓の隙間からそっと祠の外を覗く。
この立ち入り禁止の区画とは別の立ち入り禁止の祠。
そちらの方から黒くて大きな狐の様なモノが此方へと向かって歩いてくる。
狐の様なモノは異臭を放っている。
狐の様なモノは歩いた傍から身体が溶けたようにぐちゃぐちゃだ。
狐の様なモノは真っすぐと此方に向かって歩いてくる。
目が合ってはいけないかもしれない。
目が合えば、確実に見つかってしまう。
そんな気がした。
目が合えば喰われてしまうだろう。
お札のお陰だろうか、札が熱くなる。
珀冬は必死に目を逸らす。
狐の様なモノは段々と近づいてくるが、祠の前にいる女性は祠から一歩も動かない。
それどころか恐らく──自分を護ってくれているのだろう。
やがて狐の様なモノは女性を見つけると、女性へ四肢を伸ばす。
狐の様なモノから生えた四肢はもはや四肢とは言えないのではないだろうか。
4足歩行で立っているのに、身体からヒトの腕が現れたのだ。
狐の様なモノから伸びた四肢は女性を捕らえる。
女性は藻掻くが、やはり祠からは一歩も動かない。
狐の様なモノは叫ぶ。雄たけびを上げる。
恐らく、この辺りから人の匂いがするのだ。
探しているのだ、自分を。
狐の様なモノは、餌を分けろと言っている。
女性はそんなものはないと言っている。
狐の様なモノは、怒っている。
女性も怒っている。
女性は怯えているようにも見える。
そんな姿を見て、珀冬は心が揺れた。
この女性は、自分を護ってくれているのだ。
恐ろしい化け物に立ち向かい、護ってくれているのだ。
だから俺を此処に閉じ込めてくれたんだ。
あぁ、なんてすばらしいんだろう。
そう、感じたという。
だが、その時間も長くは続かなかった。
狐の様なモノは女性を持ち上げ地面にたたきつける。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度もたたきつける。
女性はずっとぼそぼそ呟いているが
上手く聞き取れない。
「離すな」「出るな」
これだけが聞こえる。
やがて、女性はほぼ動かなくなり
狐の様なモノは更に体が大きくなり、身体が真っ二つに割れる。
真っ二つに割れたその胎はどんな色だっただろうか。
形容し難いその胎に、女性が喰われる。
女性が、いなくなる。
あぁ、次は俺の番なんだろうか。
狐の様なモノは、珀冬のある祠を見る。
祠に近づく。
何か、よくわからない、見てはいけないようなものが祠の外で蠢いた気がした。
珀冬は外を見るが、扉の前には先ほどの女性が珀冬が扉から出られない様に通せんぼをしている。
だが、女性は珀冬の方を見ていなかった。
それどころか、女性もおぞましい気配の方向を見ている。
祠の小さな窓からは外があまり見えない。
女性は珀冬を振り返り、珀冬の持つお札を指さし
「ソレ、離すな」
と警告した。
珀冬はお札をギュッと握りしめる。離さない様に。女性が云う通りに。
刹那、更に悍ましい気配が強くなる。
アレはなんだろうか。
好奇心旺盛だった珀冬は、女性と窓の隙間からそっと祠の外を覗く。
この立ち入り禁止の区画とは別の立ち入り禁止の祠。
そちらの方から黒くて大きな狐の様なモノが此方へと向かって歩いてくる。
狐の様なモノは異臭を放っている。
狐の様なモノは歩いた傍から身体が溶けたようにぐちゃぐちゃだ。
狐の様なモノは真っすぐと此方に向かって歩いてくる。
目が合ってはいけないかもしれない。
目が合えば、確実に見つかってしまう。
そんな気がした。
目が合えば喰われてしまうだろう。
お札のお陰だろうか、札が熱くなる。
珀冬は必死に目を逸らす。
狐の様なモノは段々と近づいてくるが、祠の前にいる女性は祠から一歩も動かない。
それどころか恐らく──自分を護ってくれているのだろう。
やがて狐の様なモノは女性を見つけると、女性へ四肢を伸ばす。
狐の様なモノから生えた四肢はもはや四肢とは言えないのではないだろうか。
4足歩行で立っているのに、身体からヒトの腕が現れたのだ。
狐の様なモノから伸びた四肢は女性を捕らえる。
女性は藻掻くが、やはり祠からは一歩も動かない。
狐の様なモノは叫ぶ。雄たけびを上げる。
恐らく、この辺りから人の匂いがするのだ。
探しているのだ、自分を。
狐の様なモノは、餌を分けろと言っている。
女性はそんなものはないと言っている。
狐の様なモノは、怒っている。
女性も怒っている。
女性は怯えているようにも見える。
そんな姿を見て、珀冬は心が揺れた。
この女性は、自分を護ってくれているのだ。
恐ろしい化け物に立ち向かい、護ってくれているのだ。
だから俺を此処に閉じ込めてくれたんだ。
あぁ、なんてすばらしいんだろう。
そう、感じたという。
だが、その時間も長くは続かなかった。
狐の様なモノは女性を持ち上げ地面にたたきつける。
何度も、何度も何度も何度も何度も何度もたたきつける。
女性はずっとぼそぼそ呟いているが
上手く聞き取れない。
「離すな」「出るな」
これだけが聞こえる。
やがて、女性はほぼ動かなくなり
狐の様なモノは更に体が大きくなり、身体が真っ二つに割れる。
真っ二つに割れたその胎はどんな色だっただろうか。
形容し難いその胎に、女性が喰われる。
女性が、いなくなる。
あぁ、次は俺の番なんだろうか。
狐の様なモノは、珀冬のある祠を見る。
祠に近づく。