薫の日常

朝と言うには日が上り過ぎている。正午という表現が正しいだろう
薄くなったカーテンから漏れた光で目を覚ます。
床に敷いてある布団からもぞもぞとゆっくりと身体を起こす。
が、また横たわる
 
(腰が痛い)
 
一人暮らしをする様になってから度々感じる腰痛。年のせいというよりかは、固い床が原因であることは理解をしている。
だが、基本的に家にいることが少ない薫からしてみれば引っ越しをするのは面倒くさい、あまり使わない高級布団を買おうとも思わない。金が無いわけでは無いが、あまり使わないからという理由で買い渋ることが多い。
 

藤宮 薫の起床時間は基本的に昼間だ。
薫の職業はゴーストハンター。
彼のゴーストハンターとしての仕事は、依頼のあった家や廃屋へ足を運び夜中の0時ごろから明け方までその場所で過ごす。
大体依頼が来る時は"いる"のだ。幽霊が。
薫は幽霊が大の苦手だ。
だが、幽霊にとってみれば怖がっている人間は恐怖を押し付けるのに都合のいい対象。
薫はそんな幽霊を除霊、もとい成仏させるのがメインの仕事だ。
 
 
寝転びながら先の仕事で使ったカメラを手に取り写真を見返す。
その写真には綺麗に幽霊が"写っている"。
薫は幽霊の写真を撮るプロだった。薫が幽霊を写真に収めれば、何故かとてもよく写る。
大体幽霊が写真に入り込む時は人と人の間に突然現れる顔といった心霊写真とされるものが多い。
しかし薫の撮る写真は心霊写真とはかけ離れている。
薫がカメラを切る時は、その霊を撮る為に構えられたものだ。
薫の撮った霊の写真とても幽霊とは思えず、知らない人が見れば生きた人間の写真と見間違うこともあるだろう。
その所為だろうか幽霊達は薫に写真を撮られると満足そうに成仏していく。
まるで未練が無くなったかの様に。

薫の行うゴーストハントはいわば「幽霊専門の写真家」である。

いくつもの写真を見る。不備がないか、撮り逃しは無いか。
今日も問題なさそうだ。後で会社に持っていかなければ。
写真を確認した後、横たわる身体を起こしテーブルのノートパソコンをつける。
パソコンへ写真データのバックアップを取り再び確認をする。今回もバックアップを取ったデータにも問題はなさそうだった。
 
 
洗面台で顔を洗い、歯を磨く。
その鏡はあまり曇りが無い。簡素ではあるが、使い終わった後に拭く様にしてる。
昔はそんな習慣がなかったが、ある時から習慣になっていった。
その習慣の原因は"思い出せない"のだが、なんの疑問もなく使い終わった鏡の水気を拭き取る。
 
朝ご飯、という名の昼食を取る。
(確か…ヴェネリオがくれたおかずあったな)
冷蔵庫を漁ると、昨日昼間に出会ったヴェネリオからお裾分けをしてもらったおかずがタッパーに入れられている物が入ってる。近所のママだなあれは、と思いながら炊飯器に残ったご飯、おかずを食べる。
食べ終わる頃には脱衣所から洗濯終了の音が鳴る。食器を片し、少ない洗濯物を干す。
「…もうちょっとお洒落をするべき…か…?」
毎日同じ服を干す時ふと思う。
薫は基本的にジーパンに白いTシャツ。汚れても良い様にい安いパーカーを着ている。
尚白いTシャツはほとんど洗うことは無く捨てることが多い。心霊スポットに足を運んだ後に大体血塗れになっているからだ。そんなTシャツを常備していようものなら、いざ近場で殺人事件などが起こった時に真っ先に容疑者である。

さて、それだけであれば基本的に白いTシャツをまとめ買いするだけでいいのだが、お洒落を気にするようになったのは別に理由がある。
最近、何故だか俺の事を知っている神宮寺 蒼汰と言いう男と遊びに行くことが増えた。
服でお洒落をしない分、ピアスは付け替えているが、流石によく遊ぶ友達とは言えあまりにも同じ服を着すぎている。蒼汰はそんなこと気にしないかもしれないが、自分が少し気になるようになってきた。

「この後職場に写真データ置いてきて、服買うか」
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