これはやばい………かなりやばい。
気づかれたら確実に明日はない。
下手に動いて気づかれてはいけないと思い、動きを止める。

ｶﾀﾘ………

「？！」

さっきのあのこが怖がって後退したことで、木板に当たってしまったらしい
その音に気づいてバケモノはグルンっとこちらを向く

「ひっ…………」

真っ赤に濡れた口周り、狂気的な目、恐ろしい笑み。全てが恐ろしい。私たちが今に死ぬのが目に見えて分かる。

「血ぃ……血ダぁ………」
「あ……………」
「逃げて、君っ！」

あの女の子は目を見開いて固まったままだ。
逃げても助からないとは思うが、望みをかけるならそこしかない。

「ｲﾋｬﾋｬﾋｬﾋｬｧｯ!」
「？！危ないっ！」

彼女が斬られそうなその瞬間、咄嗟に体が動き、体に激痛が走った。

「ぐっ…………」
「え、あ、だ、大丈夫ですかっ？！」
「そんなこと言うまえに逃げようよ君…」

意識が飛びそうな痛み。今にもう一太刀来るだろう。
いつの間にこんなお人好しになったんだ私は…女の子がちょっと可愛いからって庇っちゃうなんてなぁ…………
死んだら……周りの人は、泣いてくれるのかな…
そう思い覚悟して目を瞑った……

ザシュッ
「ぎ、ｹﾞ?」
ﾊﾞﾀﾝ
「え………？」

来ると思った痛みは来ず、目の前のバケモノは刺し貫かれた。
そしてバケモノを倒したであろう男が目に入る。

「めっちゃイケメンやん………」

そう言った所で意識は途絶えた。