嗚呼、素晴らしき哉、人生!
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うだるような暑さが続き、その熱ですべてが溶けてしまう気がした。地球温暖化の進んでいないこの時代ならと思ったがやはり、暑いものは暑い。
外出の許可を取り付けるためにはじめと手合わせしたはいいものの、肋を骨折し寝込むはめになった私は、自分の部屋から見える青空をただぼうっと眺めていた。
トイレ以外は部屋を出ず、運ばれてくる食事も喉を通らないため、一日二食にしてもらっている。全体的にエネルギーをなくして、ただ時間だけが過ぎる日々。
「誰か来てくれないかなぁ。」
「何言ってるの。僕がこうして来てあげてるでしょ。」
「総司は土方さんから逃げてるだけでしょ。」
「そんなことないよ。」
いけしゃあしゃあと言ってのける彼は、よっと私の布団から起き上がる。
広くなった布団を目いっぱい使って仰向けになる。視界に広がる天井がやけに遠くて、あぁ動けないんだなぁと不甲斐なさだけを感じた。
「なんだか抜け殻みたいだねぇ伊織。」
総司がこちらをのぞき込む。退屈そうなその面持ちは、まさに私の心情をそのまま映しているようで。図星を突かれ深くため息を吐くしかない。
「だってさ、ただ寝てることほど面白くないことってないよ。」
「ずっと話していられるなんて楽じゃない。」
「総司はね。いざそうなったら、総司だって暇で仕方なくて生きるのが嫌になるかもよ。」
憎まれ口を叩くつもりで言うと、存外しんとする。返答を待ちきれず彼を見ると、虚空を見上げる彼の面持ちに感情はなかった。
ぞっとするものが背を走る。ゆっくりとこちらに向き治り、「確かにそうだね。」と彼はこぼした。
「役に立てない時は、もう必要とされなくなる時だもんね。そうなったら、生きてる価値なんてない。」
無表情にそう言い切って、その瞳が据わる。彼だけが空間から浮いたような、切り取ったような孤独を持ってそこに存在していた。
「あ…ごめんなさい…」
鼻がつんとして、咄嗟に起き上がった。
近藤さんの役に立つことが全てだと思っている彼に、私はなんてことを言ったのか。
動けなくなったときはお前の居場所はないのだと、言ったことに他ならない。無遠慮なその言葉が、未来の彼を傷つけた気がしてやまない。
「ごめんなさい。」
張り詰めたこの空気は、紛れもなく自分が作ったのだと考えただけで後悔する。総司が動いた音がした。
「…ごめんね、怖かった?」
そっと優しい声がふっと緊張の糸を緩める。
“こちら”に戻ってきた彼は、優しく私の髪を撫でた。
「ごめんごめん、少し意地悪したね。」と笑いながら、私の肩を押す。ゆっくりと布団に身体が戻り、ぎしりと軋む骨に不快感を覚えながらも彼を見上げた。
「ごめんなさい、総司。私、」
「君は悪くないよ。」
ごろんと並んで横になり、私の上に布団ごしに手を置いた。少しの重みにこれほど縋りたくなることなんて、これまで一度もなかった。
「伊織が動けない自分を嫌いにならないように、僕が仕事をあげるよ。」
柔らかい声色は、包むような暖かみを持っていて。
「僕の相手をするんだ。僕が巡察へ行くときは、無事に帰ってくるように待つ。帰ってきたら、おかえりって言って、また話す。その繰り返し。それが伊織の仕事。」
死と隣り合わせの貴方は、どうしてそんなにも前向きに、生きて歩めるのだろう。
「僕が帰る場所を作る。それが、伊織の今の仕事だよ。」
くしゃりと破顔するその横顔は、なんだか少し寂しげで。頷くと、目尻から涙がたれて枕を濡らした。
「約束する。私はずっと、総司を待つよ。」
真っ直ぐな緑の瞳が、じわりと熱を帯びる。
「ありがとう。」と彼は言った。
外出の許可を取り付けるためにはじめと手合わせしたはいいものの、肋を骨折し寝込むはめになった私は、自分の部屋から見える青空をただぼうっと眺めていた。
トイレ以外は部屋を出ず、運ばれてくる食事も喉を通らないため、一日二食にしてもらっている。全体的にエネルギーをなくして、ただ時間だけが過ぎる日々。
「誰か来てくれないかなぁ。」
「何言ってるの。僕がこうして来てあげてるでしょ。」
「総司は土方さんから逃げてるだけでしょ。」
「そんなことないよ。」
いけしゃあしゃあと言ってのける彼は、よっと私の布団から起き上がる。
広くなった布団を目いっぱい使って仰向けになる。視界に広がる天井がやけに遠くて、あぁ動けないんだなぁと不甲斐なさだけを感じた。
「なんだか抜け殻みたいだねぇ伊織。」
総司がこちらをのぞき込む。退屈そうなその面持ちは、まさに私の心情をそのまま映しているようで。図星を突かれ深くため息を吐くしかない。
「だってさ、ただ寝てることほど面白くないことってないよ。」
「ずっと話していられるなんて楽じゃない。」
「総司はね。いざそうなったら、総司だって暇で仕方なくて生きるのが嫌になるかもよ。」
憎まれ口を叩くつもりで言うと、存外しんとする。返答を待ちきれず彼を見ると、虚空を見上げる彼の面持ちに感情はなかった。
ぞっとするものが背を走る。ゆっくりとこちらに向き治り、「確かにそうだね。」と彼はこぼした。
「役に立てない時は、もう必要とされなくなる時だもんね。そうなったら、生きてる価値なんてない。」
無表情にそう言い切って、その瞳が据わる。彼だけが空間から浮いたような、切り取ったような孤独を持ってそこに存在していた。
「あ…ごめんなさい…」
鼻がつんとして、咄嗟に起き上がった。
近藤さんの役に立つことが全てだと思っている彼に、私はなんてことを言ったのか。
動けなくなったときはお前の居場所はないのだと、言ったことに他ならない。無遠慮なその言葉が、未来の彼を傷つけた気がしてやまない。
「ごめんなさい。」
張り詰めたこの空気は、紛れもなく自分が作ったのだと考えただけで後悔する。総司が動いた音がした。
「…ごめんね、怖かった?」
そっと優しい声がふっと緊張の糸を緩める。
“こちら”に戻ってきた彼は、優しく私の髪を撫でた。
「ごめんごめん、少し意地悪したね。」と笑いながら、私の肩を押す。ゆっくりと布団に身体が戻り、ぎしりと軋む骨に不快感を覚えながらも彼を見上げた。
「ごめんなさい、総司。私、」
「君は悪くないよ。」
ごろんと並んで横になり、私の上に布団ごしに手を置いた。少しの重みにこれほど縋りたくなることなんて、これまで一度もなかった。
「伊織が動けない自分を嫌いにならないように、僕が仕事をあげるよ。」
柔らかい声色は、包むような暖かみを持っていて。
「僕の相手をするんだ。僕が巡察へ行くときは、無事に帰ってくるように待つ。帰ってきたら、おかえりって言って、また話す。その繰り返し。それが伊織の仕事。」
死と隣り合わせの貴方は、どうしてそんなにも前向きに、生きて歩めるのだろう。
「僕が帰る場所を作る。それが、伊織の今の仕事だよ。」
くしゃりと破顔するその横顔は、なんだか少し寂しげで。頷くと、目尻から涙がたれて枕を濡らした。
「約束する。私はずっと、総司を待つよ。」
真っ直ぐな緑の瞳が、じわりと熱を帯びる。
「ありがとう。」と彼は言った。
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