YOUTH
3年目12月上旬 受験勉強
琥一side
12月の空気は、部屋の隙間からも容赦なく入り込んでくる。
ヒーターのぬるい風と、窓際に置いたブランケットの厚みが、その冷たさをいくらか和らげていた。
テーブルの上には、開かれた問題集と参考書が散らばっている。
琉夏はいつになく真剣な顔でノートに何かを書いていた。
らしくねぇ、と喉元まで出かけた言葉を飲み込む。受験生ってやつだから、仕方ない。
隣では、楓が静かにページをめくっていた。
あんな涼し気な顔してあいつは、前回のテストで学年首席を獲った。
楓が本気だしゃ誰にも負けないことはわかっていたが、それでも込み上げるものがある。
カウンター席に腰掛けた俺は、湯気の立つミルクマグを手に、二人の姿をぼんやり眺めながら、頭の中では晩飯の献立を考えていた。
どうせなら、美味いもんを食わせてやりたい。せめて、身体くらい温まるように。
そのときだった。
楓がふと顔を上げて、俺と目が合った。
目の奥が柔らかく揺れて、すぐに口元がふわりと笑う。
音はなかった。けど、確かに唇がゆっくりと動いた。
『焼きうどん』
思わず、ため息がこぼれる。
笑いが込み上げたのは、何笑ってんだって顔をして、琉夏がチラッとこっちを見たからだ。
焼きうどんか。
『わかった』
声には出さず、唇だけ動かして、楓に返した。
楓はそれに満足したように、また目線を教科書に落とす。
俺は立ち上がって、キッチンの冷蔵庫の取っ手に手をかけた。
冷たい空気が顔を撫でる。その向こうに、昨日買った鶏肉。
まぁあいつらには、ちゃんと栄養つけてもらわねぇとな。
スキレットの上に油を引きながら、ふと顔を上げる。
二人の肩が、並んで揺れていた。
窓の外には、もうじき降りそうな冬の雲。
けどここは、十分なくらいぬくもっていた。
