YOUTH

1年目6月中旬 重箱と胃袋を掴む
主人公side


 風みたいに走り抜けてく琉夏君と琥一君。

 「すごいなぁ」と僕は思わず笑ってしまう。

 二人には違うクラスの幼馴染がいて、その子と二人三脚したいが為に一位を狙ってるらしい。
 無事一番でゴールテープを切った琉夏君が、ルンルンで大迫先生に話しかけてる。琥一君と、背の低いボブの女子生徒を挟んで何かを交渉しているみたいだ。
 でもがっくりと二人は肩を落として、ベンチに歩いてくる。

「…あれ?二人三脚は?」

 歩いてきた二人に思わず聞くと、項垂れた二人は心底残念そうに「二人三脚もう終わってんだって」とこぼした。
 「あ、大迫先生にハメられたのか」って思わず言うと、琥一君が舌打ちした。

 「てかさ、カッちゃん。お弁当、持ってきてくれた?」

 「うん。」

 さっき教室から持ってきた、重箱のお弁当を広げる。
 ぎゅうぎゅうに詰めたおかずに、二人の目がキラキラしている。なんだか子供みたいで、笑いそうになった。

 「おにぎりもあるよ」

 「俺、タラコがいい!タラコある?」って琉夏君が身を乗り出した。

 「あるよ」

 箸と一緒に渡すと、二人は手を合わせた。

 「いただきます!」

 「うま!」って琉夏君が眉間を開く。
 「悪かねぇ」って目を細めた琥一君も、大きな口でどんどん食べていく。これだけ美味しそうに食べてもらえるのは、結構嬉しい。自分用に作って食べる弁当より、ずっと作り甲斐がある。

 「ねぇカッちゃん。俺、カッちゃんのごはん毎日食べたい」

 琉夏君がそう言って、くしゃっと顔をくずして笑う。
 金髪が陽に透けて、まるで光が跳ねているみたいだった。

 「馬鹿ルカ。んなこと言ったら本当にやりかねねぇだろうがカッちゃんはよぉ」

 琥一君がからかい口調で言う。

 「流石に僕も毎日二人にお弁当作ってたら、破産するよ」

 そう答えながら、胸の奥がくすぐったい。
 嬉しくて、でも少しだけ恥ずかしい。

 高校で、こんなふうに笑い合える人たちと出会えるなんて、思ってもみなかった。

 「じゃあ、俺らと住む?全部折半しようよ」

 琉夏君が笑いながらそんなことを言う。
 冗談なのは分かってるけど──ピアスが陽にきらりと光って、少しだけ本気に見えた。

 「ははは、そんなに気に入ってもらえてうれしいよ」

 一瞬、心がふっと浮いた。
 それは夏の風に吹かれた、ちいさな木の葉みたいな感情だった。
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