YOUTH

1年目7月中旬 お前の誕生日は
琉夏side


 夕方は、やけに赤い空をしている。
 湿った風が制服の袖を撫でていて、蝉の声が遠く聞こえていた。

 「なぁカッちゃん。オマエの誕生日っていつだ?」

 唐突にそんなことを言い出したのは、コウだった。
 ほらよ、と自販機のコーラをカッちゃんに手渡して、ベンチにどさっと腰を下ろす。

 その隣でカッちゃんは一瞬、表情を止めた気がした。けれどすぐに、ほんの少しだけ笑って首を傾げる。

 「え?なんで?」

 「なんでってなんでだ。早く教えろ」

 「……うーん、どうだったかなぁ」

 肩をすくめて、さらっと流すみたいにカッちゃんは笑う。その笑い方が、どこかいつもと違う。
 俺は飲みかけの麦茶のボトルを持ったまま、その横顔をじっと見ていた。

 「でも俺らはちゃんと祝ってもらったし」

 思わず言葉が口をついて出た。
 コウの誕生日には、お弁当と手作りのケーキ。
 俺の誕生日にも重箱サイズの豪華なお昼を作ってくれた。
 誕生日はできるだけ、いつの間にか終わっていて欲しい俺だけど。美味しいものが食べられたのは、シンプルに嬉しかった。

 「だから……俺らも祝いたいよ」

 そう続けた俺に、カッちゃんは今度はもっと曖昧な笑みを浮かべた。

 「ありがとう。でも……なんか、照れるからいいよ」

 照れたようにも見えるその微笑み。けれど俺には少しだけ、違うものに見える。

 これはなんだか、踏み込むなと言われている気がする。

 空気が、ふっと変わる。
 それを感じ取って、俺はきゅっと唇を噛んだ。
 言いかけた言葉を飲み込んだ俺の横で、コウが空を見上げて伸びをした。

 「……まあ…そんな恥ずかしいなら勘弁してやる」

 それだけ言って、缶をぽいっとゴミ箱に投げ入れた。見事にゴール。

 カッちゃんは「すご」と呟いて笑った。
 ざらざらした思いが、心の水面に浮いていた。
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