十九の夏
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「卒業、おめでとう。今年から、君達はヒーローの仲間入りだ。想像以上に厳しい世界だ。全ての命を救えるわけじゃない。目の前で死んでいくのを見ることもあるだろう。俺はヒーローになってだいぶ経つが、まだまだ未熟で悔しいと思うことなどいくらでもある。……それでも、ヒーローになって良かったと思う。だから、苦しいこと辛いことも乗り越えてみせろ」
相澤先生の言葉で、啜り泣く声が大きくなった。
それと同時に、現役のプロヒーローからの叱咤は現実を思い知らせる。厳しいのだと。辛く、苦しい道のりだと。だが、それでも乗り越えろと。
涙は出ない。
その先を思い浮かべ、手汗を握った。
これからだ。
まだ、スタート地点に立っただけだ。
「以上が、俺からの言葉だ」
「先生!!」
飯田の声でクラスメイト全員が立った。
背筋が伸びる。
あっという間に過ぎた三年間。
義務教育を超えた三年間で、私は強くなったと自信を持てる。
ざらりと、流れていく思い出。
涙は出ない。
短いままの髪は、肩に触れない。
「三年間、お世話になりました!!!」
「「「ありがとうございました!!」」」
びりびりと、空気が振動した。
皆、成長した。皆、強くなった。
スタートの白い線に立った私達は、間違いなく地獄へと向かって走る。
助けられなかった人々、救うことのできた人々。
逆恨みされることもあるだろう。感謝されるばかりじゃあない。不甲斐ない、力の足りなかった自分を嫌いになって後悔して、それでも己の中の正義を振るうために立ち止まることは許されない。
ごちゃごちゃに混ぜ込まれた、血と涙の世界で生き続けることから私達は逃げられない。
「名前、写真撮ろう!」
「うん! 母さん、撮ってー!」
「はいはい」
赤いネクタイも、このプリーツスカートも、ブレザーも今日でお別れだ。
目を赤くしたお茶子やクラスメイトと写真を撮る。
今日で期限切れの女子高生である私。
ヒーローとして、新たに頑張る私。
どちらも同じ身体だけれど、別人のように感じるのは当然のことだ。
「出久、勝己、三人で写真撮るよ!」
「は? ぜってえやだ」
「はいはい、撮るよー。出久、こっち来て」
「う、うん!」
胸元にあるコサージュが眩しい。
卒業生であることを主張しているそれは、酷く寂しくて、酷く誇らしかった。
十八の春。
迫り来るその日のために、私が捨てて得なければならないものは、いくつあるのだろう。
相澤先生の言葉で、啜り泣く声が大きくなった。
それと同時に、現役のプロヒーローからの叱咤は現実を思い知らせる。厳しいのだと。辛く、苦しい道のりだと。だが、それでも乗り越えろと。
涙は出ない。
その先を思い浮かべ、手汗を握った。
これからだ。
まだ、スタート地点に立っただけだ。
「以上が、俺からの言葉だ」
「先生!!」
飯田の声でクラスメイト全員が立った。
背筋が伸びる。
あっという間に過ぎた三年間。
義務教育を超えた三年間で、私は強くなったと自信を持てる。
ざらりと、流れていく思い出。
涙は出ない。
短いままの髪は、肩に触れない。
「三年間、お世話になりました!!!」
「「「ありがとうございました!!」」」
びりびりと、空気が振動した。
皆、成長した。皆、強くなった。
スタートの白い線に立った私達は、間違いなく地獄へと向かって走る。
助けられなかった人々、救うことのできた人々。
逆恨みされることもあるだろう。感謝されるばかりじゃあない。不甲斐ない、力の足りなかった自分を嫌いになって後悔して、それでも己の中の正義を振るうために立ち止まることは許されない。
ごちゃごちゃに混ぜ込まれた、血と涙の世界で生き続けることから私達は逃げられない。
「名前、写真撮ろう!」
「うん! 母さん、撮ってー!」
「はいはい」
赤いネクタイも、このプリーツスカートも、ブレザーも今日でお別れだ。
目を赤くしたお茶子やクラスメイトと写真を撮る。
今日で期限切れの女子高生である私。
ヒーローとして、新たに頑張る私。
どちらも同じ身体だけれど、別人のように感じるのは当然のことだ。
「出久、勝己、三人で写真撮るよ!」
「は? ぜってえやだ」
「はいはい、撮るよー。出久、こっち来て」
「う、うん!」
胸元にあるコサージュが眩しい。
卒業生であることを主張しているそれは、酷く寂しくて、酷く誇らしかった。
十八の春。
迫り来るその日のために、私が捨てて得なければならないものは、いくつあるのだろう。
