二十二の夏
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「 爆豪!!! おい、いたぞ!」
「名前ちゃん!そんな、誰か!治癒系のヒーローはいないの!?」
重たい瞼。
ぼやける視界を埋め尽くす、見知った顔。
よかった。みんな生きている。
「いずく、 いずくは、?」
「生きとるよ、だからはよう名前ちゃんも」
「いきてる、の。……よか、た……ひとめでもあいたかったかも、なあ」
「何言ってんだ、あとで会えばいいだろ!?」
「そうよ。さあ、はやく」
重たいの。
身体が動かない。
瞼が言うことを聞かない。
酸素がにげていく。
いきができない。
私はいいから、早く他の人達の救助に行かないと。
「き、りしま、つゆちゃ、……もう、たすからない。……わかる、でしょ?」
「駄目、駄目よ。久しぶりに会ったと思ったら、こんな、……!」
「いいから、。……はやく、ほかのひとのきゅうじょに、っ」
会わないうちに、こんなに大人になっていたんだ。
みんな、綺麗だ。格好いい。
もう、立派なヒーローだ。
握られる手の温度も、感触も分からない。
こんなにたくさんの人に囲まれて死ねるなんて、贅沢だ。私は、幸せ者だ。ありがとう。
「爆豪! 早く来い!」
「わかってんだよ!おい、名前!」
「っ、げほ、……かつ、き。ありがと、……これから、わたしのじんせいぶん、おしつけることに、なるけど、ごめん」
「……したかったことはできたんか」
「うん、うん…!! できた、やりとげた、!」
泣きそうに歪んだ勝己の顔に、力なく笑いが溢れた。
なんて顔、してるんだ。
唇を痛そうな程に噛み締めて、それでいて優しい声で、土や血で塗れた頭を撫でてくれた。
ずっと、憧れだった。
勝己の妹で、母さんと父さんの子供であることが誇りだ。
「そうか。……頑張ったな、名前。てめえの人生ぐらい余裕で背負ったるわ。任せろ。ババア達との旅行も、任せろ。親孝行も、俺がお前の分までやる」
「うん」
「爆豪くん、何でそんな、そんな事いうの!名前ちゃん、お願いやから。お願いやから、死なんといて!!」
僅かに首を振った。
もう、駄目だと。
安心させるように持ち上げた口角は、ちゃんと笑顔を示すことができたのか。わたしに、知る由はない。
「たいよう、……ひさしぶりにみた」
ぼたりと落ちてくる水は、あめかな。
それとも、だれかのなみだなのかな。
わたしのために、ないてくれているのかな。
なんて、死ぬ間際だからってちょうしにのりすぎたな。
全てが終わったことを示す太陽に手を伸ばすと、誰かの指先が追いかけて、掴めずに下へ下がった。
やはり、長袖にして良かったと心から思う。
あの恐ろしい熱は、私を殺せない。
ああ、でも、溜め込んだこの熱に殺されてしまうのだろうなあ。結局、同じことだった。だけれども、生きるという重荷をやっと下ろすことができる。
大切な人を守ることができた。
苦しい罪悪感から、解放される。
好きだという呪いから、出久を切り離すことができる。
大好きだ。
やっぱり、最後くらい会いたかったなあ。
少ししかいられなかった。
戦闘中でそんな暇はなかったけど、今思い出せば、一年経った出久はやはりかっこよくなっていた。好きだ。今年も、彼のことが好きでした。
「名前、安心しろ」
兄の声が遠い。
太陽の下で吸う空気は、こんなにも美味しかったろうか。
抗えないまぶたの重さに、私は目を閉じた。
私が掴みたかったのは太陽じゃない。
ずっと、出久の手を。
でも。
駄目なんだ。
もう、眠い。
瞼を閉じる少しの間、出久が笑っていた気がする。幻覚でもいい。君が生きていてくれれば、それでいい。さようなら、ありがとう。
私は、十二番目の魔女になれましたか?
「名前ちゃん!そんな、誰か!治癒系のヒーローはいないの!?」
重たい瞼。
ぼやける視界を埋め尽くす、見知った顔。
よかった。みんな生きている。
「いずく、 いずくは、?」
「生きとるよ、だからはよう名前ちゃんも」
「いきてる、の。……よか、た……ひとめでもあいたかったかも、なあ」
「何言ってんだ、あとで会えばいいだろ!?」
「そうよ。さあ、はやく」
重たいの。
身体が動かない。
瞼が言うことを聞かない。
酸素がにげていく。
いきができない。
私はいいから、早く他の人達の救助に行かないと。
「き、りしま、つゆちゃ、……もう、たすからない。……わかる、でしょ?」
「駄目、駄目よ。久しぶりに会ったと思ったら、こんな、……!」
「いいから、。……はやく、ほかのひとのきゅうじょに、っ」
会わないうちに、こんなに大人になっていたんだ。
みんな、綺麗だ。格好いい。
もう、立派なヒーローだ。
握られる手の温度も、感触も分からない。
こんなにたくさんの人に囲まれて死ねるなんて、贅沢だ。私は、幸せ者だ。ありがとう。
「爆豪! 早く来い!」
「わかってんだよ!おい、名前!」
「っ、げほ、……かつ、き。ありがと、……これから、わたしのじんせいぶん、おしつけることに、なるけど、ごめん」
「……したかったことはできたんか」
「うん、うん…!! できた、やりとげた、!」
泣きそうに歪んだ勝己の顔に、力なく笑いが溢れた。
なんて顔、してるんだ。
唇を痛そうな程に噛み締めて、それでいて優しい声で、土や血で塗れた頭を撫でてくれた。
ずっと、憧れだった。
勝己の妹で、母さんと父さんの子供であることが誇りだ。
「そうか。……頑張ったな、名前。てめえの人生ぐらい余裕で背負ったるわ。任せろ。ババア達との旅行も、任せろ。親孝行も、俺がお前の分までやる」
「うん」
「爆豪くん、何でそんな、そんな事いうの!名前ちゃん、お願いやから。お願いやから、死なんといて!!」
僅かに首を振った。
もう、駄目だと。
安心させるように持ち上げた口角は、ちゃんと笑顔を示すことができたのか。わたしに、知る由はない。
「たいよう、……ひさしぶりにみた」
ぼたりと落ちてくる水は、あめかな。
それとも、だれかのなみだなのかな。
わたしのために、ないてくれているのかな。
なんて、死ぬ間際だからってちょうしにのりすぎたな。
全てが終わったことを示す太陽に手を伸ばすと、誰かの指先が追いかけて、掴めずに下へ下がった。
やはり、長袖にして良かったと心から思う。
あの恐ろしい熱は、私を殺せない。
ああ、でも、溜め込んだこの熱に殺されてしまうのだろうなあ。結局、同じことだった。だけれども、生きるという重荷をやっと下ろすことができる。
大切な人を守ることができた。
苦しい罪悪感から、解放される。
好きだという呪いから、出久を切り離すことができる。
大好きだ。
やっぱり、最後くらい会いたかったなあ。
少ししかいられなかった。
戦闘中でそんな暇はなかったけど、今思い出せば、一年経った出久はやはりかっこよくなっていた。好きだ。今年も、彼のことが好きでした。
「名前、安心しろ」
兄の声が遠い。
太陽の下で吸う空気は、こんなにも美味しかったろうか。
抗えないまぶたの重さに、私は目を閉じた。
私が掴みたかったのは太陽じゃない。
ずっと、出久の手を。
でも。
駄目なんだ。
もう、眠い。
瞼を閉じる少しの間、出久が笑っていた気がする。幻覚でもいい。君が生きていてくれれば、それでいい。さようなら、ありがとう。
私は、十二番目の魔女になれましたか?
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