二十の夏
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「うるせえな。……酒呑んだんか」
「うん。出久、やっぱりお酒強かったよ。 初めて呑む割に、すっごいの」
「わかった。つかそれ、新しく買ったばっかりだろ。はよ着替えろ、皺になる」
うん、分かってる。分かってるよ。
どろどろの幸福感に足元がとられて、身動きが出来ないんだ。
したくないのかもしれないだけだけど。
あと二年の人生に、どれだけの予定を詰め込もうか。
家族で旅行に行きたいが、それは無理かな。
思い出をつくってしまったら、悲しくなるから。
もっと、と思ってしまうから。
だから、行けない。望んでは駄目だ。
出久と呑んだ酒は、いつもより美味しかった。
大きかった目も、今では細くなり、その目に潜む意志の強さは、何度見ても飽きない。格好いい。ああ、好きだ。
「明日、仕事は?」
「休み」
「なら、どっか行くぞ」
「え」
起こした身体は、やはり熱く火照っている。
調子に乗って呑みすぎたのは自覚しているのだが、頭と耳がおかしくなったか?
「ごめん。もう一回言ってくれない?」
「だあから! 明日どっか行くぞっつてんだよ」
「どこに」
「んなの今から決めんだよ」
だから、早く上がってこいのこと。
行きたくない、なあ。
多分、私が思い出をつくることに対して尻込んでいるのを知った上で言っている、と思う。
酷い兄だ。
過去の幸せに身体を浸し、眠ることさえ許してくれない。引き上げられるその手を、私が振り払わないと知っているのだからたちが悪い。
「……渡せたと思うが、ちゃんと渡せたか」
「うん。今年も無事に渡せたよ」
「ならいい。……てめえ、一回でもいいから飲み会に行け。丸顔とかがうるせんだよ」
「うーーーん……んー、………考えとく」
「そうしろ」
ぐしゃりと撫でられた頭。
恒例になった出久の誕生日プレゼント選びも、文句は言うが、いつも協力してくれた。出久は私に貰ってばかりだと言うが、私は勝己や出久に貰ってばかりだ。
勝己からは、自信を持つことの大切さ。
出久からは、諦めない強さをもつことの大切さ。
二人の背中から、努力することの難しさ。そして、どれだけそれが自分の自信に結びつき、少しのことでへこたれない精神力が形成されることに繋がるのか学んだ。
あと二年で何が出来るだろうか。
出来ることなど沢山あるが、果たしてそれで目的を達成させることが出来るのか?
あと二年。
もう二年。
二を示す手の形とは真反対の二年後に、出久を生かすことが出来るだろうか。
「何かしたいこととかねえんか」
「うーん…美味しいお酒と美味しい食べ物沢山食べたい。それで、お風呂でゆっくりしたい」
「怠惰だな」
「常日頃動いてるんだから、たまには良くない?」
出久、プレゼント喜んでくれたかな。
私が込める想いは、プレゼントの包装紙と一緒に捨ててくれていい。
ぐしゃぐしゃにして、投げ捨ててくれ。
出久の未来に、私という存在は必要ないのだから。
「うん。出久、やっぱりお酒強かったよ。 初めて呑む割に、すっごいの」
「わかった。つかそれ、新しく買ったばっかりだろ。はよ着替えろ、皺になる」
うん、分かってる。分かってるよ。
どろどろの幸福感に足元がとられて、身動きが出来ないんだ。
したくないのかもしれないだけだけど。
あと二年の人生に、どれだけの予定を詰め込もうか。
家族で旅行に行きたいが、それは無理かな。
思い出をつくってしまったら、悲しくなるから。
もっと、と思ってしまうから。
だから、行けない。望んでは駄目だ。
出久と呑んだ酒は、いつもより美味しかった。
大きかった目も、今では細くなり、その目に潜む意志の強さは、何度見ても飽きない。格好いい。ああ、好きだ。
「明日、仕事は?」
「休み」
「なら、どっか行くぞ」
「え」
起こした身体は、やはり熱く火照っている。
調子に乗って呑みすぎたのは自覚しているのだが、頭と耳がおかしくなったか?
「ごめん。もう一回言ってくれない?」
「だあから! 明日どっか行くぞっつてんだよ」
「どこに」
「んなの今から決めんだよ」
だから、早く上がってこいのこと。
行きたくない、なあ。
多分、私が思い出をつくることに対して尻込んでいるのを知った上で言っている、と思う。
酷い兄だ。
過去の幸せに身体を浸し、眠ることさえ許してくれない。引き上げられるその手を、私が振り払わないと知っているのだからたちが悪い。
「……渡せたと思うが、ちゃんと渡せたか」
「うん。今年も無事に渡せたよ」
「ならいい。……てめえ、一回でもいいから飲み会に行け。丸顔とかがうるせんだよ」
「うーーーん……んー、………考えとく」
「そうしろ」
ぐしゃりと撫でられた頭。
恒例になった出久の誕生日プレゼント選びも、文句は言うが、いつも協力してくれた。出久は私に貰ってばかりだと言うが、私は勝己や出久に貰ってばかりだ。
勝己からは、自信を持つことの大切さ。
出久からは、諦めない強さをもつことの大切さ。
二人の背中から、努力することの難しさ。そして、どれだけそれが自分の自信に結びつき、少しのことでへこたれない精神力が形成されることに繋がるのか学んだ。
あと二年で何が出来るだろうか。
出来ることなど沢山あるが、果たしてそれで目的を達成させることが出来るのか?
あと二年。
もう二年。
二を示す手の形とは真反対の二年後に、出久を生かすことが出来るだろうか。
「何かしたいこととかねえんか」
「うーん…美味しいお酒と美味しい食べ物沢山食べたい。それで、お風呂でゆっくりしたい」
「怠惰だな」
「常日頃動いてるんだから、たまには良くない?」
出久、プレゼント喜んでくれたかな。
私が込める想いは、プレゼントの包装紙と一緒に捨ててくれていい。
ぐしゃぐしゃにして、投げ捨ててくれ。
出久の未来に、私という存在は必要ないのだから。
