二十の夏
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「勝己、誕生日おめでとう」
「お前もな」
「ありがとう。母さんが今日家に帰って来いって言ってるの聞いた?」
「知っとる。今日、何時に終わんだ」
「んー、何もなかったら夕方には終わるよ。勝己は?」
俺も、と返事がある。
夕方に終わるらしい。
母さんにメッセージを送り、兄が作ってくれた朝食を噛み締める。
美味しいなあ。これだから勝己の妹をやめられない。
もう二十か。
去年の出久の誕生日から、私と勝己の関係が少し変わった。
何だろう、互いに後悔しないように接しているといえばいいのだろうか。
意味のない喧嘩が減った。
ありがとうと言う回数が増えた。
小さなことに対して感謝を伝えるようになった。
笑顔でいる回数が増えた。
二人での時間を大事にするようになった。
「勝己、ご飯美味しい。ありがとう」
「たりめえだろ。俺が作ってんだ」
「うん。流石」
嬉しくて、大事な時間が過ぎていく。
涙腺が弱くなったのも、きっと一つ一つ動いていく感情を大切にし過ぎているからだ。
「名前」
「 勝己、迎えに来てくれたんだ」
「いいから、さっさと行くぞ。さっきからババアが早く名前連れて来いってうるせえ」
「はは、あんまり家帰れてないもんなあ」
ヒーローになって、家を出て、忙殺されていた日々のせいで家に帰る機会が少なかったことは認める。ごめんね、母さん父さん。
これからは、帰るようにしよう。なんて思っていたら、
「これから、週末は帰るか」
え、と間抜けな声が飛び出た。
何だよ、と眉を寄せる勝己を見て笑いが漏れた。
同じことを考えている。
父さん譲りの髪の色の私と、母さん譲りの髪の色の勝己。
目の色は同じ。
真っ赤な目がお揃いなのが嬉しい。
合わさる同色。
意志を持った、力強い勝己の目は、昔から格好良くて憧れだった。
「何でもないよ」
「は?」
二十になった。
しっかりと二本の足で立つことのできる、大人に。
もう、少し。
ちゃんと目標を達成してみせよう。
「名前、勝己、お帰り!!」
「二人とも誕生日おめでとう」
「!」
「うるせえわ!おい、なにぼさっと突っ立ったんだ。早よ入れ」
「分かってる!ただいま!!」
親不孝者でごめんなさい。
ありがとう。
