呪術
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
にわかが書いたことを踏まえてお読みください
未成年の喫煙飲酒描写がありますが、示唆している訳ではありません。
捏造あり
多分、夢が必要だと考えるにんげんではなかったのだと思う。
酒と、煙草。
染み付いた匂いと味が体を侵す。
「お前、やってることと顔がぜんっぜん合ってねえな」
「はいはい」
「身体に悪いからやめろと言っているんだがな」
落ち着けば落ち着くほど、この世界はどうにも生きづらくなる。
常識を捨てて、今まで見ていたものを忘れてしまえば血なまぐさい世界も、命の重みも感じなくなる。
落とした煙草を、ローファーの底で捻れば呆れた顔をする男が私を見下ろす。
見飽きた。
見飽きた顔が二つ。
「さっさと行けよ、任務あるんだろ」
「お前と一緒のとこになったんだよ。聞いてなかったのかよ」
「そうだったか?しらねえ」
「君は本当に……」
「夏油は、今日は休みだろ。さっさと帰って寝な」
立て掛けていた刀を持ち、「じゃあ行くか」と顎で校門を指す。
あと一本吸いたかったが、残り少ない煙草を思えば終わった後の褒美として取っといた方が己のためになるだろうと、あと数年しないと本来は持つことも許されない箱をポケットにしまう。
「じゃあな」と、後ろ手に挨拶すれば何か声がしたがよく聞こえなかった。
確かめることもせず、指先に引っ掛けたわたしのいのちをぷらぷらと揺らす。
長い足で私に追いつき、隣を歩くでかい男を横目で見て、じゃりじゃりと校庭の土を削る。
「つか、なんで五条と?お前、単独任務ばっかりだっただろ」
「それこそ、しらねえよ」
「あー、また何か企んでんのかな」
乗り込んだ車の、高級なシートの肌触りに手を滑らせ、背中を全て預けてしまえば、目を閉じて必要としてない夢を勝手に与えられる空間へと落ちていく。
「着いたら起こして」
長年の喫煙による呼吸のし辛さが、柔らかく首を絞めた。
なんてことのない日常。
端っこに落としたいのちが、ジリジリと焦げて行く。
不意に高鳴る心臓は、「死ぬかもしれない」と感じるその瞬間だけ。
イカれてる。
尊ぶ命など、この世界には転がっていないことを随分と前から知っていて、だというのに随分と長いこと無視をしている。
たかだか十と七生きただけの小娘にここまで言われる世界などとっとと滅んで仕舞えばいい。
馬鹿だなあ、と思う。
高尚な大義を待ち合わせれば持ち合わせるほど、ニンゲンは堕ちていく。
理想と現実の差に、格差に耐え切れなくなるからだ。その点、何かに縋ってしまえば、楽だ。何を考えずともいいから。
そも、考えることは求められていない。求められているのは、どれだけ上の人形になれるか、だ。
「馬鹿だなあ」
あいつ。
どれだけ恵まれていたって、力を持っていたって、頭がよくたって、どんな才能を持っていたって、にんげんはにんげんだ。
それは、変わらない。
力を持つ奴は、力を持たない奴の気持ちがわからない。恵まれていない奴は、恵まれている奴の気持ちがわからない。個が集まれば巨大な一つになり得るが、その結束力は脆くどこかに綻びが生じればずるずるとそれは広がり、また最小単位に戻る。
何をしたって、どうしたって、人間は一人だ。他人と分かり合えない。それが、私たちのように呪力を持っていたって、金を持っていたって、飛び上がるような才能を持っていたって、誰一人として二人以上にはなれない。
守るのは、己だけでいい。
「何してんの、名前」
「ヤニ、買い忘れたから。出かけるか悩んでる」
「私のでいいんだったらあげるけど」
「……いや、いい。硝子の、あまい」
「お前のは臭いがキツすぎんだよ」
肩をすくめて、ベンチに背中を預ける。
もう、疲れた。
不労所得で生活したい。
腕を目の上に置き、アルコールとニコチンの染み渡った脳みそが、その二つが不足していることに苛立ちを示している。
命は軽い。
指先に引っ掛けられるほどには。
「着いてったあげようか」
「……うん、来てほしい」
染み込んだから、もう忘れよう。
目元に置いていた部分が少しだけ湿っていても、彼女は気付かない。
震えた睫毛に、色を乗せない平日はどうしたって憂鬱になる。唇を彩る魔法を捨ててしまった今は、乾燥から守ってくれる物さえも必要としない。
ぴきりと、引き攣る皮から血が出る。
水分が足りない。
飲むことをしようとしない身体は、随分と前からくるりくるりと体の不調を訴えていた。
「あ、財布ねえわ」
「買ってやるから、いいから、早く行くぞ」
「そ、ありがとう」
どぷりと半身を漬け込んだ太陽がぐだぐだと煮えたぎる。冬の代名詞、炬燵の上を陣取る蜜柑みたいな色を燃やし、あたりが暗くなる。
スカートの上から撫でた太腿。
硬くて、冷たい感触が手に伝わる。
立ち上がった瞬間、目の前が真っ白で、頭がぐるぐると回り平衡感覚がぎちぎちと音を立てて歪む。きりきりとピアノ糸で頭を締め付けられる痛みに顔を歪ませそろりと目を開ける。
夢を見たって、何も変わりはしない。
流れていくのは、時間だけ。
それに身を乗せ、じりじりと減りゆく寿命を片手に何も変わらないのは己だけ。
姿形ばかりが時間とともに変化する。
伸びた背丈も、女の体つきへと丸みを帯びるのも、いつのまにか始まった月経も、自分がどんな性別であるのかを教える。
脱ぎ去ってしまえば、モラトリアムは死んでしまう。いつかは別れゆくそれ。
なぞらえて生きることを、教わってきた。
いつの日か、死んだにんげんの生をなぞらえて生きていく。
死ねば、それはにんげんではない。
意思のない肉袋にしかなり得ない。
それがどれだけ見知った形をしていようとも、もうそれは燃やせば燃える肉袋。燃えるゴミ。不可逆的な時間の流れは、そうやってニンゲンがゴミへと変わる瞬間でさえも無常に過ぎていく。
ぴちゃりと、気味の悪い感触が足にへばりつく。鉄を吸いきって飽和した布がびちゃびちゃと液体を跳ね上げる。
人差し指に、一つずつ靴を引っ掛けて煩わしい制服のボタンをとった。
お気に入りの靴を、汚すわけにはいかない。
まだおろしたての、一週間とたっていないのだから。
夏油
名を、呼んだ。
返事はない。
ここにはもう、あの馬鹿はいない。代わりに、おびただしい鉄の匂いと転がる肉片が、あいつがしたことを物語っている。
疲れてしまったのだろうか。この世界に。それとも、自分の掲げていた大義とやらに。
新鮮な、残穢。慣れ親しんだ呪力の痕跡。
にんげんは呪わずにはいられない。愛も恋も友情も、個が集まればそこには呪いがうまれる。呪わずには、いられないのだ。
「馬鹿だな、やっぱり」
ぶっ壊れた牢屋を、見つけた。じゃりじゃりと砂を足の裏で撫でながら、近づく。
ここにあった何かを、守ろうとしたのか。守った上で何かがあったのか。
村人を皆殺しするにいたる理由が、ここにあったのだろうか。全てを捨てて、この道を選び取る理由が。
びちゃびちゃになった靴下を脱ぎ捨てて、そろりと小屋に足を踏み入れる。
制服が汚れることは、気にならなかった。
座り込んで、膝に肘を乗っけ前腕を前へと伸ばす。足の間に立てた鞘を片手で掴み、鼻でそっと空気を吸う。目を閉じれば、何かがわかる気がした。
「なにしてんの、名前」
「……五条、なんでここにいんの」
「こっちの台詞。で?なんでいるんだよこんなとこ」
「血のにおいがしたから、来た。そしたら、見知った呪力と死体になった村人。んで、お前こそなんで?」
「なんか、嫌な予感がしたから来てみただけ。遅かったみたいだけどな」
肩をすくめた。
わたしにはわからない。
誰にもわからない。
所詮、他人だから。
いま、五条悟が何を考えているのかさえ、分からない。
選び抜いた理由があるなら、それでいい。
止める権利はない。
文句を言う権利も。
誰にもない。
「知りたかったなあ」
全部を捨てて、つくりあげてきた己を殺す理由。
心臓の音は聞こえない。
命尽きたこの村に、必要ないから。
「ほんとう、馬鹿なやつ」
優しくて、優しすぎて、壊れたお前には、その地獄がお似合いだ。
じりじりと茹だる夏は、死体を腐らせることに向いてある時期だった。
未成年の喫煙飲酒描写がありますが、示唆している訳ではありません。
捏造あり
多分、夢が必要だと考えるにんげんではなかったのだと思う。
酒と、煙草。
染み付いた匂いと味が体を侵す。
「お前、やってることと顔がぜんっぜん合ってねえな」
「はいはい」
「身体に悪いからやめろと言っているんだがな」
落ち着けば落ち着くほど、この世界はどうにも生きづらくなる。
常識を捨てて、今まで見ていたものを忘れてしまえば血なまぐさい世界も、命の重みも感じなくなる。
落とした煙草を、ローファーの底で捻れば呆れた顔をする男が私を見下ろす。
見飽きた。
見飽きた顔が二つ。
「さっさと行けよ、任務あるんだろ」
「お前と一緒のとこになったんだよ。聞いてなかったのかよ」
「そうだったか?しらねえ」
「君は本当に……」
「夏油は、今日は休みだろ。さっさと帰って寝な」
立て掛けていた刀を持ち、「じゃあ行くか」と顎で校門を指す。
あと一本吸いたかったが、残り少ない煙草を思えば終わった後の褒美として取っといた方が己のためになるだろうと、あと数年しないと本来は持つことも許されない箱をポケットにしまう。
「じゃあな」と、後ろ手に挨拶すれば何か声がしたがよく聞こえなかった。
確かめることもせず、指先に引っ掛けたわたしのいのちをぷらぷらと揺らす。
長い足で私に追いつき、隣を歩くでかい男を横目で見て、じゃりじゃりと校庭の土を削る。
「つか、なんで五条と?お前、単独任務ばっかりだっただろ」
「それこそ、しらねえよ」
「あー、また何か企んでんのかな」
乗り込んだ車の、高級なシートの肌触りに手を滑らせ、背中を全て預けてしまえば、目を閉じて必要としてない夢を勝手に与えられる空間へと落ちていく。
「着いたら起こして」
長年の喫煙による呼吸のし辛さが、柔らかく首を絞めた。
なんてことのない日常。
端っこに落としたいのちが、ジリジリと焦げて行く。
不意に高鳴る心臓は、「死ぬかもしれない」と感じるその瞬間だけ。
イカれてる。
尊ぶ命など、この世界には転がっていないことを随分と前から知っていて、だというのに随分と長いこと無視をしている。
たかだか十と七生きただけの小娘にここまで言われる世界などとっとと滅んで仕舞えばいい。
馬鹿だなあ、と思う。
高尚な大義を待ち合わせれば持ち合わせるほど、ニンゲンは堕ちていく。
理想と現実の差に、格差に耐え切れなくなるからだ。その点、何かに縋ってしまえば、楽だ。何を考えずともいいから。
そも、考えることは求められていない。求められているのは、どれだけ上の人形になれるか、だ。
「馬鹿だなあ」
あいつ。
どれだけ恵まれていたって、力を持っていたって、頭がよくたって、どんな才能を持っていたって、にんげんはにんげんだ。
それは、変わらない。
力を持つ奴は、力を持たない奴の気持ちがわからない。恵まれていない奴は、恵まれている奴の気持ちがわからない。個が集まれば巨大な一つになり得るが、その結束力は脆くどこかに綻びが生じればずるずるとそれは広がり、また最小単位に戻る。
何をしたって、どうしたって、人間は一人だ。他人と分かり合えない。それが、私たちのように呪力を持っていたって、金を持っていたって、飛び上がるような才能を持っていたって、誰一人として二人以上にはなれない。
守るのは、己だけでいい。
「何してんの、名前」
「ヤニ、買い忘れたから。出かけるか悩んでる」
「私のでいいんだったらあげるけど」
「……いや、いい。硝子の、あまい」
「お前のは臭いがキツすぎんだよ」
肩をすくめて、ベンチに背中を預ける。
もう、疲れた。
不労所得で生活したい。
腕を目の上に置き、アルコールとニコチンの染み渡った脳みそが、その二つが不足していることに苛立ちを示している。
命は軽い。
指先に引っ掛けられるほどには。
「着いてったあげようか」
「……うん、来てほしい」
染み込んだから、もう忘れよう。
目元に置いていた部分が少しだけ湿っていても、彼女は気付かない。
震えた睫毛に、色を乗せない平日はどうしたって憂鬱になる。唇を彩る魔法を捨ててしまった今は、乾燥から守ってくれる物さえも必要としない。
ぴきりと、引き攣る皮から血が出る。
水分が足りない。
飲むことをしようとしない身体は、随分と前からくるりくるりと体の不調を訴えていた。
「あ、財布ねえわ」
「買ってやるから、いいから、早く行くぞ」
「そ、ありがとう」
どぷりと半身を漬け込んだ太陽がぐだぐだと煮えたぎる。冬の代名詞、炬燵の上を陣取る蜜柑みたいな色を燃やし、あたりが暗くなる。
スカートの上から撫でた太腿。
硬くて、冷たい感触が手に伝わる。
立ち上がった瞬間、目の前が真っ白で、頭がぐるぐると回り平衡感覚がぎちぎちと音を立てて歪む。きりきりとピアノ糸で頭を締め付けられる痛みに顔を歪ませそろりと目を開ける。
夢を見たって、何も変わりはしない。
流れていくのは、時間だけ。
それに身を乗せ、じりじりと減りゆく寿命を片手に何も変わらないのは己だけ。
姿形ばかりが時間とともに変化する。
伸びた背丈も、女の体つきへと丸みを帯びるのも、いつのまにか始まった月経も、自分がどんな性別であるのかを教える。
脱ぎ去ってしまえば、モラトリアムは死んでしまう。いつかは別れゆくそれ。
なぞらえて生きることを、教わってきた。
いつの日か、死んだにんげんの生をなぞらえて生きていく。
死ねば、それはにんげんではない。
意思のない肉袋にしかなり得ない。
それがどれだけ見知った形をしていようとも、もうそれは燃やせば燃える肉袋。燃えるゴミ。不可逆的な時間の流れは、そうやってニンゲンがゴミへと変わる瞬間でさえも無常に過ぎていく。
ぴちゃりと、気味の悪い感触が足にへばりつく。鉄を吸いきって飽和した布がびちゃびちゃと液体を跳ね上げる。
人差し指に、一つずつ靴を引っ掛けて煩わしい制服のボタンをとった。
お気に入りの靴を、汚すわけにはいかない。
まだおろしたての、一週間とたっていないのだから。
夏油
名を、呼んだ。
返事はない。
ここにはもう、あの馬鹿はいない。代わりに、おびただしい鉄の匂いと転がる肉片が、あいつがしたことを物語っている。
疲れてしまったのだろうか。この世界に。それとも、自分の掲げていた大義とやらに。
新鮮な、残穢。慣れ親しんだ呪力の痕跡。
にんげんは呪わずにはいられない。愛も恋も友情も、個が集まればそこには呪いがうまれる。呪わずには、いられないのだ。
「馬鹿だな、やっぱり」
ぶっ壊れた牢屋を、見つけた。じゃりじゃりと砂を足の裏で撫でながら、近づく。
ここにあった何かを、守ろうとしたのか。守った上で何かがあったのか。
村人を皆殺しするにいたる理由が、ここにあったのだろうか。全てを捨てて、この道を選び取る理由が。
びちゃびちゃになった靴下を脱ぎ捨てて、そろりと小屋に足を踏み入れる。
制服が汚れることは、気にならなかった。
座り込んで、膝に肘を乗っけ前腕を前へと伸ばす。足の間に立てた鞘を片手で掴み、鼻でそっと空気を吸う。目を閉じれば、何かがわかる気がした。
「なにしてんの、名前」
「……五条、なんでここにいんの」
「こっちの台詞。で?なんでいるんだよこんなとこ」
「血のにおいがしたから、来た。そしたら、見知った呪力と死体になった村人。んで、お前こそなんで?」
「なんか、嫌な予感がしたから来てみただけ。遅かったみたいだけどな」
肩をすくめた。
わたしにはわからない。
誰にもわからない。
所詮、他人だから。
いま、五条悟が何を考えているのかさえ、分からない。
選び抜いた理由があるなら、それでいい。
止める権利はない。
文句を言う権利も。
誰にもない。
「知りたかったなあ」
全部を捨てて、つくりあげてきた己を殺す理由。
心臓の音は聞こえない。
命尽きたこの村に、必要ないから。
「ほんとう、馬鹿なやつ」
優しくて、優しすぎて、壊れたお前には、その地獄がお似合いだ。
じりじりと茹だる夏は、死体を腐らせることに向いてある時期だった。
1/8ページ
