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 バタ―――――ンッッ!!


 勢い良く閉まるドアの音が病室に響いた。
その音に、病室に居た全員が驚きドアを振り返る。
その後に続く、パタパタパタッ――という、誰かの走る足音。
他の皆がキョトンとしている中で、一人桃城だけが、微かに辛そうな顔をした後、苦笑を浮かべていた。

「え?ちょっと…今のって…。」

 何かに気付いたように呟くメンバー。
その後に、またしてもドアが勢い良く開いた。


 バタンッッ!!



「ちょっと、どういう事っスかっ!!」

 振り向いたと同時に浴びせられる越前の怒声。
普段のクールさは何処へ行ったのか、ムッと怒ったようなその表情と言葉に、全員がポカンと拍子抜けした顔で見詰める。

「どうしたんだ、越前?」

「どうしたもこうしたもっ! なんで海堂先輩が走りかえってるんスかっ!」

「あれってやっぱり海堂だったのか…。」

「桃~! どうするんだよっ! さっきのきっと薫ちゃん、聞いてたんだって!!」

「…………。」

 周りがザワザワとうろたえ始める中、当の桃城だけは俯きつつ押し黙ったままだった。

「ちょっと、話が見えないんだけど…。桃先輩、さっきのって何?」

「……………。」

 ここまで海堂を連れてきただけに、あんな帰り方に納得いかないとばかりに、越前がベットに座る桃城へと詰め寄る。

「桃先輩っ!」

「……………。」

「どういう事か聞いてるんスけど。」

「………………。」

「何で、海堂先輩が走って帰る訳?」

「…………。」

「っ!! 桃先輩ってばっ!!」

 何を言っても黙ったままの桃城に、いい加減キレた越前が声を荒げ、その肩を鷲掴みにする。

「おチビッ!」

「越前、落ち着けっ!」

 そんな越前の行動に、周りに居たメンバーが慌てて止めに入る。
が、越前はそれを無視し、桃城の顔を上げさせその目を真正面から見据える。
数秒無言のまま見詰めあった後、先に目を逸らしたのは桃城だった。

「っ、どういう事ッスか。」

桃城が押し黙ったままなのに痺れを切らした越前は、肩を掴んでいた手を離し、周りのメンバーを見渡し問いかけた。
 しかし、他のメンバーも自分達が言っていいものかと、口を閉ざし病室には静寂だけが佇んでいる。

「……聞いてるんだけど? なんで海堂先輩があんな辛そうな顔して走っていったのか。 ここで何か無ければ、根は真面目なあの人だし、あんな走って帰るなんて真似しないはずたよね?」

「………。」

越前の静かな怒りに、この場に居た誰もが何も言えなかった。
そんな中、口を開いたのはさっきまで一切口を閉ざしていた桃城だった。

「…アイツに会いたくねぇって言ったんだよ。………大嫌いだから、顔も見たくねぇって。まあ、なんだな…帰ったんなら好都合ってもんだろ? アイツが着たらオチオチ安静にもしてらんねぇし、病院にも迷惑掛けるしな~。清々するぜ!」

アハハッといつもの調子で、いつもの笑顔で何事も無いかのように話す桃城。
それは何かを吹っ切る様な口調であった。
 桃城のあまりの言葉に絶句して、マジマジとその姿を見てしまった。

「………それ、本気で言ってんの?…本気なら、俺…桃先輩の事許さないッスから…。」

「……っ…。本気に決まってんだろ~今更、嘘なんて……言わねぇよ…。」

ジッと見詰め、睨み付けるような越前の眼差しに、一瞬海堂の顔が浮かび、言葉に詰まる。
しかし、ここでヘマをしたら今までの事がパアになってしまう。
グッと拳に力を込め、なんとか平静を装う事に成功し、真っ直ぐ見据えたまま答えた。
ジッとそのまま見詰め合う2人を回りは静かに見守る。

「……アンタ…サイテーだ。」

越前は、キッと桃城を睨み付けそう一言残すと、身を翻し病室を後にした。



  ――3に続く――
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