『★恋のきっかけ★《海堂ver》+α』
誰かを好きになるきっかけって、結構簡単だと思う……。
ただの仕種だったり、普段の何気無い言葉だったり…もしかしたら、ただ隣に居ただけかもしれねぇ…。
それは、ただの退屈な毎日の中にもゴロゴロと転がっているんだ。
でも…それが例えば自分にとって、一番苦手な相手だったら…。
自分が一番、嫌悪している相手だったら…。
ましてや、周りからも認められる様な犬猿の仲だったら…。
そんな場合…俺は、どうしたらいいんだ?
一番、嫌な相手に惚れてしまった…と、いつもの特徴のある溜め息を吐き、その想い人でもある人物を、今日もこっそりと気付かれない様に見つめる海堂だった。
それは、数日前の事であったーーーー
いつも通り、コートでは練習が繰り広げられている。
今日は、乾先輩が組んだ試合形式のシングルス練習だった。
自分の試合が終わり、水分補給も兼ねて水道の方へ歩いていく。
そこには、すでに先客が居た。
しかも、一番会いたくない相手…桃城だった。
なんとなく、そのまま出て行くのがはばかれ、立ち止まったままアイツが別の場所に行くのを待っていた。
桃城も俺と同時間に試合をしていたから、試合が終わってから来たのであろう。
それが分かるように、アイツの額には汗が引っ切り無しに流れていた。
タオルで拭くとかしねぇのか、アイツは…。
っと、なんでかムッとしながら、汗の処理もきっちりしないアイツの姿に苛立つ。
いつもの事だが、本当に自分と桃城では感覚が違うのだと感じるのがこういった一面であった。
そうこうしていると、桃城は水道の蛇口を上に向け、近くにあったホースをそこに付けると、頭からその水をかぶる様に浴び出した。
一通り、水を浴びると、「ひゃー。気持ち良ぃ~っ♪」っと言いながら頭を振り、顔を上げニッコリ笑ったのだ。
俺は、自分の目を疑った。
桃城の笑顔…。いつも太陽の様に笑う奴ではあったが、実際に太陽を浴び、水を滴らせながら笑う桃城の笑顔は、見た事が無い程輝いていた。
俺は、失敗したと感じた。
ここに立ち、この場所に留まって…この光景を見てしまった自分に…。
あんな桃城の笑顔にあってしまった自分を呪った…。
それは、突然の出来事だった…。
あの笑顔が、どうしても俺の頭から離れない。
それ以来、アイツの姿を目で追ってしまう自分が考えられなく、知りたくなかった。
しかし、寝ても覚めても考えるのは桃城の事ばかり。
それは、いつもの喧嘩中の時でも変わらなくて…。
アイツを見るとドキドキして、胸が押し潰されるんじゃねぇかと思う。
アイツと話すと、なんでか嬉しくなる。
そんな日々が続き、認めたくは無かったが、俺がアイツに…桃城に…恋をしていると認めずにはいられなくなった…。
そして、今に至るという訳だーーーー
さて、どうしたもんだ…。
ここでアイツに告白なんてものをしようものなら…。
「まず…間違いなく、拒絶されるに違いねぇ…。」
自分で自分の言葉に項垂れる。
「だからって…どうすりゃいいんだ…?」
「何が~?」
「わっ!なっ…なんスかっ菊丸先輩っ! 意気なり、脅かすんじゃねぇっっ!」
意気なり声を掛けられて、驚いて腰を抜かしかけたってのは、みっともねぇから絶対、言わねぇっ…。
「脅かしてなんかにゃいよ~? それとも、なんかやましい事でも考えてたのかなぁ~?」
「っつ!べっ別にっ。んな事ある訳ねぇっっ!!」
ニヤニヤと意味ありげに笑う菊丸に、慌てて取り繕いそっぽを向く。
「あれれ~。そうやって、そっぽを向くのが、なんか怪し~にゃ~♪」
「………。先輩…。菊丸先輩は…好きな人とか居るんスか……。」
「ほぇ?な、何だよ~意気なりっ。」
俺の突然の問いに、慌てふためく菊丸先輩。
やっぱり、意気なりこんな話しを俺が質問するって…可笑しいよな…。
「いや、聞いてみただけっス…。」
「ん~~。」
何やら考え込んで、こちらを見ている菊丸の瞳に、居心地が悪くなる。
早くこの場から逃げだしたいと思っていると、また『はは~ん』と言う声が聞こえた。
「へー。そう言う事か~♪」
「な、なにがそう言う事なんスかっ…?」
「ふふー。隠さなくてもいいにゃ。海堂が、桃の事が好きで、どうやって告白しようかって事でしょ~? これでも先輩なんだからな~。隠しても無駄だよ~ん。」
「つっっ!!」
意気なりのドンピシャな発言に驚いて、思わず顔を向けてしまった。
「へへー。可愛いにゃ~海堂♪」
「………菊丸先輩っ…」
面白がっている様な菊丸の言葉に、冷や汗が出て来る。
もっと、こっちの身にもなって欲しい…とこの先輩に思うのは、無謀な事だろうか…。
「それよりっ!どうするの?」
「何がスか?」
「何がって…っ。もうっ!告白でしょ、こ・く・は・くっ!!」
告白…。
そんな物して、今の関係が壊れちまうんじゃねぇか…。
俺は、今の喧嘩しながらでもアイツの側に居られる…ライバルという関係が割りと気に入っているんだ…。
それを今、俺なんかが告白して…アイツに拒絶されたら…。
アイツの側に居られるどころか、まともに話もする事が出来なくなったら…俺は、俺はきっと苦しくて耐えられねぇ…。
「…海堂らしくないんじゃないの?」
「菊丸先輩?」
「海堂の善い所は粘り強い所だろ~。そんなくよくよ悩んでたら、ぜ~ったい上手く行く筈ないかんねっ!粘り強くない、らしくない海堂なんて…桃じゃなくても見てくれないよっ!」
「っつ…。」
先輩の言う事はもっともで…こんな弱い俺は、俺じゃねぇ…。
告白して関係がどうなるかなんて考えて、このままにして良いとは思わねぇ…。
でも、だからと言って…本当にこのまま粘り強く押して…解決しる事なのか…?
「あーっ、もうっ!じれったいにゃ~っ!! そんな海堂に、桃の事なんて任せらんないよっっ!!」
ムッと怒った様な顔と共に投げら付けられた菊丸の言葉。
「ふしゅ~…。菊丸先輩……。何が言いたいんスか?」
そんな先輩の挑発的な言葉にイラ付いてくる。
そう簡単なもんでもねぇだろ…。
大体、先輩は何が言いたいんだ?
『任せられない』ってどういう事だ?
「桃は、俺が貰うかんねっ! 海堂は、それでいいんだよねっ?」
依然、怒った様な顔を変えず、ますます挑発する様な物言いの菊丸。
そんな菊丸の言葉に、俺の中で何かがキレた音がする…。
「ふざけんじゃねぇっ!! 桃城は誰にもやんねぇっ!アイツは俺のだっ! 俺よりアイツを分かってて、俺よりアイツを必要としてる奴なんて居る筈ねぇっっ!!」
菊丸の胸倉を掴みながら、俺は全ての気持ちをぶちまけていた。
そんな俺に対して、菊丸先輩はニッコリ笑顔を浮かべ見つめてくる。
「へへ☆まーったく。海堂ってば、告白する相手間違えてるよん? そんなに大事なら、桃にハッキリとその事を伝えればいいんだよ。大丈夫。怖がらなくても、桃はきちんと聞いてくれるよ。でも、告白も出来ない様なじゃ、誰に取られても文句言えないんだよ?」
「……先輩…。今のは、わざとスか?」
「へへ。どうかにゃ~♪」
ニヤッと笑う菊丸に、一気に脱力してしまった。
でも、なんだか勇気が出て来た。
確かに…何も言えない様じゃ、アイツが誰と居ても文句言えねぇ…。
やる前から諦めてちゃ、何も始まりもしねぇよな…。
「……ありがとうございました、菊丸先輩…。」
自分より背の低い、でも、頼れる先輩のアドバイスのお陰で、こんな俺だけど…決心が付いた。
ペコリと一つお辞儀をすると、ますます笑顔になった菊丸先輩が、歩き出した俺を不思議そうに見る。
それを背中に感じつつ、真っ直ぐ前を向き進む。
「海堂、どうすんの?」
「…アイツに告白してきます…。」
『がんばれよっ!』と言う、菊丸先輩の声援を聞きつつ、アイツを探しに行く。
考えるのは桃城の事だけ。
恋人になりたいとか、この関係が壊れるかもしれねぇとか…そんな事はどうでもいい。
ただ、この想いをアイツに…桃城には知っていて欲しい…。
自分がこんなに好きになった奴なんて、今までいなかったから。
『誰よりも君が好き』そんな…こっぱずかしいフレーズなんて言うつもりはねぇけど、俺にとっての世界で唯一はお前しか居ない…。
そう感じから…。
キョロキョロと桃城が居そうな所を探してみる。
すると、後ろから今まで探していた奴の声が聞こえて来た。
「っ…おいっ!海堂っ! ちょっと話しがあるんだけど……。」
振り向いて見た桃城は、太陽の様な笑顔で…。
しっかりと俺をその瞳に映していたーーー
END
ただの仕種だったり、普段の何気無い言葉だったり…もしかしたら、ただ隣に居ただけかもしれねぇ…。
それは、ただの退屈な毎日の中にもゴロゴロと転がっているんだ。
でも…それが例えば自分にとって、一番苦手な相手だったら…。
自分が一番、嫌悪している相手だったら…。
ましてや、周りからも認められる様な犬猿の仲だったら…。
そんな場合…俺は、どうしたらいいんだ?
一番、嫌な相手に惚れてしまった…と、いつもの特徴のある溜め息を吐き、その想い人でもある人物を、今日もこっそりと気付かれない様に見つめる海堂だった。
それは、数日前の事であったーーーー
いつも通り、コートでは練習が繰り広げられている。
今日は、乾先輩が組んだ試合形式のシングルス練習だった。
自分の試合が終わり、水分補給も兼ねて水道の方へ歩いていく。
そこには、すでに先客が居た。
しかも、一番会いたくない相手…桃城だった。
なんとなく、そのまま出て行くのがはばかれ、立ち止まったままアイツが別の場所に行くのを待っていた。
桃城も俺と同時間に試合をしていたから、試合が終わってから来たのであろう。
それが分かるように、アイツの額には汗が引っ切り無しに流れていた。
タオルで拭くとかしねぇのか、アイツは…。
っと、なんでかムッとしながら、汗の処理もきっちりしないアイツの姿に苛立つ。
いつもの事だが、本当に自分と桃城では感覚が違うのだと感じるのがこういった一面であった。
そうこうしていると、桃城は水道の蛇口を上に向け、近くにあったホースをそこに付けると、頭からその水をかぶる様に浴び出した。
一通り、水を浴びると、「ひゃー。気持ち良ぃ~っ♪」っと言いながら頭を振り、顔を上げニッコリ笑ったのだ。
俺は、自分の目を疑った。
桃城の笑顔…。いつも太陽の様に笑う奴ではあったが、実際に太陽を浴び、水を滴らせながら笑う桃城の笑顔は、見た事が無い程輝いていた。
俺は、失敗したと感じた。
ここに立ち、この場所に留まって…この光景を見てしまった自分に…。
あんな桃城の笑顔にあってしまった自分を呪った…。
それは、突然の出来事だった…。
あの笑顔が、どうしても俺の頭から離れない。
それ以来、アイツの姿を目で追ってしまう自分が考えられなく、知りたくなかった。
しかし、寝ても覚めても考えるのは桃城の事ばかり。
それは、いつもの喧嘩中の時でも変わらなくて…。
アイツを見るとドキドキして、胸が押し潰されるんじゃねぇかと思う。
アイツと話すと、なんでか嬉しくなる。
そんな日々が続き、認めたくは無かったが、俺がアイツに…桃城に…恋をしていると認めずにはいられなくなった…。
そして、今に至るという訳だーーーー
さて、どうしたもんだ…。
ここでアイツに告白なんてものをしようものなら…。
「まず…間違いなく、拒絶されるに違いねぇ…。」
自分で自分の言葉に項垂れる。
「だからって…どうすりゃいいんだ…?」
「何が~?」
「わっ!なっ…なんスかっ菊丸先輩っ! 意気なり、脅かすんじゃねぇっっ!」
意気なり声を掛けられて、驚いて腰を抜かしかけたってのは、みっともねぇから絶対、言わねぇっ…。
「脅かしてなんかにゃいよ~? それとも、なんかやましい事でも考えてたのかなぁ~?」
「っつ!べっ別にっ。んな事ある訳ねぇっっ!!」
ニヤニヤと意味ありげに笑う菊丸に、慌てて取り繕いそっぽを向く。
「あれれ~。そうやって、そっぽを向くのが、なんか怪し~にゃ~♪」
「………。先輩…。菊丸先輩は…好きな人とか居るんスか……。」
「ほぇ?な、何だよ~意気なりっ。」
俺の突然の問いに、慌てふためく菊丸先輩。
やっぱり、意気なりこんな話しを俺が質問するって…可笑しいよな…。
「いや、聞いてみただけっス…。」
「ん~~。」
何やら考え込んで、こちらを見ている菊丸の瞳に、居心地が悪くなる。
早くこの場から逃げだしたいと思っていると、また『はは~ん』と言う声が聞こえた。
「へー。そう言う事か~♪」
「な、なにがそう言う事なんスかっ…?」
「ふふー。隠さなくてもいいにゃ。海堂が、桃の事が好きで、どうやって告白しようかって事でしょ~? これでも先輩なんだからな~。隠しても無駄だよ~ん。」
「つっっ!!」
意気なりのドンピシャな発言に驚いて、思わず顔を向けてしまった。
「へへー。可愛いにゃ~海堂♪」
「………菊丸先輩っ…」
面白がっている様な菊丸の言葉に、冷や汗が出て来る。
もっと、こっちの身にもなって欲しい…とこの先輩に思うのは、無謀な事だろうか…。
「それよりっ!どうするの?」
「何がスか?」
「何がって…っ。もうっ!告白でしょ、こ・く・は・くっ!!」
告白…。
そんな物して、今の関係が壊れちまうんじゃねぇか…。
俺は、今の喧嘩しながらでもアイツの側に居られる…ライバルという関係が割りと気に入っているんだ…。
それを今、俺なんかが告白して…アイツに拒絶されたら…。
アイツの側に居られるどころか、まともに話もする事が出来なくなったら…俺は、俺はきっと苦しくて耐えられねぇ…。
「…海堂らしくないんじゃないの?」
「菊丸先輩?」
「海堂の善い所は粘り強い所だろ~。そんなくよくよ悩んでたら、ぜ~ったい上手く行く筈ないかんねっ!粘り強くない、らしくない海堂なんて…桃じゃなくても見てくれないよっ!」
「っつ…。」
先輩の言う事はもっともで…こんな弱い俺は、俺じゃねぇ…。
告白して関係がどうなるかなんて考えて、このままにして良いとは思わねぇ…。
でも、だからと言って…本当にこのまま粘り強く押して…解決しる事なのか…?
「あーっ、もうっ!じれったいにゃ~っ!! そんな海堂に、桃の事なんて任せらんないよっっ!!」
ムッと怒った様な顔と共に投げら付けられた菊丸の言葉。
「ふしゅ~…。菊丸先輩……。何が言いたいんスか?」
そんな先輩の挑発的な言葉にイラ付いてくる。
そう簡単なもんでもねぇだろ…。
大体、先輩は何が言いたいんだ?
『任せられない』ってどういう事だ?
「桃は、俺が貰うかんねっ! 海堂は、それでいいんだよねっ?」
依然、怒った様な顔を変えず、ますます挑発する様な物言いの菊丸。
そんな菊丸の言葉に、俺の中で何かがキレた音がする…。
「ふざけんじゃねぇっ!! 桃城は誰にもやんねぇっ!アイツは俺のだっ! 俺よりアイツを分かってて、俺よりアイツを必要としてる奴なんて居る筈ねぇっっ!!」
菊丸の胸倉を掴みながら、俺は全ての気持ちをぶちまけていた。
そんな俺に対して、菊丸先輩はニッコリ笑顔を浮かべ見つめてくる。
「へへ☆まーったく。海堂ってば、告白する相手間違えてるよん? そんなに大事なら、桃にハッキリとその事を伝えればいいんだよ。大丈夫。怖がらなくても、桃はきちんと聞いてくれるよ。でも、告白も出来ない様なじゃ、誰に取られても文句言えないんだよ?」
「……先輩…。今のは、わざとスか?」
「へへ。どうかにゃ~♪」
ニヤッと笑う菊丸に、一気に脱力してしまった。
でも、なんだか勇気が出て来た。
確かに…何も言えない様じゃ、アイツが誰と居ても文句言えねぇ…。
やる前から諦めてちゃ、何も始まりもしねぇよな…。
「……ありがとうございました、菊丸先輩…。」
自分より背の低い、でも、頼れる先輩のアドバイスのお陰で、こんな俺だけど…決心が付いた。
ペコリと一つお辞儀をすると、ますます笑顔になった菊丸先輩が、歩き出した俺を不思議そうに見る。
それを背中に感じつつ、真っ直ぐ前を向き進む。
「海堂、どうすんの?」
「…アイツに告白してきます…。」
『がんばれよっ!』と言う、菊丸先輩の声援を聞きつつ、アイツを探しに行く。
考えるのは桃城の事だけ。
恋人になりたいとか、この関係が壊れるかもしれねぇとか…そんな事はどうでもいい。
ただ、この想いをアイツに…桃城には知っていて欲しい…。
自分がこんなに好きになった奴なんて、今までいなかったから。
『誰よりも君が好き』そんな…こっぱずかしいフレーズなんて言うつもりはねぇけど、俺にとっての世界で唯一はお前しか居ない…。
そう感じから…。
キョロキョロと桃城が居そうな所を探してみる。
すると、後ろから今まで探していた奴の声が聞こえて来た。
「っ…おいっ!海堂っ! ちょっと話しがあるんだけど……。」
振り向いて見た桃城は、太陽の様な笑顔で…。
しっかりと俺をその瞳に映していたーーー
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