毛玉とゆうしゃ

1 毛玉のひとりごと

 わたしは洞窟の黒い水たまりに自分の姿を映して、ため息をこぼす。

 水たまりに浮かぶ大きな姿は、丸みを帯びていて、全身は白い毛でおおわれている。

 生まれたときは小さくてよく風に飛ばされていたけれど、今は風くらいではびくともしないほどにふくれてしまった。

 ――なんて大きいの。毛もくじゃらなの。また、太ったんじゃない。だから、手も足も毛に隠れてしまって、転がるしか移動手段がないのよ。

 自分を叱っても、お腹はすく。わたしの食料はこの世界のちりやほこりだ。吸いこむことでわたしのからだの栄養(おそらく)となる。魔界はとっても汚くて、食料がいっぱい。そのため、わたしは太り放題なのだ。

「今日もいっぱい食べちゃおっかな」

 なんて、誰も聞いていないのに、ひとりごとが出ちゃう。

 おじいちゃんが旅に出てから、わたしの話し相手はいない。だから、ひとりごとが多くなったのかな。やだな。

 わたしは深くため息をついてから、洞窟の入り口に向かって勢いをつけて転がることにした。
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