白馬と姫(1~50)

第1話『ウザイ女の子』

 何でこうなっちゃうのかな。いつもわたしってこう。口を開けばウザイって言われて、せっかくできた友達も離れていっちゃう。ちっちゃい頃からそうだった。中学にもわたしの居場所なんてなかった。

 だけど、全然平気。学校は勉強するところだし。彼氏なんかいらないし、友達も必要なし。お父さんもお母さんも忙しくて、最近、顔だって見ていないし。

 もし、今、異世界に飛ばされたって、わたしは喜んで受け入れると思う。この世界に何の未練もないから。

 そう思ってたのに――気づいちゃった。この世界を離れるとき、わたしはちゃんと未練を残すの。ああしておけばよかった。もっと、ウザイのを治して、友達を作れば良かった。彼氏……欲しかったなんて。

 目を覚ましたら異世界トリップなんて話、本当にあるんだ。

***

 教室でうたた寝していたはずのわたしがいたのは森のなかだった。スカートからのぞく足に草の先が当たってくすぐったい。わたしは草むらをベッドにして眠っていたみたいだった。

 ゆっくりと体を起こして周りを見渡す。よくできた夢。手にはちゃんと草の感触がわかるし、鳥のさえずりなんかも聞こえる。虹色のちょうちょがわたしの周りを旋回したりして、可愛らしい。

 わたしの想像力ってかなりすごいかもしれない。夢がこんなにリアルなんだから。

 乱れた長い髪を手ぐしで解かしてから、起き上がった。

 そうしたら見つけたの。森のなかに一筋に並んだ小さな光の玉が浮かんでいる。何だか、こっちだよと呼んでいるみたい。そういうことをされると気になるし、行ってみたくなる。夢だし、危険なことは何もないはず。

「よし」

 わたしは光の先へ行ってみることにした。
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