破門される魔術師
第2話
返事はしたものの、現在、師匠の部屋の前でここから動くべきか迷っている。幸が不幸か、自室にはフルグライト様がくつろいでいるのだ。
今朝、師匠に呼ばれていることを伝えると、彼はものすごく不機嫌な顔に変わった。眉根をこれでもかと寄せて、敵に剣先を向けるかのごとく真剣な眼差しをしていた。わたしの背筋が真っ直ぐに伸びるくらい。
――「今日はずっと一緒にいるはずだっただろう」
そんなことを言って顔をそらすフルグライト様は、すねていた。こういうとき、歳上の男の人に可愛らしさを感じてしまう。
――「フルグライト様」
彼の頬を手で包むと、わたしはそっと額に口づけを落とした。何であんなことができたのか自分でもわからない。それでも、彼は強く抱き締めて「待っている」と言葉で約束してくれた。
そんなフルグライト様のためにも、ずっと悩むわけにもいかない。意を決して、自室の中に入る。まるで、戦場に足を踏み入れるかのように堂々としていなければ、立ち向かえない。大きな壁は目の前にいる。わたしは敬礼するような勢いで背筋を伸ばした。
「フルグライト様、ただいま帰りました」
言葉が返ってくる代わりに太い腕がわたしを抱き上げる。子どもではないのに、彼はたびたびこうする。彼の腕にお尻を乗せて、首に抱きつくと、「よく戻った」と背中を撫でてくれる。フルグライト様の子どもじゃないのに、ほめられたような気がして嬉しい。
「エリアル、寂しかった」
大きな手のひらがわたしの背中からうなじを撫でて、髪の毛をすいてくる。
この甘い雰囲気は……と予想したとき、すでにわたしの唇は彼の唇と重なっていた。角度を変えて何度も吸いつかれる唇がしびれてくる。
どんどん深くなる口づけに苦しくなって、わたしは顔を離した。でも、フルグライト様は追いかけてくる。逃がさないというように後頭部が支えられた。フルグライト様が寝台に倒れると、わたしも必然的にその上に乗る格好となった。
「いい眺めだ」
フルグライト様を見下ろすなんてはじめてだ。しかも、彼は眩しそうに目を細めている。わたしはその視線を追って、気づいた。彼の手によって、魔術師のローブがたくしあげられていたのだ。ただでさえ不健康そうな白い股がさらされてしまっている。恥ずかしい。
すぐに裾を直そうとしたのに、フルグライト様のささやきがわたしの全身の力を奪った。
「抱きたい」なんて、卑猥な言葉なのにフルグライト様の口からなら許せてしまう。求められることが素直に嬉しいと感じてしまう。すべてはこの人のせい。
「い、いいですよ。フルグライト様なら何をされたって平気です」
きっと、わたしの顔は赤い。彼に比べればまだまだ小娘なわたしに、余裕なんかない。ずっと、好きでいてほしい。だから、何をされたって構わない。
返事はしたものの、現在、師匠の部屋の前でここから動くべきか迷っている。幸が不幸か、自室にはフルグライト様がくつろいでいるのだ。
今朝、師匠に呼ばれていることを伝えると、彼はものすごく不機嫌な顔に変わった。眉根をこれでもかと寄せて、敵に剣先を向けるかのごとく真剣な眼差しをしていた。わたしの背筋が真っ直ぐに伸びるくらい。
――「今日はずっと一緒にいるはずだっただろう」
そんなことを言って顔をそらすフルグライト様は、すねていた。こういうとき、歳上の男の人に可愛らしさを感じてしまう。
――「フルグライト様」
彼の頬を手で包むと、わたしはそっと額に口づけを落とした。何であんなことができたのか自分でもわからない。それでも、彼は強く抱き締めて「待っている」と言葉で約束してくれた。
そんなフルグライト様のためにも、ずっと悩むわけにもいかない。意を決して、自室の中に入る。まるで、戦場に足を踏み入れるかのように堂々としていなければ、立ち向かえない。大きな壁は目の前にいる。わたしは敬礼するような勢いで背筋を伸ばした。
「フルグライト様、ただいま帰りました」
言葉が返ってくる代わりに太い腕がわたしを抱き上げる。子どもではないのに、彼はたびたびこうする。彼の腕にお尻を乗せて、首に抱きつくと、「よく戻った」と背中を撫でてくれる。フルグライト様の子どもじゃないのに、ほめられたような気がして嬉しい。
「エリアル、寂しかった」
大きな手のひらがわたしの背中からうなじを撫でて、髪の毛をすいてくる。
この甘い雰囲気は……と予想したとき、すでにわたしの唇は彼の唇と重なっていた。角度を変えて何度も吸いつかれる唇がしびれてくる。
どんどん深くなる口づけに苦しくなって、わたしは顔を離した。でも、フルグライト様は追いかけてくる。逃がさないというように後頭部が支えられた。フルグライト様が寝台に倒れると、わたしも必然的にその上に乗る格好となった。
「いい眺めだ」
フルグライト様を見下ろすなんてはじめてだ。しかも、彼は眩しそうに目を細めている。わたしはその視線を追って、気づいた。彼の手によって、魔術師のローブがたくしあげられていたのだ。ただでさえ不健康そうな白い股がさらされてしまっている。恥ずかしい。
すぐに裾を直そうとしたのに、フルグライト様のささやきがわたしの全身の力を奪った。
「抱きたい」なんて、卑猥な言葉なのにフルグライト様の口からなら許せてしまう。求められることが素直に嬉しいと感じてしまう。すべてはこの人のせい。
「い、いいですよ。フルグライト様なら何をされたって平気です」
きっと、わたしの顔は赤い。彼に比べればまだまだ小娘なわたしに、余裕なんかない。ずっと、好きでいてほしい。だから、何をされたって構わない。