すべての元凶はあなた

最終話『すべての元凶に』

 あれから4年の月日が経った。日に日に時間の過ぎていくスピードが上がっている気がする。

 わたしは白いドレスを纏い、控え室の椅子に座っていた。隣にはわたしを救ってくれたあの人の姿がある。白いドレスとの対で白いタキシードを着ている。

 何がきっかけになったかなんて、細かいことはわからない。でも、わたしの心のなかにはこの人がいる。大事な人と別れたわたしに舞い降りた奇跡と言っていいと思う。

「また、考え事?」

「うん」

「それって、ウィルのこと?」

 はじめてウィルの話をしたときの彼の顔は、本当に間の抜けた顔だった。だけど、馬鹿にしなかった。信じてくれた。

 寂しいことだけれど、日に日にウィルの顔や仕草を忘れようとしている自分がいる。いつかおばあちゃんになる頃には、顔も思い出せなくなるのだろうか。あの時の感情もすべて。

「うん。でも、最近はあまり思い出さなくなってる」

「そうか。じゃあ、また話してくれてもいいよ。忘れないように」

「忘れてほしいんじゃないの?」

 過去の恋の話と直結しているわけだし、そういう嫉妬みたいなこともあると思っていた。

「まあ、正直な話、嫉妬とかそういうのがないわけじゃないよ。でも、その話をする絵茉が好きというか。それで好きになったから」

「えっ?」

「なんて、まあ、それじゃ、また後で」

 とても大事な話をされた気がするけれど、彼はすぐに控え室から出ていってしまった。わたしは鏡の前で自分の顔を確める。まれに見る完璧なメイクで助かった。どうやら、真っ赤な顔は隠せそうだ。

 あなたのおかげでしあわせだよ、ウィル。

 鏡のなかにかつて大好きだった人の姿をおぼろげに想像しながら、そのすべての元凶にお礼を告げた。

おわり
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