すべての元凶はあなた
第49話『心の準備』
元の世界に返す。ウィルは確かにそう言った。ということは、言葉通りにとらえれば、わたしは元の世界に戻れるということだと思う。
こちらの世界にきてから、この日がくるのを、ずっと、願っていた。
願っていたのに、すべてにおいて嬉しいとは喜べない。それくらいに、こちらの世界に慣れてきていたところだった。言葉も。思い出も。みんなと別れることを考えると淋しくて仕方ない。
「明日、ここを発つ。だから、すぐに準備をしろ」
たったそれだけしか言わない。だから、悪い男だと誤解されるっていうのに、本人にはわからないらしい。
準備をしろといっても、荷物だって大してないのだから、すぐに、終わるはずだ。でも、心の準備をする方が時間がかかる気がする。
案の定、部屋に戻るときも、服を脱いで普段着に着替えたときも、ずっと、考えた。夕飯のときも、気づけば考えていた。元の世界の記憶だって、まだ、すべてを思い出したわけではない。だけど、わたしはこちらの世界にいるべき人間ではない。元の世界こそがわたしの場所だと思う。
でも、そもそも、わたしはどうして、こちらの世界に来たのだろう。直前の自分の行動を思い出せない。ウィルに言わせれば、死にかけていたらしいけれど、どんな状態だったのだろう。
それを思い出せていないわたしが、本当に元の世界に戻っていいのか、わからない。聖霊くんは、わたしがすべての記憶を取り戻したときに元の世界に戻れると言っていた。このまま戻ってしまっていいのだろうか。何にも解決していないのに。でも。
長く考えていたら、いつの間にか、部屋が暗くなっていた。長く考えても結論は出なかった。同じところをぐるぐる回っているだけという感じ。
考えることにうんざりしていた。もう、このまま戻れるなら、記憶なんて必要ないのかもしれない。だけど、そんなに簡単に割り切れない自分がいた。
とにかく、寝なくちゃ。無理やりな気持ちで布団を頭まで引き上げたとき、ひかえめなノックがされた。こんな夜に誰だろう。特に警戒もせずに大きめの声で返事をすると、扉が開かれた。
元の世界に返す。ウィルは確かにそう言った。ということは、言葉通りにとらえれば、わたしは元の世界に戻れるということだと思う。
こちらの世界にきてから、この日がくるのを、ずっと、願っていた。
願っていたのに、すべてにおいて嬉しいとは喜べない。それくらいに、こちらの世界に慣れてきていたところだった。言葉も。思い出も。みんなと別れることを考えると淋しくて仕方ない。
「明日、ここを発つ。だから、すぐに準備をしろ」
たったそれだけしか言わない。だから、悪い男だと誤解されるっていうのに、本人にはわからないらしい。
準備をしろといっても、荷物だって大してないのだから、すぐに、終わるはずだ。でも、心の準備をする方が時間がかかる気がする。
案の定、部屋に戻るときも、服を脱いで普段着に着替えたときも、ずっと、考えた。夕飯のときも、気づけば考えていた。元の世界の記憶だって、まだ、すべてを思い出したわけではない。だけど、わたしはこちらの世界にいるべき人間ではない。元の世界こそがわたしの場所だと思う。
でも、そもそも、わたしはどうして、こちらの世界に来たのだろう。直前の自分の行動を思い出せない。ウィルに言わせれば、死にかけていたらしいけれど、どんな状態だったのだろう。
それを思い出せていないわたしが、本当に元の世界に戻っていいのか、わからない。聖霊くんは、わたしがすべての記憶を取り戻したときに元の世界に戻れると言っていた。このまま戻ってしまっていいのだろうか。何にも解決していないのに。でも。
長く考えていたら、いつの間にか、部屋が暗くなっていた。長く考えても結論は出なかった。同じところをぐるぐる回っているだけという感じ。
考えることにうんざりしていた。もう、このまま戻れるなら、記憶なんて必要ないのかもしれない。だけど、そんなに簡単に割り切れない自分がいた。
とにかく、寝なくちゃ。無理やりな気持ちで布団を頭まで引き上げたとき、ひかえめなノックがされた。こんな夜に誰だろう。特に警戒もせずに大きめの声で返事をすると、扉が開かれた。