すべての元凶はあなた
第48話『選んだ理由』
「ありがとう」
一瞬、誰の言葉だったのか、気づくのが遅れた。でも、目の前にある赤毛、わたしを見つめる力強い瞳は、間違いなく、ウィルのものだった。感謝の言葉を口にしたのはウィルだった。しつこいけれど、あのウィルだった。
「どうした、間抜けな顔をして」
確かに、間抜けだったかなと自分でも思う。熱くなってきた頬の熱を逃がすように、手をやったら、ふっと笑われてしまった。
「本当にお前を見ていると飽きない。自然と笑いたくなる。なぜだろうな」
ウィルがこんなことを言ってくれたことはなかったから、どう受けとればいいのかと、戸惑う。素直に嬉しいと思っていいのか、言葉の受け取り方がわからない。
「とにかく母のことは感謝する。お前には助けられた」
何だか、ここまで来ると、逆に違和感が胸に広がるというか、変な感じ。まるで、別れを控えているみたいな感じもしてきてしまう。
「何があったの?」と、言葉にしても、通じないのだけれど。
「俺がお前を救い主に選んだ理由が、わかるか?」
わたしが死にかけたところを助けてくれたのは聞いた。あと、信者からの寄付目当てだということも。もしかして、それだけの理由ではない?
浅い思考ではまったくわからなくて、頭を横に振る。それを見たウィルは、また、笑った。
「俺にもよくわからん。救い主なんて誰でも良かったはずだ。たまたま助けたのがお前でなくても俺はそいつを救い主に仕立てただろう」
あまりショックではなかった。だろうな、という気持ちしかわいてこない。
「ウィル様、それは失礼かと」すかさず、ローラントがフォローしてくれる。
「そうですわ。エマ様は真剣に救い主としての責務を全うしておいでです」
みんな、知っていたらしい。わたしだけのけ者。ローラントもわたしが偽者だって知っていたなんて、ちょっと腹が立つ。
「それはわかっている。予想以上に、お前は救い主だった。俺がどれだけ厳しくしても、嫌な顔をしながらも、やってくれた。その点は評価している。今はお前を救い主にして、良かったと思っている」
ずっと、ウィルは見てくれていた。何か、報われたなと、肩から力が抜けた。ちゃんと救い主ができたんだ。こんなわたしでも。
「だから、お前を元の世界に返す」
ウィルの言葉にわたしの心臓が止まったかと思った。
「ありがとう」
一瞬、誰の言葉だったのか、気づくのが遅れた。でも、目の前にある赤毛、わたしを見つめる力強い瞳は、間違いなく、ウィルのものだった。感謝の言葉を口にしたのはウィルだった。しつこいけれど、あのウィルだった。
「どうした、間抜けな顔をして」
確かに、間抜けだったかなと自分でも思う。熱くなってきた頬の熱を逃がすように、手をやったら、ふっと笑われてしまった。
「本当にお前を見ていると飽きない。自然と笑いたくなる。なぜだろうな」
ウィルがこんなことを言ってくれたことはなかったから、どう受けとればいいのかと、戸惑う。素直に嬉しいと思っていいのか、言葉の受け取り方がわからない。
「とにかく母のことは感謝する。お前には助けられた」
何だか、ここまで来ると、逆に違和感が胸に広がるというか、変な感じ。まるで、別れを控えているみたいな感じもしてきてしまう。
「何があったの?」と、言葉にしても、通じないのだけれど。
「俺がお前を救い主に選んだ理由が、わかるか?」
わたしが死にかけたところを助けてくれたのは聞いた。あと、信者からの寄付目当てだということも。もしかして、それだけの理由ではない?
浅い思考ではまったくわからなくて、頭を横に振る。それを見たウィルは、また、笑った。
「俺にもよくわからん。救い主なんて誰でも良かったはずだ。たまたま助けたのがお前でなくても俺はそいつを救い主に仕立てただろう」
あまりショックではなかった。だろうな、という気持ちしかわいてこない。
「ウィル様、それは失礼かと」すかさず、ローラントがフォローしてくれる。
「そうですわ。エマ様は真剣に救い主としての責務を全うしておいでです」
みんな、知っていたらしい。わたしだけのけ者。ローラントもわたしが偽者だって知っていたなんて、ちょっと腹が立つ。
「それはわかっている。予想以上に、お前は救い主だった。俺がどれだけ厳しくしても、嫌な顔をしながらも、やってくれた。その点は評価している。今はお前を救い主にして、良かったと思っている」
ずっと、ウィルは見てくれていた。何か、報われたなと、肩から力が抜けた。ちゃんと救い主ができたんだ。こんなわたしでも。
「だから、お前を元の世界に返す」
ウィルの言葉にわたしの心臓が止まったかと思った。