すべての元凶はあなた
第37話『4人で食事』
ウィルの後をついていったら、そこは食堂だった。以前の神殿では、食堂にお目にかかる機会はなかったから、神殿にもあるんだなあと感心する。
部屋の中央には長いテーブルがあって、上には等間隔に置き型の燭台が載っている。なぜか、お皿やスプーンは出しっぱなしで、埃が積もり、動かされた形跡はなかった。
ミアさんが忙しなく動き回っているのも、それを片付けているせいだ。対照的にフィデールさんは、席に着いているけれど、気だるそうにテーブルの上で頬杖をついていた。
ミアさんを見れば、わたしも突っ立っているわけにはいけない。何かできないかと思って、「ミアさん」と声をかけた。
「すみません。わたくしだけでは手が回らなくて。もう少々、お食事にはお時間がかかりそうです」
「腹へった」
フィデールさんはお腹をさすりながら呑気な声を出す。これにはたまらないとばかりに、ミアさんは眉を上げた。
「すべてはあなたのせいでしょう。食器は使ってそのまま。神殿から配給される食料の保管も適当で、ほとんどが傷んでいるのですよ!」
「仕方ねえだろ。料理なんかしねえし、俺一人で何ができるってんだ」
「まったくしょうがない人ですね!」
ミアさんがぴりぴりしている。ウィルはどこ吹く風で、壁にもたれかかりながら、静観していた。というより、何も見ていないような。考え事でもしているのかもしれない。
「もういいです。あなたが拭いてください」
ミアさんは布巾をフィデールさんに投げつけた。
「何すんだ!」
「当然の報いです」
「俺がやるわけねえだろ」
「まともな食事にありつきたければ、拭いてくださいね」
ミアさんがお皿を持って奥の部屋へ消えると、フィデールさんは「何で俺が」と悪態つきながら、ちゃんと布巾で拭き始めた。ミアさんの舵取りは上手いらしい。
わたしも何もしないままではいられなくて、グラス類を片づけることにする。きっと、ミアさんに「そんなことはさせられません」とか、何とか言われるだろう。でも、いいのだ。わたしでも力になりたいのだから。
すべてが整ったところで、長テーブルの燭台に明かりが灯される。
以前はひとりきりだった食事。今は3人と食卓を囲むことになった。というのも、わたしが救い主ではないとこの3人が知っているからだ。いちいち部屋で食事させるのももったいない(ウィルいわく)ため、みんなとの食事になった。
「大したものはできませんでしたが」
ミアさんは謙遜したけれど、テーブルには木の実パンやフィデールさんが保存していたというくん製肉、豆スープが並んだ。フィデールさんがテーブルの端の席に着き、ミアさんとわたしは隣り合って座った。わたしの前にはウィルがいて、豆スープにスプーンを浸しては口に持っていった。
ウィルがもごもごと口を動かしている。たったそれだけで、人間らしい仕草に見えて、親近感がわいてくる。
「何だ?」
ウィルに気づかれてしまった。首を横に振れば、ウィルは木の実パンの端をちぎって食べた。案外、行儀はいいらしい。フィデールさんはスープ皿に口をつけて、一気に飲み干した。そんな姿をミアさんはちらっと見ながら、冷たくにらみつけていた。
ウィルの後をついていったら、そこは食堂だった。以前の神殿では、食堂にお目にかかる機会はなかったから、神殿にもあるんだなあと感心する。
部屋の中央には長いテーブルがあって、上には等間隔に置き型の燭台が載っている。なぜか、お皿やスプーンは出しっぱなしで、埃が積もり、動かされた形跡はなかった。
ミアさんが忙しなく動き回っているのも、それを片付けているせいだ。対照的にフィデールさんは、席に着いているけれど、気だるそうにテーブルの上で頬杖をついていた。
ミアさんを見れば、わたしも突っ立っているわけにはいけない。何かできないかと思って、「ミアさん」と声をかけた。
「すみません。わたくしだけでは手が回らなくて。もう少々、お食事にはお時間がかかりそうです」
「腹へった」
フィデールさんはお腹をさすりながら呑気な声を出す。これにはたまらないとばかりに、ミアさんは眉を上げた。
「すべてはあなたのせいでしょう。食器は使ってそのまま。神殿から配給される食料の保管も適当で、ほとんどが傷んでいるのですよ!」
「仕方ねえだろ。料理なんかしねえし、俺一人で何ができるってんだ」
「まったくしょうがない人ですね!」
ミアさんがぴりぴりしている。ウィルはどこ吹く風で、壁にもたれかかりながら、静観していた。というより、何も見ていないような。考え事でもしているのかもしれない。
「もういいです。あなたが拭いてください」
ミアさんは布巾をフィデールさんに投げつけた。
「何すんだ!」
「当然の報いです」
「俺がやるわけねえだろ」
「まともな食事にありつきたければ、拭いてくださいね」
ミアさんがお皿を持って奥の部屋へ消えると、フィデールさんは「何で俺が」と悪態つきながら、ちゃんと布巾で拭き始めた。ミアさんの舵取りは上手いらしい。
わたしも何もしないままではいられなくて、グラス類を片づけることにする。きっと、ミアさんに「そんなことはさせられません」とか、何とか言われるだろう。でも、いいのだ。わたしでも力になりたいのだから。
すべてが整ったところで、長テーブルの燭台に明かりが灯される。
以前はひとりきりだった食事。今は3人と食卓を囲むことになった。というのも、わたしが救い主ではないとこの3人が知っているからだ。いちいち部屋で食事させるのももったいない(ウィルいわく)ため、みんなとの食事になった。
「大したものはできませんでしたが」
ミアさんは謙遜したけれど、テーブルには木の実パンやフィデールさんが保存していたというくん製肉、豆スープが並んだ。フィデールさんがテーブルの端の席に着き、ミアさんとわたしは隣り合って座った。わたしの前にはウィルがいて、豆スープにスプーンを浸しては口に持っていった。
ウィルがもごもごと口を動かしている。たったそれだけで、人間らしい仕草に見えて、親近感がわいてくる。
「何だ?」
ウィルに気づかれてしまった。首を横に振れば、ウィルは木の実パンの端をちぎって食べた。案外、行儀はいいらしい。フィデールさんはスープ皿に口をつけて、一気に飲み干した。そんな姿をミアさんはちらっと見ながら、冷たくにらみつけていた。